「恋人が出来たんですね」 遠くを歩く男女の姿を視界に収めて雀ヶ森レンは手元のティーカップを揺らした。甘ったるいミルクティーが零れないようにゆっくりくるくると面白そうに。俺は行動の一つ一つをじっくりと観察した。それはただの、見たくないから気を紛らわせるという行為であり、彼の不可解な行動に興味を持っているわけではない。心の中でいつも逃げてばかりだと自嘲する。自分はこういうものだと決め付けているから、自分はこういうものだと諦めているから、成長することがない。つまり死んでいる。生きながらにして死を迎えている。 「ねえ櫂、思うのだけれど」 思考を読んだかのようにレンが話し掛けてきた時は、いつも危険だと分かっているのに耳を塞ぐことが出来なかった。 「死者は人間として扱わなければならないのかな」 - - - - - 死んでいるから三和に不釣合いだと思い込む櫂と、その思考を利用して櫂を自分のものにしたいと考えているレン |