▼ 夢中
「聡太郎」
ん、と返事をして呼ばれた方向を見てみると、そこには信じられない光景があった。
「……ひかる?」
「うん?」
ひかるの頭に、見慣れないものが付いている。獣のような、どこかで見たような、耳が。
それに、お尻の辺りには尻尾が見える。先端だけがふさふさしていて、気持ちよさそうだ。
「……ライオン?」
首を傾げてそう呟いてみると、ひかるも同じように首を傾けて「そうだよ」と笑った。
「どうしたの。今更」
「今更……?」
今更、ということは、ひかるにとってはこの状態が当たり前だということか?
「……」
「くすぐったいよ」
手を伸ばして耳に触れてみると、ぴくぴくと反応があった。本物のようだ。
次に尻尾。根元から先端まで、指でなぞるように撫でてみる。
「聡太郎、どうしちゃったの?」
どうしちゃったの、はこっちの台詞だ。これは一体なんだ。俺は夢でも見ているのだろうか。
「……」
不思議そうにこちらを見つめてくるひかる。耳がぴるぴると動いている。
……ちょっと可愛い。かもしれない。
「もっと触ってもいい?嫌じゃない?」
「ううん。嫌じゃないよ。もっと撫でてほしい」
すり、と手のひらに頬を擦り寄せてくるひかる。わしゃわしゃと犬にするように頭を撫でると、尻尾がちぎれんばかりの勢いで揺れているのが見えた。
「……それ、すごいな。尻尾」
「だって、勝手に動くんだもん」
「そんなに嬉しいのか」
おかしくなって笑ってしまった。これじゃ犬だ。
彼のことを「犬みたいだ」と思うことは多々あったが、まさかライオンになってしまうとは。
「んっ」
ぺろ、と突然唇を舐められる。
「ん、ちょ、ひか……っ、何」
「かわいい、聡太郎」
「うわっ」
軽々と抱き上げられて、膝の上で抱えられたままさらに口を舐められた。舐められたというか、キスされた。
「ん……っ、んぐ、んん」
口の中に舌が入り込んできて、ぐるぐると掻き回す。
な、なんかこいつの舌、いつもよりざらざらして……。
「ちょ、ひかる……っ苦しいから、待て」
「ごめん」
慌てて口を離してくれたのはいいものの、ひかるの息は荒い。
……なんだ?随分辛そうだ。
「ひかる」
「うん?」
「……したいのか?」
「……」
こく、と素直に頷く。
「し、したい……」
ひかるの吐く息がどんどん熱くなっていく。瞳もぎらぎらとしていて、何かを必死で堪えているような表情だ。
「……」
──もしや、これは。
「ひかる」
「ん……っ」
ちゅ、と首筋に口付けてやると、ひかるは大袈裟なほど身体を跳ねさせた。
そうだ。これが所謂「発情期」というやつだ。
「そ、聡太郎……おれ変になったのかな……」
……くそう。可愛い。
ひかるが可愛いのは今に始まったことではないけれど、今日は特に可愛い。
甘やかしてやりたい、とか。
「変じゃない。我慢しなくていい」
「ほ、ほんと……?」
「俺がする」
「へ……っ!?」
膝から下りてひかるの下半身に顔を埋める。そこはもう、ズボンの上からでもガチガチに昂っているのがわかった。
「……」
ファスナーを下ろし、下着を下げると、びょんと勢いよく飛び出してくる。
……なんか、これもいつもよりでかくないか?まぁいいけど。
何もしていないにも関わらず腹につくほどの勢いで勃ちあがっている。おまけに先端はぐしょぐしょだ。
「ん……」
「うぁ……ッ」
軽く舌を出して先っぽを舐めると、ひかるが小さく呻いた。たったこれだけの刺激でもたまらないらしい。
「あ゛……っ、そ、たろ……っ」
「んぐ……、っう」
めいいっぱい口を開けて口内にそれを招き入れる。でかすぎて入り切らないが、舌先で舐めるだけよりは気持ちいいだろう。
「ん、んぅっ、ん、んん」
吸いながら緩く頭を上下させて愛撫する。ついでにと指で玉を触ると、ずっしりとした重みがあった。……溜めすぎだろ。なんだこれ。凶器か?
