櫂くんの腕を無理矢理引っ張って駆け上がる。早く早く、間に合わない。息も切れ切れになりながら、螺旋階段を走っていく。背後で啜り泣く声が聞こえたけど、今はそれどころではない。早くしないと。楽園への鍵が失われてしまう。頂上に近付くにつれて、抵抗する力が強くなる。ああ、怖がらないで、大丈夫だから。僕がずっと、ずっと一緒にいるから。扉の隙間から溢れる光が見えた。新たな世界へと導く光。


「行こう、櫂くん」
「……やめろ、俺は、行きたくない」


言葉でいくら否定しても、櫂くんはやっぱり櫂くんだ。差し出すその手を恐る恐る取ってくれた。しっかりと手を握って体を引き寄せる。今の世界が不安を与えるなら、記憶ごと消し去ってあげる。だから、ようやく、僕達は幸せを手に入れるんだ。

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