明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的03 風紀委員長(2/2)



時間は過ぎてお昼休み。
各々が弁当や購買で買ったパンなどを持って食べたい人に話しかけていく中、ツナは授業が終わるや否や葵の席に向かう。



「葵、一緒に食べよう」

「うん!」



奈々に作ってもらった弁当をカバンから取り出し、席から立った瞬間、朝の雲雀とのやり取りが頭をよぎる。



「ツナ。応接室ってどこにあるんだっけ」

「なぁっ!よりによってなんでそんなとこに!?」

「朝、ヒバリさん?に呼び出されたから行かなきゃって思って」

「そういえば……」

「またエラいやつに呼ばれたなー」

「山本!」



顔を青くするツナとは対照的に笑いながら山本は2人の元へ駆け寄る。
その後ろには獄寺の姿も見えた。



「別に行かなくても良いんじゃねーの」

「そうだよ!下手したら葵……殺されちゃうよ!」

「ただあいつの場合、無視した方がめんどくさそうな気もするのな」

「だけど――(よりによってなんでヒバリさんなの!?一体何が気に食わなかったんだ〜!!)」

「ツナ、大丈夫だよ。最悪の場合は逃げれば良いし!」

「逃げ切れれば良いけどな」

「不吉なこと言うなよ、獄寺…」



心配そうな表情を浮かべながら、山本の言うことも一理あると思い、ツナはしぶしぶ応接室の場所を教えた。
その時に殺されかけたら戦うんじゃなくてダッシュで逃げることを約束して。

着いていこうかと心配するツナ達に葵は大丈夫と言うと早速教えてもらった応接室へと足を進めた。



「(応接室、応接室、と――あった!)」



一通りの少ない棟の一角に応接室とプレートの掛かった教室を見つける。
そこの扉をノックすると雲雀の入ってと言う声が聞こえた。

恐る恐る扉を開けてみると、机に向かって作業をしている雲雀の姿と、他の教室とは比べ物にならないほど高価な家具たちに葵は珍しそうに教室内を見渡す。



「なに。そんなに珍しい?」

「ここだけえらく立派だなと……(風紀委員って学校での立場はかなり上なのか……)」

「ふーん」



雲雀はそう言うと視線を机に移し作業を再開させる。
その間、なんとも言えない沈黙が2人の間に流れた。



「あの……」

「……何」

「用ってなんですか?特にないなら戻りますけど――」

「…………」

「(うーん……帰って良いって事なのかな……)」



葵が雲雀に背を向け扉に手をかけた時、椅子から立ち上がる音が聞こえる。
振り返ってみると葵の方へ一歩一歩と近づいてくる雲雀の姿を捉えた。

呼びかけても特に返答はなく、気づけば葵は壁の方まで追いやられていて、逃げられないように雲雀は顔の横に手を置く。



「え、と……何してるんですか?」

「君が逃げないようにしてる」

「うん?……なるほど?」

「えらく冷静だね」

「?別に焦る必要ないかなと――」

「意味わかんないんだけど」

「それはこっちのセリフです」



葵がそう言った瞬間、再び訪れる沈黙。
その沈黙を最初に破ったのは、今度は雲雀だった。
小さく笑いながら雲雀は壁に着いていた手を離し、一歩後ろずさり距離をとる。



「よく僕に口答え出来たね。怖いもの知らずなのかただのバカなのか――」

「バカって……!」

「君、赤ん坊の知り合いでしょ」

「赤ん坊って……リボーンのことですか?」

「まあね。赤ん坊の知り合いってだけでも変なのに、それプラスバカときたか――」



なるほどね、と言いながら雲雀はまた葵に近づく。



「気に入らなければ咬み殺そうかと思ってたけど――ま、良いや」

「咬み殺すって――オレは食べれませんよ……?」



葵の発言に雲雀は一瞬目を見開かせて驚く。
次の瞬間、小さく笑った。



「クククッ……呆れた。君って本当にバカなの?」

「え……っ(ば、バカにされてる……!!)」

「変な子――(……使い方次第では退屈しのぎになりそうだ)」



おもちゃを手に入れた子供のように笑う雲雀に葵は首を傾げる。



「そういえば、なんで初見でオレが……“女”だってわかったんですか?」

「そんなのが解らないのはニブイ草食動物と君くらいだよ」

「そ、そうなんですか……!どこがダメですか!?」

「さあね」

「ぐぬぬ……」



どうすれば男らしく見えるか、ぶつぶつとそれに関して呟いている葵に雲雀は言う。



「君、風紀委員に入りなよ」

「え?」

「風紀委員に入れば君が女だとバレそうな時、その根源を咬み殺してあげる」

「ヒバリさん……!(心強――)」



ただし。



「断った場合は……そうだね――あの草食動物達に女だってバラそうかな」

「!!」



な、なんだって……?



「実質拒否権ない気が……?」

「断れると思ってたのが驚きだね」

「(この人ムチャクチャだー!!)」



ボスであるツナはともかく、他のファミリーには女であることはバラす予定は今のところない。
それどころかもし多くの人間に女だとバレてしまうと、9代目の命を破ることになり下手をすればイタリアに強制帰還ということも考えられる。

流石の葵もこの話に乗らない訳にはいかず泣く泣く承諾することに決めた。



「……わかりました。女だってバレるとあまり都合良くないので――」

「良い返事だね」

「でも風紀委員って何をすれば良いんですか?」

「僕が呼んだら来る。それだけで良いよ」

「はあ……?(意外と簡単な仕事なのか?)」

「今日はもう良いよ」



雲雀の言葉を聞くと、葵は失礼しますと一言告げると応接室から出ていく。

残された雲雀はまた席に戻ると小さく呟いた。



「山下、葵ね――」



そして小さく笑みを零した。





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