◎ ツナトレーニング(2/4)
いつもと違うペースで走ったのもあり、2人は学校に行く前から疲れており教室に着くや否や葵に至ってはすぐに机に突っ伏して眠ってしまった。
ツナもはあ〜とため息をつくと机に顔を乗せた。
「おはようございます、10代目!」
「よっ。どした?なんか疲れてるな」
「獄寺君、山本、おはよう。葵とジョギングしてたらお兄さんに会って……」
「へー。お前らも朝走ってんのな」
「山本もジョギングしてるの?」
「オレは朝練あるから休日だけだな」
「早起きしてトレーニングなんてすごいじゃないっスか!心做しか体つきもガッチリしてきたような――」
「いやいや、そんな急には変わらないよ…」
山本が寝ている葵に気づき、朝走ってたからかと納得しつつ指を指した。
そんな姿を見て、獄寺は少し考えた後名前ペンを取り出して起こさないように忍び足で近寄る。
2人もどうした?と獄寺の後をついて行くと手に持っているのは油性ペン。
獄寺は蓋をとると下敷きになっていない葵の右手の甲に何かを描き始めた。
「ご、獄寺君。何してるの――?」
「10代目は起きてるのに…ってことでちょっとしたイタズラっす」
「あははっ。何描いてんだー?」
「わかるやつにはわかる」
「「?」」
獄寺が書き終えたと同時に葵がもぞもぞと動き出し、顔を上げた。
ふわ〜と欠伸をすると近くにいた3人に気づくと、恥ずかしそうに笑うとそんな葵に3人はほんのり頬を赤らめた。
おはようと挨拶しようとした時、ふと手の甲に描かれたイラストが目に入る。
少し考えたあと、真っ先に獄寺を見つめながら言った。
「これ獄寺だろ!」
「(え、なんですぐわかったの!?エスパー!?)」
「呑気に寝てるテメーが悪い」
「しかも油性……やられた……!」
「しっかし葵、描かれてる時全然起きる様子なかったぞ。よっぽど疲れてんのな。そんなんで昼前の体育大丈夫か?」
昼前の体育と聞いて、ツナと葵は何かあったかなと首を傾げると山本は続けた。
「今日シャトルランだぜ」
「んな!?」
「え!」
「あれ?10代目、それに向けて特訓してたんじゃないんスか?」
「そんなのすっかり忘れてたよー…体力テスト持久走だけだと思ってたからやられた……」
「まあまあ。前に比べたら随分体力着いたんだし大丈夫だよ、ツナ」
「そうだね(確かに葵の言う通り、昔に比べたら今回は高得点期待できそうだ!)」
朝の了平の件で多少疲労は残っていたが、ツナにしては珍しく自分がどこまで成長したか試す良い機会だと少しだけ体育が楽しみだった。
だが、その感情はすぐに間違いだったと気づかされる。
「しゅうごーう!今日は特別講師が来てるぞ!!」
4時間目の体育、いつものように担当教師が説明を初めてスタートかと思ったら生徒を集める。
ツナは何やら嫌な予感がすると思っていたらその予想は的中。
「ボンゴ大学、運動科の名誉教授のボリーン先生だ!!」
「ちゃおっす。お前ら全員熱血指導してやるぞ」
「なんでお前が来てるんだよ!!!」
体操服を着ているものの明らかにその姿はリボーンで、ツナは条件反射で突っ込んでしまった。
すると体育教師が知り合いか?と声をかけるが、リボーンはその様子を気にせずに続ける。
「運動の基礎はなんと言っても体力だぞ。これがなければ何も出来ねーな」
「(リボーン一体どうしたんだろ?)」
「(うわー嫌な予感しかしない…)」
「今日はシャトルランをする訳だが――お前ら100回超え目指して頑張れよ」
中学生男子の平均は85回前後と言われている中、運動が得意な一部の生徒を除いてそんなの無謀だ!と次々に非難の声が上がる。
「ボリーンだかなんだか知らねーけどふざけんなよ!オレはやらねーからな!」
「こら!」
「ふむ……」
1人の生徒が立ち上がって体育館から出ようとすると、リボーンはその生徒目掛けてどこから取り出したチョークを投げつける。
チョークは当たった瞬間、チリになって砕けるとそれと同時に生徒が卒倒してしまい、一瞬にして体育館に沈黙が訪れる。
「戦う前から逃げるなんて言語道断だぞ」
「(こ、こえ〜…)」
「(大丈夫かな…?)」
「起きないな……仕方ない。先生はこいつを保健室に運ぶので――ボリーン先生、後は任せましたよ」
「ええ!?(こいつに任せっきりにするなんて……)」
「わかったぞ」
地獄の体育の始まり。
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