※支配する狂気の続き


「まったく君は、ファイトとそれ以外に興味はないんですか」


帰って来た主は開口一番、呆れたようにそう尋ねた。ソファで寛いでいた自分としては、暫し何のことだろうと考えて、昨晩の行為を思い出す。
まさか二十四時間全ての行動を把握しているのか?
嫌な予感がしてそちらを見遣るとわざとらしい溜め息を吐いているのが見えた。


「まあいいんですけどね、僕の言うことをちゃんと聞いてくれるなら、それはそれで」
「…命令通りにしているだろう。今日もリバースファイターを生み出した」
「ええ、ご苦労様です」


気持ちが篭っていない感謝を述べて歩み寄ってきた立凪タクトは、何も言わずさも当たり前のように、ソファに腰を下ろす自分の上に跨って抱きついてきた。首筋にかかる吐息が擽ったくて思わず身動ぎをすると、クスッと小さく微笑んだのが分かる。仕方ないので華奢な体を抱きしめ返すと、いい子だと褒めるように頭を撫でられた。


「どうしました?面白くなさそうな顔をして」
「……別に、理由なんてない」
「嘘」


耳元で囁かれた言葉に、甘ったるい声に、体が支配される。


「ほら、」
「………」
「ちゃんと言って」
「…お前がいなかったから、つまらなかっただけだ」


息をするように言葉が口からするりと出て行く。どんなに隠そうとしてもタクトの前では全てが無意味だ。身体の隅々まで見透かされていて、隠し事など出来やしない。だけどタクトは嫌な奴で、分かっていながらも喋らせようとする。逆らえないのに。逆らえるはずがないのに。


「寂しがり屋なんですよね、トシキは」


黙れとも言えず俺はただ抱き締める力を強くした。

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