死体を用意して、そこに焔を灯せば僕だけのお人形が完成する。言葉にしてしまえばただそれだけのことだけれど、人形造りが成功と呼べるまでになるには何十年とかかった。多大な時間と命を棒に振って、やっと僕の生き人形は今に至ることになる。

所詮は造り物の命。ひとりだけを造ってもそれ一個体だけじゃ感情もなければ意思も何もない、壊れた存在しか出来上がらないことにまず気づいた。
だから取り敢えずふたり一組で造ってみるか、そう安易に考えて出来上がったのがくるむとひずむ。双子の死体に双子の魂を入れてやった。お互いの欠落している部分を巧いこと補い合っていたのだ。双子。ああ成る程双子、か。

くるむとひずむの双子が偶然ながらも完成したことから、僕はまた双子の死体と魂で実験を始めた。何十年と狂ったように。今まで。それでも、くるむとひずむを含めて出来上がったのはたったの三組だけだ。戦闘用に造ろうとしたわけでもないのに三組全てが戦闘(もしくは殺戮)に狂ったのは失敗か成功か。今となっちゃわからないけれど。

依存し合うくるむとひずむ。
支え合う捺姫と捺妃。
アネモネとポプラは時には互いですら殺し合おうとした。

魂の質からしたら優秀だったのは捺姫と捺妃で、このふたりの魂は肉体が死んでも新たな死体に入れ込めば何度も繰り返すことが可能だった。大抵狂うか壊れるだろうに。
滅多にない大切な実験道具だ。その魂を死なすわけにはいかないだろう。

まぁ途中イレギュラーが起きて妹である捺妃は魂ごと壊れてしまった、けど。



片割れを失ったはずの捺姫はそれでも壊れはしなかった。優秀だ。あまりにも捺姫たちは実験道具として優秀すぎたのだ。



*



「マスター、」

もういっそのこと死体を用意するんじゃなく自ら魂の入れ物を造ってしまえば一個体での人形造りに成功するかもしれないと、また時間を大量に棒に振って、やっとひとり、完成されたお人形が出来上がった。
一先ずイリアと名付ける。完成した瞬間は喜びに震えた。けれど飽き性なのは僕の欠点で、そこいらに放置してきてしまった捺姫を除く双子たちと同じくイリアにもすぐ飽きてしまった。(捺姫は未だにいい観察対象だ)

「イリア。きみは僕の最高傑作なんだ」

そう囁き撫でてやればイリアは頬を染めて僕に凭れる。ああなんて従順で可愛い僕の最高の人形。捺姫たちも見習うべきだ。

「けれどね、捺姫がいる限りきみは僕のいちばんではないんだよ」

でもって、イリアは憎しみを学ぶべき。
そうだね、壊れるまでは遊んであげよう。自ら一生懸命造ったんだ、棄ててしまってもいいけどどうせならどんな風に壊れちゃうのか見てみたいしね。





▼とあるシャンデラとイリアと造られた双子たちの話