明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 なんのために(4/5)



「はあ……はあ…………」



思わず屋上から逃げてしまったものの、これからどうしようかと葵は足を止めた。
逃げ続ける訳にもいかないのはわかっていたが、戻って謝るのもなんだか躊躇われる。

走って乱れた息を整えていると聞きなれた声が消火栓から聞こえてきたかと思うとその扉が開き、そこには優雅に椅子に座ってコーヒーを飲むリボーンの姿があった。



「ちゃおっス。お前がそんな慌ててるのは珍しいな。何かあったか?」

「リボーン!…………ちょっとあって───」



言葉を濁す葵に何か察したのか、リボーンは並中に自分用にと作っている基地でコーヒーでも飲むかと誘いをもちかけた。
そんなリボーンに甘えて葵は少しだけ基地で休ませてもらうことに。

初めて入る基地にきょろきょろとしている葵にリボーンはコーヒーを差し出す。



「ありがとう」

「うめぇだろ。オレのお気に入りの豆だぞ」

「うん。すごく良い香りだね」



ニッと笑う葵にリボーンも小さく笑みを浮かべる。

少し落ち着いたのを見計らって、早速本題に。
まずリボーンはなぜあんなに慌てていたのか問い、それに対して葵は答えていく。
いきなり雲雀から戦闘を持ちかけられて断ったが聞いてもらえずどう事態を収集つけようかと考えていたらツナ達がやってきて、そのツナを護ろうと寸止めしたが咄嗟に雲雀へ手を出してしまった、と。



「……ヒバリさんと言えども一般人なのに───手を出すなんて最低だ…」



また落ち込む葵とは裏腹にリボーンは言った。



「別に気にすることじゃねーだろ」

「!」

「元を辿れば手を出してきたのはヒバリだ。それにツナを護ることは9代目からの命令で葵はそれに準じただけだ」

「(確かに…そう言ってしまえばそうだ……)」



リボーンの言ってることも理解出来るし、その通りだと思う自分もいる反面、それで本当に良いのか?と自問している自分もいた。

苦い顔を浮かべて俯いているとリボーンは続けた。



「なんのために力をつけたのか、その力をどう使うのかはっきりして落とし所つけとかねーと、今後もこんな風に悩むことになるぞ。今後もっと強えー敵とツナ達が対峙することになった時、お前がうじうじしてたら何も残らねーぞ、葵」

「!」

「9代目がなんのために日本に行ってツナを護れって言ったのか考えてみろ。俺の知ってる9代目は考えなしに命令を出したりはしないと思うぞ」



リボーンに言われて頭の中を駆け巡るのは自分に戦いを教えてくれたあの人との記憶。




「うわっ」

「はーい、1本」

「なんで勝てないんだー…」

「あんたは強い弱い以前の問題。葵の拳や蹴りには迷いが見える。私を気遣ってのことかしら?随分舐められたもんだわ───」

「だってまだ加減とか出来ないから当たったら……」

「…葵、1つ忠告しておく。戦いの場では迷った者から死んでいく。つまり今のあんたみたいなやつは1番に死んでいくのよ」

「!」

「護るために力を振るえば良いと確かに言った。だけどそれ以前の問題よ。護る護れない以前にあんたはその土俵にすら立ててない」

「…………」

「なんのために力を得るのかもう一度よく考えてみなさい。考えなしに力を与えるほど私だって馬鹿じゃないわ」




「……昔、同じようなこと言われたよ」

「ジェーン・ロッシか」

「知ってるの!?」

「オレを誰だと思ってる。最強のヒットマンだぞ」



そう言ってリボーンは得意げに笑った。

ジェーン・ロッシとはボンゴレの暗殺部隊ヴァリアー所属の元メンバーだった。
だが、どういう巡り合わせか9代目から葵と一緒に行動するよう指示を受け、それからはヴァリアーの仕事より葵との特訓や事務処理のサポートなどを行うように。

ジェーンは金髪のポニーテールがよく似合い、明るい女性だったとリボーンも記憶していた。



「そっか…このままじゃ戦いの師匠であるジェーンにも恥をかかせちゃうことになるな…」

「出来の悪い教え子を持つと苦労するぞ。今のオレみたいにな」

「…………」



すると葵は残ったコーヒーを全て飲み終えごちそうさまと言うと基地から出ようと準備を始める。



「まだ答え出きってないけど…まずはヒバリさんに会いに行ってみる」

「早速か。焦んなくても良いんだぞ」

「ありがとう。でもうじうじしてるのオレらしくないなって!」



ニッと笑う葵にそうかとリボーンは言葉をもらす。
コーヒーごちそうさまと言うと葵は基地から出ていった。





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