「あ……ぐっ、聡太郎、……っむり、無理ぃ……っ」
ひかるはぶんぶんと頭を横に振って悶えている。テクニックも何も無い、ただ口に入れるだけの愛撫が余程気持ちがいいらしい。発情期というのはそんなに敏感になってしまうものなのか。
「で、る……っ、出る……っ、出……っ!!!」
ちゅう、と精液を絞り出すように先端に吸い付くと、物凄い勢いで口の中に射精された。
「……ッ」
だ、出しすぎ……っ。苦しい……っ。
流れ込んでくる精液は量が多すぎて収まりきらず、口の端からぼたぼた零れ落ちる。
「んんん……っ」
おまけに濃い。粘りつくようなそれを必死に飲み込んだ。決して美味しいとは言えない。むしろまずい。
「けほ……っ、ごほっ、お前なぁ……っ」
「だ、大丈夫?水、水飲む?」
どこからかペットボトルの水が出てきたので、受け取って飲み干す。危なかった。吐くところだった。
「ごめんね。平気?」
「バカ。溜めすぎだ」
「いやぁ……腰抜けるかと思ったぁ……」
ふにゃりと満足そうに笑うひかるに、自分が誘った手前文句も言えず、俺は一言「それは良かった」とだけ返した。
「次は俺の番ね」
「え」
次の瞬間、ばりっと勢いよく着ていたシャツを破かれた。辺りにボタンが弾け飛ぶ。
「な、なにしてくれてんだ……っ!!」
「だって、服着てたら舐めてあげられないでしょ。乳首」
「言ってくれれば自分で脱ぐ!!」
「やだ。待てない」
「ひ……ッ!!」
剥き出しになった乳首をべろりと舐められ、全身から力が抜ける。
「いっぱい気持ちよくしてあげるからね」
にこ、と微笑んだひかるの顔を、今度ばかりは到底可愛いなどとは思えなかった。
──そして。
「……ぁっ、うう……ッ、もぉ、やらぁぁ……っ」
「ん、もうちょっとこのまま」
尖った歯に乳頭を挟まれ、目の前にちかちかと光が飛ぶ。
舐められ、吸われ、噛まれ、散々弄り回された乳首は赤く腫れて熱を持ち、じんじんと痛みにも似た感覚を訴えかけてくる。
「ぁああ……ッそ、な噛んだら、またいく、いくぅ……ッ!!」
「ん、イっていいよ」
「んやぁ……ッいく、…………〜〜〜〜!!」
舌で押し潰すように舐られ、びしゃびしゃと精液を吐き出した。ぐちょぐちょになった下着が張り付いて気持ち悪い。何回射精したかはもうわからない。
「上手にイけたね。かわいい」
「はぁ……っ、はぁ……っ、も、や……ぁっ」
息も絶え絶えなところを今度は押し倒された。濡れた下着をぐいと脱がされ、脚を開かされる。
「何回イったの?お尻の穴までびしょびしょだよ」
「知らない……っ」
「舐めるよ」
「あ……っちょ、やめ……」
先程まで胸を舐めていた舌が、今度はお尻の穴を舐め始めた。
「や、っ、汚い、から……っ、ひかる、だめ……!!」
「汚くない。聡太郎に汚いところなんてない」
「ひ、うう……っ、中……入って……っ」
濡れたものがにゅるりと中に入ってくる。舌だ。
「ぁ……っ?あっ、ぁあ……っ、あ……ッ」
ぬぷ、ぬぷ、と浅いところで出し入れされるのが気持ちいい。開かされた脚に力が入る。
「ひもひいい?」
「ん……っ、んっ、いい……っ、いいよう……ッ」
「ん」
「あぁん……っ、吸、うの……だめぇ……っ!!」
じゅう、と穴の縁を吸われ、爪先立ちになって悶えた。
「……っ、ん……ひ、ひかるぅ……っ」
浅いところじゃ足りない。もっと奥。深いところをぐちゃぐちゃにして欲しい。涙で滲む視界の中、ひかるの顔を見た。
「聡太郎……」
「あ……っ」
ぐり、と太ももの裏に硬いものを押し付けられる。
「これ、欲しい?」
「……っ欲しい……」
「やめてあげられないけどいいの?俺、今日は何回もするよ」
今日はっていうか、いつもだろ。とは言わない。
「ん……っ」
「嬉しい。聡太郎」
「あ……」
素直に頷くと、くるりと身体を反転させられ、四つん這いの状態になる。
「ひかる……っ」
いつも顔が見える体位ですることが多いので、不安になって後ろを向くと、やっぱりぎらぎらしたままのひかるの瞳と視線が合った。
「入れるよ」
「あ……っ、はぁあ…………ッ!!」
