◎ 標的09 星の王子(2/3)
数分走ると見慣れた場所に到着する。
沢田家と表札のかかった玄関にフゥ太は躊躇いなく向かうと扉を開ける。
「た、ただいまー……?」
葵の声を聞いたツナが出迎えてくれたが、どことなくツナは疲れた表情をしており、それがおかしくて笑っていると、そんな葵に気づいたツナは顔を赤く染める。
だが、隣にいたフゥ太を見るや否やどんどん顔が青ざめていった。
「おかえり〜ツナ兄!」
「ただいまじゃないよっ!なんであちこちに出現するんだよー…!何か恨みでもあるのかよ……!」
「(なるほど。2人は知り合いだったのか……!)」
「…違うよ、僕はただ…ツナ兄の傍にいたくて……」
うるうると瞳を潤ませながら見つめる姿は小動物のようで、そんなフゥ太にツナも厳しく言うことが出来ず、折れた。
「葵兄!ツナ兄ってねすごいんだよ!僕のランキングを初めて覆したんだ!」
「フゥ太のランキングを!?ツナ、すごいな!」
「え、あ、そ、そうなのか、な――?」
「フゥ太のランキングはどんな情報より正確だからな……さすが時期ボンゴレボスってとこか」
「いや、ボスにはならないからね!」
焦って否定するツナに悪戯っぽく葵は笑う。
そしてとりあえずフゥ太にはツナの部屋にいてもらい、荷物を起き次第、集合することに。
「よいしょっと――」
カバンを部屋に置くと、制服から私服へと着替えていく。
その時、窓から灰色の空が見えた。
「(なんかひと雨来そうな空だな……)」
着替え終わってツナの部屋の扉を開けるやいなや聞こえてくるのは黄色い声。
そして次の瞬間、ガシッと葵は抱きつかれた。
「葵さん〜!お久しぶりです!今日もクールですね!!」
「ハル!来てたのか」
「おい!葵困ってるだろ!」
突然のハルの行動にツナも顔を赤くしながらも声を上げる。
話によればばハルは雨が降りそうだったので、ツナ達の洗濯物をわざわざ取り込んでくれたらしい。
そしてせっかくの機会ということでフゥ太にランキングをしてもらうことに。
フゥ太の能力でツナの部屋の物がふわふわと浮き始める。
「はひ!?凄い演出です〜っ!!」
「あーもー、誰が掃除すると思ってんだよ……」
「まーまー、俺も手伝うからさ?そういえば今は何のランキングを?」
「実はですね〜、ハルのチャームポイントをフゥ太君に占ってもらってるんですよ!」
人の個人的な情報までわかるのかと思いながらも、初めてしっかり見るフゥ太の能力に葵もウキウキしながら結果を待つ。
「ハルさんのチャームポイントランキング、1000パーツ中1位は――つむじだね」
「な、なんで知ってるんですか!?さては――葵さんが……!?照れちゃいますー!」
「え!?初耳だけど――」
「葵がハルのつむじなんて知るわけないだろ!!」
そんなツナの言葉も耳に入っていないらしくハルは嬉しそうに頬を赤らめながらバタバタとしていた。
すると1位だけでなく上位3位もピタリとフゥ太は言い当てた。
「はひーー!フゥ太君凄いです!天才占い師ですーー!」
「へぇ〜!(フゥ太、凄いや!)」
「はぁ……(めんどくさいなぁ…)」
嬉しそうにはしゃぐハルにツナはめんどくさそうにため息を吐く。
そしてランキングモードが解かれた時に部屋のものが音を立てて床に落ち、部屋は見事に汚れてしまった。
その様子を見てため息を吐くツナに葵は自分も手伝うからとフォローする。
先程のハルのチャームポイントランキングの結果をフゥ太はランキングブックに書き留めていると獄寺と山本が部屋に入ってきた。
「10代目〜!!なんで俺に教えてくれなかったんスか!?ランキング小僧が来てるって!」
「獄寺!」
「そこで偶然会ってな、面白そーだから俺も来たぜ」
「山本も…い、いらっしゃい!」
