明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 ジョイフル(4/4)



「…………」

「……葵?」

「ツナ。起こしちゃった?」



まだまだ夜が明けてなくて薄暗い部屋の中、葵は1人椅子に座って外を眺めていた。
まだ寝ている獄寺と山本を起こさないようツナもそこに座ると窓の向こうに見えるのは綺麗な星空。
思わず言葉を失ってしまうほどだった。



「きれー…」

「辺りも暗いからよく見えるよな」

「葵寝れなかったの?」

「ちょっと目が覚めちゃって。それで外見てみたらすごく綺麗で見とれてた」



葵はそう言いながらニッと笑った。



「ツナ、ありがとうね」

「え?お、オレ、別にそんな風に言われるようなこと何も――っ」

「そんなことないよ。ツナがいたから獄寺や山本に会えたんだから」

「!」

「それに――こんな風に友達と旅行できて嬉しかったんだ」



目の前にいるのは確かにオレと同い年の子だけど、今までの経緯とかはオレとは全く違う。

どんな世界で、どんな人達と、どんな風に生きてきたのか。
互いにとっての平凡は、互いにとっての非凡で。
今、そんな2人が出会って同じ日常を笑いあって生きている。

そんな当たり前のことがやけに大切に思えてきて、何故か目が熱くなって泣きそうになったのをオレは覚えてる。



「これからも……」

「ん?」

「これからもたくさん旅行に行こうよ。さっきみんなでした約束も全部叶えよう!たくさんたくさん楽しい思い出作ろうよ、葵」

「…………うん!」



オレは、オレの思い出にいつもみたいに笑ってくれる君がいてくれたらそれで良いんだ。







「ぬわああああ!!10代目起きてください!!てめーらも起きろ!!」



獄寺の叫び声で3人は目を覚まし、どうした?と尋ねると真っ青な顔で時計を指さしながら言う。



「寝坊したんだよ!このままだと新幹線間に合わねーぞ!!」

「ええ!?」

「しかもオレら自転車返さなきゃいけないから……」

「「「…………」」」



数秒固まった後、一斉にバタバタと帰る支度を始める。
部屋を整えて、忘れ物がないか一応確認すると慌ただしく旅館を後にする自転車へ乗り込んだ。



「急げ〜!!」

「10代目!頑張ってください!」

「(何これハード過ぎない!?)」

「!駅見えてきた!!」

「「「!」」」



《――番乗り場、発車致します》



「はあ、はあ……間に合ったー……」

「死ぬかと思った……」

「散々だぜ……」

「あははっ。人間死ぬ気になればなんとかなるもんだな」

「ったく…呑気なヤローだな」



するとぐ〜と4人のお腹がいっせいになる。
みんなで目を見合せあうと面白くなって思わず笑いあってしまった。



「朝ごはん食べれずじまいだったもんね」

「でもご飯とか買ってないよー…」

「……そうだ。昨日の駄菓子で食べよーぜ」

「まあ、何もねーよりはマシか」



無事に席に着くと行きと同様席を向かい合わせに移動させる。
そして昨日買った駄菓子を食べながら行きと同様たわいの無い話をしていたのだが、だんだんと言葉数は少なくなっていく。



「あらあら。仲良しね」



気づけばみんな眠ってしまっていて、仲良さそうなその4人の姿に乗務員も他の乗客も微笑ましそうに見ていたとか。





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