◎ 標的04 チャイニーズ・チャイルド(1/2)
空も赤く染まり始めた夕方頃。
葵は買い物袋片手にメモを見ながら家路へと着いていた。
「(うん。奈々さんに頼まれてたのはこれで全部だな)」
「〇△×※!」
「?」
服の裾を引っ張られ振り向いてみると赤いチャイナ服を着たランボと同じ歳くらいの子供が立っていた。
葵はその子となるべく同じ目線になるようしゃがむと笑いかけながら話しかける。
「どうしたの?」
「!……+〇☆!」
だがその子が話す言葉は日本語でもイタリア語でもない、あまり聞き馴染みのないもので葵に伝わっていなかった。
するとその子は財布を差し出した。
「これって――もしかしてオレが落としたのを届けてくれたのか?」
「(こくり)」
「そうだったのか……ありがとう!助かったよ」
そう言って葵はニッと笑う。
するとその子は少し恥ずかしそうに頬を赤らめるともじもじとしていた。
その時、ぐぅーっと腹の虫が鳴り響く。
「もしかして……お腹空いてる?」
「!…………。(こくり)」
「そっかそっか!もう晩ご飯の時間だもんな。ちょっと待ってて」
葵は走って近くのコンビニへと駆け込む。
そしてすぐに新しい買い物袋を持って出てきたかと思うと、そこからあんまんを取り出して子供にはいと差し出す。
突然のことに驚きながらも、遠慮しているのか首を横に振る。
「もしかして、あんまん嫌いだった……?」
「!」
不安そうに葵がそう聞くとその子は慌てて首を横に振る。
それを見て安心した葵は笑いながら言う。
「良かった!」
「!」
「なら遠慮しないで。これは財布を拾ってもらったお礼だから」
少し迷ったあと、子供は葵からあんまんを受け取る。
それを見て#namehは笑うともう1つ自分用に買っていたあんまんを取り出して、近くのベンチへと腰を下ろす。
「そういえば君の名前ってなんて言うの?」
「イーピン!」
「イーピンね。オレは葵だよ。よろしくね」
「〇☆*♯!」
あんまんを食べながらのんびりとした時間を過ごしていると、18時を告げる夕方の音楽が町内放送から流れ始める。
奈々から晩ご飯のお使いを頼まれていて、その途中だと思い出して、やばいと言いながら葵は立ち上がる。
「オレ、もう帰らないと――」
「!」
「イーピンも帰らなきゃだよな。送っていこうか?」
イーピンは大丈夫と言わんばかりに首を横に振るとニコッと笑った。
「……わかった。気をつけて帰ってね」
「〇△×◎」
「オレは大丈夫だよ。財布ももう落とさなように気をつけなきゃね。じゃあ……またね、イーピン」
「!」
ニッと笑いかける葵にイーピンの頬は赤く染る。
そしてお互い家路へと着いた。
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