◎ 入れ替わり(3/4)
5時間目の授業が終わると、小テストが惨敗だったツナは真っ白になりながら机に顔を突っ伏していると山本が笑いながら頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「お、珍しく葵撃沈か〜?」
「ま、まあ……(葵本当にごめん〜〜っ)」
「オレもやばかったし、補習なら一緒に頑張ろーぜ」
「ったく、何してんだか――10代目はどうでしたか?」
「オレは多分大丈夫だと思う!」
「流石です!お前らも10代目を見習えよ!」
「へ〜珍しくツナは出来たのな!すげーじゃん!」
山本はツナの肩に腕を乗せると次の体育で汚名返上だなと笑いかける。
が、いくら見た目は葵といえども中身は運動が苦手なツナなわけで……ツナ自身も無理だと白目を向き、誤魔化すようにあははと力なく笑った。
いつもと違うツナに葵は大丈夫かな?と気にはしていたけど、準備におわれてしまい、声をかける間もなく授業が始まってしまった。
今日の授業はドッヂボールで、運良く?葵とツナは同じチームで内野で敵にあるボールから避けている最中だった。
だが、中でも運動神経があまり良くないツナを狙ってボールが思いっきり投げられ、味方チームも叫ぶ。
「おい、ダメツナ!?」
「避けろーー!!」
今までの経験上、ツナがボールをキャッチするなど不可能と知っているクラスメイトたちは口々に避けるように叫ぶ。
だが、葵は避ける素振りを見せず飛んできたボールに対して真正面で受け止める。
しかもそのボールは山本の投げてきた豪速球で、普通の人でも取り損ねてしまうようなボールをあのツナがキャッチした光景に思わず周りからも歓声が上がる。
「うそだろ!?」
「あのダメツナが!」
「オレらは夢でも見てんのか!?」
「やるじゃん!見直したぞ!!」
そんなみんなの歓声にニッと笑いかけると、反撃と言わんばかりに相手チーム目掛けてボールを投げる。
すると普段のツナからは考えられないような威力でどんどん相手チームの内野はボールに当たってしまい外野へと出ていき、味方のボールテージもマックスへ。
一方のツナはと言うとそんな葵を尊敬の眼差しで見つめていた。
「(さすが!どんな姿でもやっぱり葵はすごいや!)」
「おーい、葵いったぞ」
「え、ええ!!?」
ツナめがけて飛んでくるボール。
威力はそこまで無いがキャッチする自信のなかったツナは思わず固く目を瞑るがいつまでとってもボールが当たった衝撃を感じない。
恐る恐る目を開けてみると目の前には自分の背中があって――笑いながら一言り
「大丈夫?」
「あ、えと、つ、ツナ〜〜!!」
「よっと」
軽々キャッチしたボールを改めて敵めがけて投げていき、どんどん外野へ出していく。
そして1番の難関であった山本にもボールを当てて、なんとツナと葵の属するチームが勝ちを収めてしまった。
終わるや否や、同じチームメイト達はツナを囲み口々に言った。
「ツナ!今日のお前すごかったぞ!」
「山本にもボール当てるなんてやるじゃん!!」
「ま、まぐれだよ」
「いいや!今日のお前は一味……いや、ふた味違ったね!」
「……(やっぱり葵はすごいな……)」
どこにいても、何をしていても、
不思議と目を奪われてしまうような不思議な魅力があって、
そばに居るオレはただのモブキャラでしかない。
今は人気者の葵の姿を借りてるけど、きっと葵の魅力は外側だけじゃなくて内側からも溢れているもので…
だから、オレも姿をしていてもこんなに輝いて見えるんだね。
一度も勝とうなんて思ったことは無いけど、
やっぱり葵はすごいんだと改めて感じたんだ。
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