明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的05 跳ね馬ディーノ(2/3)



晩ご飯を食べ終わってから順番にお風呂を済ませていく。
葵は自室で明日の準備をしているとコンコンとノックの後にディーノが扉から顔をのぞかせる。
ツナの部屋で一緒に寝る予定なのだが、そのツナは今お風呂に入っており、話し相手がいなくて暇だから葵の部屋に来たという。



「奈々さんの料理どうだった?すごく美味しいよな〜」

「ああ、すっげー美味かったぜ!ただ……机の上にこぼしまくっちまったけど……」

「あはは……」



ディーノは部下がいないと著しく運動能力が低下してしまう究極のボス体質を持っていた。
今は部下たちはホテルに返して1人も居ないためその体質が発生してしまい、結果何も無いところで転んだり、箸が上手く使えずランボと同じくらい机の上にご飯を零したりしていたのだ。

その体質のことをツナは知らなかったが、リボーンによって呆気なくバラされてしまったのだ。



「元気そうでよかった。リボーンがいるとはいえ、慣れない土地で大変だろうなって」

「沢田家の人達を始め、みんなすごく良い人達ばかりで――おかげで楽しく日本での生活を送れてるよ」

「なら良かった」



嬉しそうに日本でのことを話す葵に、ディーノも安心したのか笑みをこぼす。



「そういえば男装のこと、どうすんだ?ずっと隠し通すのは――なかなか厳しいと思うけど」

「うーん……とりあえずツナにはタイミング見計らってカミングアウトしようとは思ってて。一緒に住んでるし、ボスだし――」

「ふーん……」

「……でも、このままの方が良いのかなと思ったり」



どうして?とディーノの問いに一瞬言葉を詰まらせるが、ゆっくりと話し始める。



「……それを伝えるのって今まで騙してたって言うのと同じだなって思って。それを聞いたツナに失望されたら怖いなーって」

「…………失望するようには見えないけどな」

「うん。きっとツナは優しいから許してくれると思う。けど…………ちょっとだけ怖いんだ」

「…………」



ディーノは何も言わず葵の頭をポンポンと撫でる。



「……みんながみんな、お前を利用しようと思ってる訳じゃないぞ」

「!」

「もっと他人を頼れば良いんだよ。全部1人では背負いきれないのはみんな同じだ。だから、仲間やファミリー達がいて、みんな信じあって生きているんだ」



そう言ってディーノはニッと笑う。



「少なくともボンゴレは大丈夫だ。オレが保証する。リボーンもいるしな」

「…………」

「他にも9代目や他のボンゴレ達だろ……あとはオレらもいるわけで――とにかくもっと頼れ!絶対離れたりしないから」

「……ふふっ。本当にディーノさんは優しいね」



そう言いながら笑う葵にディーノの鼓動がドクンと大きく動く。



「本当は…優しくなんかねーぞ?」

「そんなことないよ。なら、どうしてこんなにオレに構ってくれるの?」

「……!(ま、また豪快に聞くなあ!!)」



まっすぐ見つめてくる葵の瞳から逃れるようにディーノはきょろきょろと辺りを見渡し、急に立ち上がると部屋を出ていこうとする。



「え!ちょ――」

「もう遅いから寝るな!!!」

「は、はあ……」

「おやすみ!!」

「おやすみなさい?」



ディーノが部屋から出ていくと再び部屋に沈黙が訪れる。
急に慌ただしく出ていくディーノの姿を思い出しては葵は小さく笑った。



「……ありがとう、ディーノさん」





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