ぐちゅう、とすごい音を立てながらひかるのものが中に入ってくる。
「キッツ……」
「は……っ、ぁ、あっ、お、きい……ッ」
硬い切っ先がごりごりと内側を押しつぶしていく。その度にびくびく身体が跳ねた。
「聡太郎、もうちょっと、力抜いて……奥まで入れたい」
「や、ぁ……っどう、やるの……っ?」
こんなに気持ちいいのに、力の抜き方なんてわかるわけがない。
「ん……こう、かな」
「あうぅ……っ!!」
背骨をなぞるように肌を舐められ、ぞわぞわしたものが全身を駆け抜ける。
「あ゛…………っ!!」
「はぁ……っ、入った……」
その一瞬の隙にさらに奥までひかるが入り込んできた。
「聡太郎……、痛くない……?」
「ない、けど……苦し……」
めいいっぱい押し拡げられている感覚に慣れようと、できるだけ深く呼吸を繰り返してみる。俺の余裕の無さが伝わったのか、ひかるもじっと動かずにしばらくそのままでいてくれた。
が、しかし。
パンパンに膨らんだモノが中に入っているせいか、気持ちのいい場所を強く圧迫されている状態がずっと続いている。
「……ぁあ……っ、く、っ……」
びくっ、びくっ、と腰が勝手に跳ねた。小さな絶頂が何度も押し寄せてくる。
「……っ、聡太郎、まだ、動いちゃダメ……?」
「ごめ……っ、まだ……」
今動かれたら、おかしくなる。
込み上げてくる快感を堪えながら首を横に振った。先ほどから中で甘イキを繰り返しているせいか、うねる内壁が埋められた性器を刺激しているのがわかる。ひかるも相当辛いはずだ。でも、無理なものは無理。
「ひ……っ、あ……!?」
ふいに背中に何かが落ちる感触がした。驚いてまた振り返ると、ひかるが瞳を閉じて堪えるような表情をしているのが見える。その口からはつうっと唾液が伝っていて、あぁ今背中に落ちたのはこれかと合点がいった。
「……っは、……ぁ」
本人は気づいてない。余程必死に我慢してくれているのだろう。
──喰われているみたいだ。
「そーちゃん、お願いだからそんなに締めないで……っ」
「う……ッ、だって、お前が……」
そんな顔見せられて、疼かないわけがない。
ひかるがそんな顔をして求める相手が、俺で良かった。
「もう限界」
「うぁん……ッ!!」
ずるるっと一気に引き抜かれ、全身に鳥肌が立つ。
「うそ、やめて、ひかる、やめ……っ」
「やめ……っない」
「んあぁぁぁ……ッ!!」
引き抜かれたものがまたすぐに戻ってくる。幾度かの絶頂を経た内側は敏感になっており、どこを擦られても信じられないほど気持ちが良い。
「はぁ……っ、はぁ、聡太郎、ね、気持ちいい……っ?」
「ぁは……っ、あっ、んっ、だめっ、だめぇ……ッ、あぁ……ッ、よ、すぎる……ぅ……っ」
びくんびくんと狂ったように震えながら、打ち付けられる腰を受け止める。快感が涙となって溢れ出し、視界が歪んだ。
「んぁあッ、あっ、ひ……ッ、ぁ……っ、あぁ……っ、ひかる、ひかる、気持ちいいよぉ…………っ」
ぱちゅぱちゅと小刻みに奥を叩かれ、喘いでいるのか泣いているのか自分でもわからなくなる。
「ん……ッ、こら、逃げないで」
「うぁああ……っ、奥、だめ……ッ!!奥やだぁぁ……っ!!おかしくなるう……っ!!」
知らず知らずのうちに腰を捩らせ逃げようとしていたのか、ひかるがそれを引き戻した。その瞬間、押し出されるようにぷしゃっとペニスから精液が噴き出す。
「イっちゃったの?まだ出せたね……っ次は、精液じゃないのも出せるかな」
「いやら……ッ、ぁ、これ、いじょうは……むりぃ……ッ」
「だめ」
背中から覆い被さられ、ひかるが耳元に口を寄せてきた。
「聡太郎」
「あぅ……っ、は、ぁあ……っ、ひかる、ひかる……ッ」
前後のストロークから、ゆっくりと腰を回すような動きに変わる。
「ぁ……っ、あ……ッ、それ、きもちい……っ」
「いいの?これ?」
「うん、うん……っ、それ好き……」
「好き?」
耳を舐られながら囁かれ、下腹がじんと痺れた。
「もっと好きって言って?」
「すきぃ……、ひかる、すき、すき……っ」
