明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的05 跳ね馬ディーノ(3/3)



お風呂から上がって部屋にいるはずのディーノがいなくて、することも無くなったツナは漫画を読んでいると、ドタドタと騒がしい足音ともにディーノが部屋に飛び込んできた。



「でぃ、ディーノさん!?」

「はあ、はあ……も、もう寝る!オレはもう寝る!!」

「バタバタうるせーな」

「は、はい――(なんか情緒不安定で怖いんだけどー!?)」



ツナは読みかけの漫画を起き、机を端に寄せると奈々が用意していた布団を空いたスペースにひいていく。

そして引き終わるや否やディーノはバタンと布団に倒れ込んだ。



「なっ!?(うちの布団そんなにふかふかじゃないけど、大丈夫!!?)」

「はあ……(なんだよあの質問……反則だろ……!)」



いつもそうだ。

あいつに会うたびに何処か惹かれていって――
本当に何の進歩もねーな…オレ。



「…………ツナ」

「は、はい」

「葵のことさ、どう思う?」

「ええ!?そりゃ……かっこいいし、頼りになるし優しいし――良い友達だなーと」

「ふーーーん。なるほどねえ……」



ディーノの唐突な質問の意図がわからず疑問符を浮かべる。



「ディーノさんは葵とは長い付き合いなんですか?」

「そうだな……そこそこ長いかな」

「葵ってずっとマフィアなんですか?」

「ああ、両親が元々マフィアでな。まあ、いろいろあって今はボンゴレにいるんだけど、千李が心配だから会いに行ってくれって言われたのがきっかけで――」

「センリさん?」

「葵の兄貴だよ。あいつはボンゴレじゃなくて、アッビサーレっつーマフィアのボスしてるんだ」

「…そうなんですね」

「あれ?ツナ、葵から聞いてないのか――」

「おい、お前ら寝ないのか」

「!いや、もう寝るぞ!ツナ、電気電気!」

「んなッ!?」



リボーンとディーノに言われるがまま電気を消し、ツナも仕方なくベッドへと潜り込む。
頭には先程のディーノとの会話がぐるぐるとループしていた。

葵が来て早くも半月が経とうとしている。
まだ出会ってそこまでの日が経った訳では無いが、一緒に住んでいるというのもあり、葵のことを知っているつもりでいる自分がいた。

だけど――



「(……オレ、葵のこと全然知らないんだな――)」



イタリアにいた時のこと。
家族のこと。
好きなものや、嫌いなものだって――

まだ、何も知らない。



「何がボスだよ……」(ボソッ)



ツナはいつも枕元に置いている綺麗な装飾が施されている綺麗な箱を手に取る。
これは昔、迷子になった自分を助けてくれた女の子が落としたもので、いつか返さなきゃと思いながらその子と再会できずに返せないままでいた。

悩んだりするとこの箱を見つめるのがツナの癖になっていた。



「……」



知りたいけど、教えてもらえるかな。
そう思うと怖くなって臆病になる自分がいる。

だけど――…



「(踏み出さなきゃ始まらないよね。オレも――自分のことを話そう。それから……)」



2人の臆病者が何かを決めた夜だった。





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