明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 入れ替わり(4/4)



体育も無事に終わり放課後。
葵が掃除当番だったため、ツナは代わりに他の当番の子達と一緒に教室の掃除をしていた。
するとその内一人の子がゴミを捨ててくると教室から出ていってしまい、同じ当番だった京子と2人きりになる。

負担の葵ならどんな会話をするだろうと考えるけど全く思い浮かばず、かといっては京子にどんな会話を降れば良いのか分からず思わずため息が漏れてしまう。
するとそれに気づいた京子が笑いながら話しかけた。



「どうしたの?ため息なんて葵君らしくないよ?」

「きょ、京子ちゃん!」



まだどんな風に接したら良いのか分からずどうしたものかと考えるが、ここで無視する方が心象悪いとも思い、頬をかき苦笑いを浮かべながら言葉を紡ぐ。



「今日のツナ凄かったよね〜って思って」

「聞いたよ!山本君のボールもキャッチしたんだって?」

「(もう女子まで広まってるのか……)」

「でも、それがどうしたの?葵君、なんだか辛そうな顔してるけど……大丈夫?」

「!」



京子に核心を突かれてなんと答えていいのか分からず口ごもってしまう。



「……今日のオレってダメダメじゃなかったかな?なんというか――いつものツナみたいな……」

「ツナ君みたい?」

「!(お、オレ、何葵の姿で嫌なこと言ってんだ!?この馬鹿!!)」



先程の言葉を弁解しようと口を開こうとした時、京子は言った。
今日のツナは葵みたいで、葵はツナみたいだ、と。

予期せぬ答えに思わず言葉を詰まらせていると京子は優しく笑った。



「今日の葵君は…確かにいつもと違っておっちょこちょいだなって思うところもあったけど、そこも含めていつもと違って、なんだか不思議だな〜って思ってたんだ」

「そ、そうなんだ」

「いつもの葵君の優しさとは違う、今日の葵君ならではの優しさとか温かさがあったなって私は思うよ」

「(……きょ、京子ちゃん……!)」



優しい京子ちゃんの言葉に思わず泣きそうになった。

葵のことは大切な友達だけど、
どんな姿でも人気者で魅力的な葵にもしかしたら嫉妬していたのかもしれない。
すごいな、羨ましいなって。

だけど、京子の言葉で気づいた。
自分には自分だけの良さがあって、それをわかってくれる人がいる事を。



「……ありがとう、京子ちゃん」

「どういたしまして、ツナ君」

「ん?」

「……あれ!?私どうしたんだろう…ツナく 君と葵君を間違えるなんて……」



そうだよ。
オレは体は葵だけど、心は沢田綱吉で、
別に葵になろうとしなくても良いんだ。
例えダメツナと呼ばれようとオレにしかない何かがきっとあって、それに気づいてくれる人はいる。

だから、オレはオレのままで良いんだ。



「(早く葵に会いたいな……)」







掃除を終えて昇降口に向かうとそこには葵が待っていて、それを見るや否や一気に足取りが軽くなった。
葵はツナに気づくとニッと笑うと両手を合わして申し訳なさそうに掃除当番を代わりにやってもらったことに対して謝罪を述べた。



「別にこの位大丈夫だよ」

「ありがとう、今度変わるね。……ん?なんだかツナ、嬉しそうだな!」

「ええ!?そんなことないよ――」



といいつつ照れくさそうに笑うと下駄箱から靴を取り出すと履きながら言った。



「そーいえば、今日の数学のテスト補習かも……ごめんね……」

「あははっ。全然大丈夫!ヒバリさんから逃げる言い訳に使わせてもらうよ」

「それでもヒバリさん呼び出しそうだけど…」

「た、確かに――」



いつものように会話を交わす2人。
体が入れ替わっているから自分自身に話しているような違和感は感じていたが、お互いの心は普段と変わらないからか穏やかな空気が流れる。



「今日で察したけど葵ってやっぱりすごいよ。オレも頑張らなくちゃ――」

「……思ったんだけど、体このままだとツナがヒバリさんの手伝いしなくちゃいけないんじゃ――」

「それだけはマジで勘弁して!!!」



ツナの即答に葵は思わず笑みがこぼれる。
するとその笑顔につられたのかツナも笑っていた。

そろそろ帰ろうかと家路につこうとした時だった、またしてもツナがずるっと昇降口の甲階段で足を滑らせてしまう。
転けそうになっているツナを支えようと葵は前に出るが支えきれずに朝の時のように思いっきり頭をぶつけてしまき鈍い音が響き渡る。

お互い涙目になりつつ痛む頭を擦りながら大丈夫?と声を掛け合いながら顔を上げるとそこには見慣れたそれぞれの姿がそこにあった。



「「元に戻ってる!!?」」



どういう原理なんだ…と疑問には思ったものの、とりあえず元に戻ったのなら良かったと2人は笑いあった。
そして立ち上がると改めて帰ろうかと家路に着いた。

そう、これは――何の変哲もない日常に訪れた、非科学的な有り得ない非日常のお話。





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