◎ 繋いだ手から(3/3)
「よーし。ここからもうちょっと頑張ろーう!」
「おーう!」
店を出てまた熱気が体を包み込みじわっと汗が滲む。
4人は奈々からもらった飴を舐めつつ目的地であるプラネタリウムへと足を進めた。
暑かったけどさっき休憩したのが効いてるのか足取りは軽くあっという間にたどり着いた。
チケットを買って中に入ると星や宇宙にまつわる展示や解説が飾ってあり、中には実際に触って体験出来るものがあって子供たちだけではなく、葵も興味をひかれていた。
そんなこんなでいろいろと見ていると目的であったプラネタリウムの開場時間になった。
「結構人多いんだね」
「そうだね。夏休みだからかな――」
「まだかな〜まだかな〜!」
「:%$○♪!」
しばらくするとアナウンスが流れて場内のあかりは消えて真っ暗になったかと思うと投写機から天井に向かって星空が映し出された。
普段見えている星空は地上の明かりで照らされて見えないものも多くあり、実際地上の明かりを全て消した時には今まで見えなかった小さな星々も見えるようになる、と説明が終わると先程とは打って変わって満天の星空が映し出されて思わず息を飲むほどの美しさだった。
人工的に映された光に過ぎないのに、どうしてこんなにも美しいのだろう。
「(すごい……)」
夏の大三角形。
天の川。
アンタレス。
さそり座。
一つ一つの星に名前がついていてそこに物語があり、日常生活ではなかなか触れることの出来ない内容に葵達はどんどんのめり込んでいく。
だけど、明けない夜はない。
ゆっくりと太陽が姿を現していきそれと共に空は明るく、星はどんどん姿を消していく。
「――以上で終了となります。今度は本当の星空で今日紹介した星や星座を探してみてください」
アナウンスが終わると共に会場もゆっくりと明るくなっていく。
みんな感想を述べつつ席を立っていき、葵達もその流れに沿うように会場を後にしようとした時、なかなか立とうとしないフゥ太に首を傾げた。
「フゥ太どうしたの?」
「……葵兄。僕もう1回見たい!」
普段あまりわがままの言わないフゥ太がここまで言うとはよっぽどプラネタリウムが気に入ったのかなと思いつつ、どちらにしても次の人が待ってるから1度外に出なくちゃいけないからと言い聞かせるが納得いっていないのかなかなか立とうとしない。
ムッとしたようにランボが喧嘩をふっかけようとした時、その様子に気づいた従業員のお姉さんが声をかけてきた。
「あらら。僕、プラネタリウム気に入ったの?」
「…………」
「そうみたいで…すごく綺麗で感動しました!な?」
「すっごいピカピカのキラキラだったもんね!」
「☆×%○〒!」
満足してくれた様子にお姉さんはニッコリと笑うとまずは葵に向かってある提案を持ちかける。
「実はね、さっき見た星空を写す機械を無料で作れるキャンペーンをやっていてね」
「え、自分たちで作れるんですか!?」
「ここまで本格的なものではないけど……なかなかのクオリティーだから家で見る分には十分楽しめると思うわよ」
「へえ……!」
「ということで僕。手作りプラネタリウム教室に参加してみない?ここで作れば家でもさっきの星空見放題よ〜」
「!行きたい!」
「(お、)」
「よーし。じゃあお姉さんに着いてきてね〜」
お姉さんに着いていくと期間限定ブースが設立されていて、そこには手作りプラネタリウムを作ろう!と看板が立っていた。
そこの係の人に何やら説明してくれるとすぐにプラネタリウムを作らせてもらえることに。
葵はそのお姉さんにお礼を述べると3人に混ざってプラネタリウムを作ることに。
作り自体はシンプルで星座を書いた紙に穴を開けて豆電球を照らし映し出すというもの。
まずは黒い紙に星座を書き記すことに。
「なかなか難しい……」
「綺麗に出来なくても大丈夫ですよ。実際にはない星座を書いて自分だけのオリジナルにするのでもありだと思います」
「自分だけの――」
思い思いに星座を書けたら穴を開けていき、そこに上手く照らせるように電球を付ければ手作りプラネタリウムの完成。
実際完成したプラネタリウムを確認する部屋も用意されていて、それぞれのプラネタリウムにみんなの個性が現れていた。
フゥ太も満足したのか嬉しそうに笑いながら大事そうに手作りプラネタリウムを抱えていた。
気づけばもう夕方でヒグラシの鳴き声が聞こえてくる。
まだまだ暑いけど日が陰ってきているからか昼間ほどの強烈な日差しはなく、少しだけ過ごしやすい気温へ下がっていた。
「ランボさんまた行きたいもんね!葵、また連れてってくれ〜!」
「うん。今度はツナ達も一緒に行けたら良いね。イーピンも楽しかった?」
「#○*☆♪!」
「そっか!なら良かった。フゥ太も手作りプラネタリウム上手くできて良かったな」
「うん!これ僕の宝物にするよ!帰ったらビアンキ姉やママンにも見せてあげよう〜っと」
伸びていく長い影と手を繋いで帰る道のり。
今日の出来事が思い出へと変わっていく。
「みんなにも今日のこと話してあげよう!きっと喜んで聞いてくれるからさ」
「うん!」
繋いだ手から感じる夏の暑さとは違う温かさは忘れてもきっと何度でも思い出すはず。
離れてしまっても何度でも繋ぎ直すことは出来るはずだから。
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