獄寺はフゥ太を見つけるや否やまっすぐ向かう。
「(獄寺もランキングして欲しいことがあったんだ。一体なんだろ……)」
「オレの聞きたいことはただ1つ……!10代目の右腕にふさわしいランキングで、オレは何位なのか!!」
「ブレないよな――……」
獄寺からの頼みを承諾すると、早速フゥ太はランキングを開始する。
先程同様、1度は床に落ちたもの達も再び浮き上がりその光景にツナは頭を抱える。
獄寺と山本は初めての光景を物珍しそうに見つめていた。
「隼人兄の結果は……圏外」
「なぁッ!!!?」
「ええ!!?……てかランキングに圏外なんてあるの?」
「違うよ、ランキング圏外じゃない。大気外だ」
「(地球の外ーーーーッ!!?)」
「これは……意外な結果だな――」
「あははは。また面白ぇーやつだな」
まさかの結果にショックを隠しきれない獄寺とただ1人遊びだと思って笑っている山本。
状況だけ見るとなんともカオスな……。
「まあ……元気出せって、獄寺?」
「うるせー……お前にこの気持ちがわかってたまるか……ッ」
「流石フゥ太だわ!見事なランキングさばき」
「(この声――もしかして……)」
「でも大切なのは愛よ」
ビアンキは自信満々に言う。
だがフゥ太の能力のせいか、ビアンキの長い髪が浮き広がり、ぱっと見るとホラー映画に出てきそうな雰囲気を醸し出していた。
もともとビアンキを見るとお腹を壊していた獄寺はいろいろなショックが重なり石化来てしまう事件がぼっ発。
それとは反面にかっこいいですと尊敬の眼差しをハルは向けていた。
「この際、愛のランキングを作って、誰が誰を愛しているかハッキリさせましょ」
「?」
「なっ!何言ってんだよ!俺は嫌だぞ、そんなの!!」
必死に否定するツナを無視して、リボーンは吐くやれとフゥ太に催促する。
するとフゥ太は嫌な顔ひとつせずニコッと笑うとランキングを始める準備を始める。
「そうだな〜……まず最初は……葵兄の愛してる人ランキングから行こうかな」
「「「!!!」」」
「オレ!?いいよいいよ……」
照れつつも誰を1番愛してるか自覚のない葵は少しだけ結果が気になっていた。
ハルを始め、なぜかその場にいたツナ達男も強ばったような表情でフゥの太を凝視していた。
「や、やめろよフゥ太!」
「そ、そうだ…、ランキング小僧…やめろっ……!!」
「あら、隼人起きたのね?」
「フゲェェエエエ!!!」
微かにもらす獄寺の声に気づいたビアンキは慌てて駆け寄ると獄寺の頬に手を沿え、自分の顔が見えるように顔を上げる。
すると獄寺のお腹がギュルルルと音を立てたかと思うと泡を吹いて倒れてしまった。
「獄寺君ーーーっ!!」
「隼人もこんな所でお昼寝なんて…まだまだ子供ね」
「(違うーーっ!この人が強制的に眠らせてるだけだからーーっ!!)」(ガーン)
「ねぇ、ランキングしてもいいの?しちゃだめなの?」
痺れを切らしたフゥ太は頬を膨らませながらツナに聞く。
ダメだよと否定するツナに山本は笑いながら肩に手を置く。
「まーまー。こういうのも良いんじゃね?(オレも気になるのな)」
「ハルも山本さんに賛成です!葵さんの本当の気持ちが知りたいです!って事でフゥ太君お願いします!」
「待って待って!葵は大丈夫なの!?」
「えと、オレは――ちょっと気になるかも……」
当の本人にそう言われるとツナも何も言えなくなってしまった。
「うん。じゃあ始めるよ!」
フゥ太の言葉と共に再び部屋の中は浮かび上がる。
「葵兄の愛している人ランキング、第1位は…………」
「(誰なんだ……!?)」
「(わわっ!わぁーーー!!!)」
「エンツィオ」
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