「俺も好き」
「ん……っ、ひかる……」
「ね、聡太郎、ここ、わかる?」
「んはぁあ……ッ!!」
突然先端でごちゅごちゅと最奥をつつかれ、口から大きな嬌声が零れる。
「ここ、この奥、俺のちんこの先、ちゅーって美味しそうに吸い付いてくるの……っ、すっっげぇきもちい……っ」
「いやぁぁっ、あっ、奥だめだめだめ……ッ!!そこ、は……っ、ほんとに、むりぃ……ッ!!」
「嘘。だったらっ、どうして、こんなに……っ、ちゅうちゅう、吸って、……っくんの?」
「はぁッ!あっ!あうっ!あっ!!あ……ッ!!」
再び激しいピストン。とうとう自分の身体を支えていられなくなり、ぐにゃりと腰が沈んだ。
「聡太郎、ちゃんと腰上げて」
「むり……ッ、も、ぉ、力、入んないからぁ……ッ、あぁ……っ」
「じゃあ、こう……っするよ」
「はぁ……ッ、はぁ……っ、あうっ、う、ッ、あぁぁ……ッ!!」
力の抜けた身体を上から押さえつけられ、ぐじゅぐじゅと突き刺すように中を掻き回された。下でじたばた藻掻く俺に、ひかるは容赦なく腰を叩きつけてくる。
「ふ……ッう、う゛……っ、んっ、強、すぎ……っ、ぁあっ、こわ、壊れる……ッ!!」
「ごめ、でも、腰止まんない……っ」
気持ちいい、気持ちいい、とひかるがうわ言のように呟いた。また涎がぽたぽた落ちてくる。
「いく……ッ、いくうっ、あっ、うう……っ、イく、…………ッあぁ……!!」
「っはぁ……締まる……ッ!!」
「やぁ……ッ、ダメぇ……ッ!!!いまだめ……っ、だめ……っ!!死んじゃう……っ!!」
目の前が真っ白になるような激しい絶頂。ひかるがきつく蠢く中を掻き分けて腰を押し進めてくるので、快感が二倍、三倍とどんどんひどくなる。
「イく……っ」
低く唸るように呟いたかと思うと、ぴたりと腰を付けたまま動きが止まった。
「あ……ッ……!?」
──中に、出されている。
びゅるびゅると勢いよく発せられる精液が、最奥に当たって跳ね返り、腹の中を満たしていく。
「……っん……」
時折ひかるは息を漏らし、びくっびくっと腰を痙攣させた。俺の腰を掴んでいる指先に力が籠る。
「……」
「はぁ……っ、そ、たろ……っ気持ちいい……」
ごぷ、と入り切らなくなった精液が零れ落ちてくるのがわかった。
「ひ、ひかる、一旦抜い……」
「……ん」
ちゅぽ、と濡れた音を立てて引き抜かれたペニスが、またすぐに孔にくっつけられる。
「え」
「もう一回、このままするから」
「ちょ……っ」
「仰向けになって。顔見たい」
くたくたになった身体はもうなすがままだ。仰向けにされ、真上には興奮し切ったひかるの顔が見えた。
「ごめんね、そーちゃん」
──ごめんね、じゃ、ない!
「ぁ……ッ、あ……っ、あうぅ……っ」
「聡、太郎……っ、気持ちい?ね、これは?」
はぁ、はぁ、とお互いの激しい吐息と、ぬちゅぬちゅという水音が部屋に反響する。
「……っ、もぉ、……ッ、っやぁ……〜〜〜〜〜ッ」
ぬる、ぬる、と大きな動きで緩やかに出たり入ったりを繰り返すひかるのそれ。
「っそうちゃんのなか、とろとろで、やばい……ッ」
もう何度イったかはわからない。突かれる度に俺のペニスからは透明な液が滴り落ち、繋がっている部分をぐっしょりと濡らした。
「ん、んう……っ、は、んん……」
「可愛い……好き、大好き」
唇を食むような口付け。腕を伸ばして首に絡ませそれを受け止める。頭がくらくらした。
「……っ、また、出る……っ」
繰り返し繰り返し注ぎ込まれたおかげで、腹の中はもうひかるの精液でいっぱいだ。その上にまた射精されるものだから、収まりきれずにごぷごぷ溢れだしてくる。
「……もう一回……」
「や……ッ!!もう無理ぃ……っ!!」
「お願い、聡太郎……」
「う……」
辛そうな表情で顔を覗きこまれ、俺は「あと一回だけだからな」と弱々しい声で呟いた。この台詞は既に5回は言っている。惚れた弱味とはまさにこういうことを指すのだろう。
「ん……ッ、ん……っ、ぁあっ、ひ、ひかる……ッゆっくり、やだ……っ」
