◎ 入れ替わり(2/4)
チャイムの音と共に2人を教室に滑り込むとそれに気づいた山本がニッと笑いながら言った。
「お、お前らギリギリセーフだったな」
「山本!」
「お、おはよう!」
「おう!おはようさん」
登校してきてろくに会話もしていないから当たり前なのだが、とりあえず山本に2人が入れ替わっていないことを悟られていないことを確認し胸を撫で下ろす。
そんな3人に気づいた獄寺もツナたちに駆け寄り、笑顔で挨拶をした。
「10代目、おはようございます!」
「おはよう、獄寺…………君っ!」
「(そういえば葵、獄寺君のこと呼び捨てだった!!)」
「今の間は…どうかしましたか?」
「(やばい!いつもの癖でつい……!)」
「(ここはオレがフォローしなくちゃ!確か葵はこんな喋り方だったよな――)ま、まあ気にすんなよ!……あれ?き、気にしないでよ?」
「?どうして疑問形なのな?」
「「えっと……」」
入れ替わったことを悟られないことは思った以上に難易度が高く、早くも2人は心が挫けそうになっていた。
だが、2人がなんとかフォローしあった結果、午前中は怪しまれることなくいつも通りの日常を過ごすことが出来たのだが……
問題は午後の5時間目の数学の授業のこと。
「今日は抜き打ちで小テスト行うぞ〜」
「んな!?」
「ちなみに小テストで赤点だった人は補習あるから覚悟しとけよ〜」
予期せぬ展開にクラスメイトたちはマジかと口々に声を漏らす。
元々勉強が苦手で、最近予習復習をサボり気味だったツナは焦りから汗が流れる。
普段なら補習が嫌だ、ということだけで済むのだが今日は違う。
なんて言ったって今日のツナは葵として小テストを受けなくちゃいけない訳で、つまり今日赤点を取ってしまうと葵が赤点を取ってしまうということになり――
「(やばい…葵のメンツをオレが潰しちゃう……!?)」
でももしかしたら大した内容じゃないかもしれないと一縷の望みを託したが、先生曰く今日の小テストはいつもより難しいとの事でツナは終わったと両手で顔を覆って心の中でひたすら葵に謝罪の言葉を述べていた。
そんなツナを見て、これは厳しそう……と苦笑いを浮かべていると後ろの席の子から肩を叩かれる。
「おい、ダメツナ。お前今日は災難だったな〜。どーせ今回も赤点取るんだろ?」
「あはは……(凄い言われようだ…)」
「ま、そん時は補習頑張ろーな。どーせオレも補習だしな〜」
「!」
いつもは葵達を始め、決まったメンバーといる事が多いけど、なんやかんやでツナに声をかけて、したってくれるクラスメイトは少なくなくクラスでもツナは友人は多い方だった。
ツナと入れ替わってみて、今まであまり話したこと無かった子とも話すことが出来て、葵は新鮮で嬉しかった反面、ツナは人気者なんだなと改めて感じていた。
「でも、お前は葵が居るから良いよなーアイツ頭も良いし、優しいから勉強でも快く教えてくれるんだろ。羨ましいつーの!」
「そ、そんなことないよ」
ツナのことを感心していたら急に自分の名前が出できて、褒められて悪い気はしなかったが照れてしまったが、それを悟られないように笑って誤魔化す。
そして、これ以上話すとボロが出ると悟り、小テスト頑張ろうねと笑いかけて会話を終了させた。
「……(ツナって、みんなに慕われてるよな)」
そう思いながらツナの方に目をやると小さく微笑んだ。
一方のツナはもいうと、近くの席である獄寺と話していた。
「お前、カンニングすんじゃねーぞ!!」
「し、しないよ!(出来るならすごく助かるけど〜〜っ)」
「……まあ、お前なら問題ねーだろ」
照れつつもそう言う獄寺を見て、なんだかんだで葵のことを信頼しているんだなと実感し思わず笑みがこぼれる。
そして普段自分には見せない獄寺の話し方や仕草に少しだけ違和感を覚えつつ、新鮮味を感じていると獄寺は心配そうにツナの方を見つめ呟く。
「それより、10代目が心配だな…」
「?」
「いや、10代目のことだから勉強してないんだろうなって思ってよ…はぁ…今日小テストがあるって知ってたら、勉強教えに行ったのによ……」
「(ご、獄寺君ーーーっ!)」
「ま、どーせリボーンさんや葵が教えてるか……」
「!(葵のこと信頼してるんだな〜…)」
現にいつも丁寧に葵は勉強を教えてくれていて、自分が葵の姿である事を忘れてもちろんと自信満々に言うと獄寺は一瞬呆気に取られたような表情を浮かべる。
しまったとツナが思ったと同時に獄寺はばしっと頭を叩きつつ調子にのんな!と一言告げる。
同じ友達なのに接し方の違う獄寺に戸惑いつつ、見たことない一面が見れて新鮮で少しだけ嬉しかった。
「(オレにもこんな風に接してくれて良いのに――)」
「よーし、小テスト始めるぞ〜」
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