櫂トシキが転校してきた日から僕の運命は大きく変わった。彼はいつも無口で無愛想で、同い年のはずなのに、僕達とは何処か異なる存在だった。だからだろうか、不思議と気になって、目で追っていて。ヴァンガードをしていると知った時、彼とならいいチームを組めると思った。それからの日々は輝いていた。櫂と戦うことが、テツと笑い合うことが、楽しくて仕方なかった。櫂と戦っていたい。櫂と対等の存在でありたい。櫂の思いに答えたい。より高みへと目指すために、力が、力が欲しい。そう強く願ったんだ。
最初はただの気のせいだと思った。カードが僕を導いてくれるなんて、あり得るわけがない。けれど戦うにつれて、カードから声が聞こえるくる。勝利はこちらだ。私が勝たせようと。カードが全てを教えてくれる。この力さえあれば僕はもっともっと強くなれる。櫂に相応しい存在になれる。だから、ねえ、テツも櫂もどうしてそんな顔をするの。僕はようやく手に入れたんだ。櫂すらも凌駕する力を。僕は櫂よりも強くなる。櫂を退屈させないために。櫂に認めさせるために。


「お前のそれは本当の強さなんかじゃない」


だからどうしてなの、櫂。いい加減に僕を認めてよ。君の大切なアイチくんも同じ力に目覚めたよ。強くなったよ。アイチくんまで否定するわけがないよね。今度こそ僕を認めてくれるよね。櫂、櫂、どうして。どうして僕の前からいなくなったの。誰にも負けない力を手に入れたのに。対等な存在となったはずなのに。分かるだろう、君は敗北した。圧倒的な力の前に膝をつくしかなかった。いい加減に気付いて、僕を認めて。認めてくれないなら、僕も誰も認めない。櫂、君の強ささえも。


『戻ろう、レン』


温かくて優しい声が暗闇に落ちていく僕の腕を引っ張った。そこにいたのは対戦相手の先導アイチではなく、いなくなったはずの君だった。


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レン櫂戦を視聴前

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