明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 夏祭り(5/5)



「ありがとうございましたー!」



最後のお客さんを笑顔で見送ったのち、葵は嬉しそうに両腕を上げる。



「完売だー!!」


無事に売り切ったのを確認すると「完売しました」と書かれた紙を屋台へ貼って閉店準備を始める。

あれから結構時間は経つがツナどころか獄寺や山本も戻ってくる気配がない。
心配になって携帯を開こうとした時、ちょうど京子とハルが通りかかって葵に声をかけた。



「葵さん!あんなにたくさんあったのに完売したんですか!すごいです〜!」

「みんなの作ったチョコバナナ美味しかったもんね」

「二人ともありがとう」



ハルは葵の腕に自身の腕を絡ませながら嬉しそうに言った。



「これで一緒に花火見れますね!」

「うん。だけど他のみんながいなくて……どこに行ったか知ってる?」

「さっきリボーン君から連絡があって、花火の隠れスポットを教えてくれたの。ツナ君たちもそこにいるんじゃないかな?」

「そうなんだ!」



あたりはどんどん暗くなっていく中、夏祭り最大イベントの花火が打ち上がるのを心待ちにしている人々の熱気が伝わってくる。
葵は二人の後をついていきながら電灯が付いた提灯を眺めたり、浴衣姿でデートするカップルを見たりといつもとは違う夏祭りならではの雰囲気を楽しんでいた。



「葵さん。イタリアでもこういうお祭りごとってありましたか?」

「…………」



ハルからの問いに一瞬固まってしまった自分がいた。

イタリアにいた頃はなかなか仕事以外では自由に外には出られなくて…。
催し物やお祭りがあったかもしれないけど…それをオレは知らない、わからない。

何気ない質問からやはり自分は普通の人間ではないのだと知らされてしまった。



「葵君?」

「!ごめん。ぼーっとしてた」

「はひ!大丈夫ですか?」

「うん。えと……イタリアの祭りなんだけど、あんまり行ったことなかったから知らなくて…ごめんね」

「「!」」



二人はキョトンとした顔になり、それを見た葵はやってしまったかと思ったその時だった。



「どうして葵さんが謝るんですか?」

「え」

「そうだよ。私達もイベント事を網羅してるわけじゃないから。じゃあ、今日の夏祭りはどうだった?」



ニコッと優しく笑う二人の姿に戸惑いながらも葵は答える。



「……すごく楽しかった!」

「ならよかったー!」

「屋台やるのも楽しかったけど、次は神輿とかも見てみたいかも」

「確かに神輿はすごい迫力満点なのですごいですよ!来年はみんなで一緒に見ましょうよ」

「うん!」



今日の夏祭りだけじゃない。
旅行に行ったり、キャンプに行ったり…みんなと過ごした日々がキラキラとした思い出になっていく。
また一緒に◯◯やろうとか、◯◯見ようとか――些細な約束がオレにとってすごく宝物で嬉しかったんだ。



「あ、ツナ君たちだ!」

「!」



人混みから離れた神社の裏手に何故かボロボロになったツナ達の姿。
リボーンの話によるとひったくり犯と撃退したのち、その場にいた雲雀から売り上げを守るために戦っていたからだとか。



「やっと見つけた!」

「葵!一人にさせちゃってごめんね…」

「ケッ。どーせオレらがいないことに焦ってたんだろ」

「それは…そうだったけど……」

「だけど葵君、一人で残ったチョコバナナ売り切ったんだよ」

「嘘だろ!?」

「そうですよ〜!すごく大繁盛だったんですけど、テキパキ一人でこなしていてクールでした!」

「へー!葵やるな!!」



そう言いながら山本は葵の頭をくしゃっと撫でる。
リボーンもさすが葵だなと笑っていた。

するとドーンと大きな音を立てて花火が打ち上がり思わずみんな釘付けになっていた。



「綺麗……」

「本当にね」



オレにとっては見慣れていたはずなのに、
みんなで見たこの日の花火は最高にキレイでーー



「…………」



きっといつまでも忘れない、素敵な思い出になったんだ。





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