明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 問題児(3/3)



葵は落としたナイフを拾い上げると困ったように笑いながら見つめた。



「あちゃーこんなもの隠し持ってたとは…」

「…………」



すると雲雀は無言のまま葵の手首を掴むとそのまま応接室へと向かった。
そして着くや否やソファに座らせると、自分は救急箱を持ってきて葵にナイフで切りつけられた怪我を見せるよう言った。



「そんな深くないので大丈夫で――「いいから早く見せて」



雲雀の圧に負けて葵は袖をまくって怪我を見せた。
確かに怪我は深くは無いのだが、切り傷というのもあり血は止まっておらず未だに流れていた。

それを見て雲雀はまたため息を吐くと救急箱から消毒液などを取り出し治療を始めた。



「…………本当に君は」

「えと…」

「気を抜きすぎ。敵に背を向けるなんてバカでもやらないよ」

「何も言い返せないです…」



雲雀は手際よく治療を終えると葵の隣から立ち上がる。
そしてくるりと向き直るが、その視線は鋭く葵も静かな圧力をひしひしと感じていた。

間違いなく怒ってる。
しかし、今回自分に非があることを承知していた葵はそんな雲雀に対して何も言えずに縮こまっていた。



「君は風紀委員始まって以来の問題児だよ。メンバーの指示を聞かない。気を抜いて負傷するし、僕が来なかったらどうしてたの」

「ぐっ……」

「あと、集まりに遅刻や無断欠勤するし、学ランは……まあいいや。でも腕章付けてこないのは感心しないな」

「集まりに関してはヒバリさんの連絡が遅いのも原因の1つかと……」

「他は来てるけど?」



他にもぐちぐちと小言を言われるが、確かに自分が悪く何も言い返せず、何故かソファの上で正座をしている始末。
そんな様子をじーっと見ると雲雀は葵に向かって一言。



「君、風紀委員クビね」

「…………え!?」







「ええ!!?葵、風紀委員クビになったの!?」

「あ、あはは……」



家に帰るや否や、今日雲雀から受けたクビ宣言をツナに伝えるとツナも意外だったのか驚きを隠せずにいた。



「え、もしかしてその怪我ヒバリさんに咬み殺されて――!?」

「いや、これはまた違うんだ。ヒバリさんからは特に咬み殺されたりはしてないよ」

「なら良かったけど……でもどうして?」



ツナにそう聞かれると葵は雲雀に言われたことをツナに説明する。
勝手に単独で動くこと、命令を無視すること、規則を守らないことなどなど……。
葵も自分で言っていて、組織である以上、守らなくちゃいけないことを守れていない自分の問題児っぷりに反省をしていく。
ツナもそれはクビになってもおかしくないかと苦笑いを浮かべた。



「これから気をつけよう…」

「(確かにヒバリさんも思うことはあったかもしれないけど…でも1番は葵のこと心配だったんじゃないなな?)」

「!」

「(すぐに葵は無理するから、そういう現場に出くわすことの多い風紀委員にいさせたくなかったとか……)」

「ツナ?」

「(風紀委員辞めたら少しでも葵がそういう場面からは遠ざけられるし、そうすれば――)」

「ツーナっ」

「!」



葵はツナの顔を覗き込むように見つめる。
そんな彼女に思わずツナは顔を赤らめた。



「あ、やっと気づいた。ぼーっとしてたからどうしたのかな〜って思って」

「い、いや!なんでもないんだ!」

「そう?なら良いんけど――」



雲雀の真意はわからなかったけど、風紀委員でなくなったのなら前みたいに急に呼び出されることはなくなると2人は喜んでいたのだが……



〜♪〜♪〜♪



「ん?(こんな朝早くに誰だ……?)」



早朝携帯の着信で目を覚ました葵は眠い目を擦りつつディプレイを見るとそこにはヒバリさんの表記。
慌てて電話に出るとまるで何も無かったかのように話し始めた。



「葵、授業前に応接室に来て」

「……あれ?オレ、風紀委員クビになったんじゃ――」

「そうだよ。でも、手伝いはしてもらうから」

「!?(き、聞いてないー!?)」

「言ってないからね」

「え、なんでオレの思ってること……」

「君の考えることはお見通しだよ。じゃあ、待ってるから」

「ちょ、まっ――」



葵の静止も虚しく電話は切られてしまう。
呼び出されてしまった手前行かない訳にもいかず葵は慌てて布団から飛び出すと制服に着替えて1階へと降りていく。

すると奈々はすでに起きていて朝の支度をしている最中だった。



「あら、葵君おはよう。今日も委員会?」

「おはようございます!いや、委員会というか…その手伝いに……」

「そういうこと!ならこれが良いかしら」



奈々はトーストを取り出すとそこにジャムを塗り葵に手渡す。
食べる時間が惜しかったため、奈々の気遣いに感激しつつお礼を言って受け取る。



「お弁当はまだもう少しかかるから、ツー君に渡しておくわね」

「何から何まですみません。ありがとうございます!」




パンをかじりつつ葵は急いで玄関に向かい靴を履く。



「いってらっしゃい。気をつけてね」

「いってきます!」



どうやらもう少しヒバリさんに振り回される日は続きそうだ。





prevnext

back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -