幼馴染である櫂トシキを街中で見掛けたのは偶然だ。以前、高校生にもなって探偵気取りかと怒られたが、やはり気付かれぬよう尾行するのは面白い。何処に住んでいるのか興味はあるし、何より隠し事をされると気になってしまうのだ。秘密を知ろうと企んでいるのではない。ただ、親友だと思っているからこそ、そして自分から話さない性格だと知っているからこそ。いずれは話すと口にしても、何年後のことか。無闇矢鱈と話すのは良くないけれど、話さなければ捌け口がないだろう。何もかもを一人で溜め込んで、苦しいと息が出来なくなってしまう。重さに耐え切れず壊れてしまう。そうならないためにも誰かが支えになるべきだ。自分でなくてもいい。誰でもいい。もちろん頼るなら信頼の置ける人物以外は認めるつもりはない。だからこそまずは家庭訪問だ。家族と一緒に暮らしているのなら、ある程度は楽だろう。それだけでも知りたい。気付かれることを覚悟の上で、距離を置いて後をついていく。しかし、面白い光景がそこにはあった。場所は街の中心部からちょっと離れたマンション。その入口付近で、店長代理にミルクをあげる親友の姿がそこにはあったのだ。


「…へぇ」


随分と穏やかな笑顔じゃないの、と携帯電話を取り出して写真を撮る。ピロリン、と撮影した機械音が鳴った。それと同時に櫂が驚いたようにビクッと体を震わせ、きょろきょろと辺りを見回している。勘の良い男だからすぐに気付かれてしまうだろう。足音を立てずにすぐさま路地を曲がり、さっさとマンションを離れる。


「まったく、いつもこんな顔してろっての」


保存した画像を眺めながら店長代理に嫉妬を覚える。笑顔など久方振りに見た。誰にも見せようとしないのなら、望むところだ。是が非でも目の前で笑わせてやる。

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