ぬぷ〜っと焦らすように引き抜かれ、抜けた性器が糸を引いているのが見える。恥ずかしくなって目を逸らすと、ひかるが小さく笑う声が聞こえた。
「んー……じゃあ激しいのがいい?」
「や……っ、そういうことじゃ……ぁう……ッ!!」
ぱんっ、とまた一気に奥まで貫かれる。そして間を置かずに激しいピストン。
「はぁあっ、んっ、ん……ッ、奥、やぁ……っ!!」
「本当に?いや?でも聡太郎の中、俺のに吸い付いて離してくれないよ」
「ちがっ、うぅ……っ、もう、もう……ッんぁ、あ……ッ!!」
違うなんてことはない。
すっかり蕩けた中はひかるの大きなモノを悦んで咥え込み、奥へ奥へと誘うように蠢いている。
「あぁん……ッ、……っ、ひかる、……っ!!」
「んー……?」
「あはぁっ、あっ、や……ッ、ん、ん〜〜〜……っ!!」
「なぁに?どうしたの?」
「い、いく、また、来る……ッ、おっきいのくる……っ!!」
ぎゅっと爪先に力を入れて仰け反る俺を、ひかるは甘くて溶けてしまいそうな瞳で見下ろした。
「……おっきいの、気持ちいいから。いっぱい感じて」
「や……ッ、やぁ……っ、ひかるも、一緒がいい……っ」
「じゃあ、俺のことぎゅーってして。そんでたくさんちゅーしよっか」
「ん……っ、んっ、する、する……」
「はーかわいい……」
ひかるが身を屈めて顔を近づけてくれたので、俺は無我夢中でしがみついて口付けた。
「んう、んっ、んぁ、ひか、る……っんん」
ぺとぺとと柔らかな舌をくっつけ合い、絡ませる。飲み込めなくなった唾液が口の端から垂れるのも気にせず、ただただキスの快感に浸る。
「ん゛ん゛…………っ!?ん!んっ!んん!!」
突然乳首を抓られ、キスをしたままの口から悲鳴が零れた。
「んん〜〜〜〜……ッ!!ん!!ん!!んぅ!!」
ぐにぐにと指の腹で押しつぶすように弄られ、腰が勝手に浮き上がる。
「……ッ!!……っ、っ、……〜〜〜〜ッ!!」
多分、イった。多分というのは絶頂に射精が伴っていないからだ。射精していなくともペニスはびちゃびちゃだが。
「腰痙攣してる。もしかしてまたイった?そんなにおっぱいいいの?」
俺の唇を舐め、ひかるが囁く。
「俺も、また出していい……?」
もう声も出せなくなってしまった俺は、こくこくと何度も頷いてひかるを抱きしめた。
「……っんぁあ!!」
今まで俺の気持ちいい場所を抉っていたものの動きが変わる。
「は……っ、は……ッ」
「……ッ、……っぁ、……っ、ッ、……!!」
小刻みなストロークで奥を叩かれ、ぷちゅぷちゅと隙間から精液と空気の漏れる音がした。これが、ひかるの気持ちいい動きなんだろう。
「はぁ……っ、イく……ッ!!」
ひかるの腰が一際大きく跳ねたかと思うと、じわじわと中に生暖かいものが広がっていく感覚がする。
「……っ」
びくっ、びくっ、と抱きしめた身体が何度も震えるのが可愛くて、たまらずキスをした。
「ん……聡太郎……?」
「ひかる……」
──だいすき。
そう呟いたのが最後。
とろんとまぶたが落ちてきて、俺はひかるの腕の中で眠りに落ちていった。
*
「……」
最悪だ。こんなに最悪なことはそうそうない。
時刻は朝5時。この時間ならまだ家族は起きていないはず。行動を起こすなら今のうちだ。
──夢精なんて、一体何年ぶりだろう。
替えの下着を持ってこそこそと洗面所で処理をした後、自室に戻って再びベッドに潜り込む。
疲れた。とにかく疲れた。現実に起こった出来事ではないけれど、疲労感は現実だ。
夢の中での情事を思い出し、じわじわと顔が熱くなってくる。
大体ライオンってなんだ。何故ライオンなのか。そう思ってスマホを片手に調べてみる。
「……」
どうやらライオンは、発情期中はとにかくひたすら交尾に励むらしい。何回、というレベルではなく 、一日何十回も。
あぁそれで、と終わりのなかった行為を思い返す。どんなに無理だと抵抗しても、ひかるは「もっともっと」と止めてくれなかった。
──なんて夢を見てるんだ俺は……。
その朝、いつものように一緒に登校するために会ったひかるの顔を、俺は見ることができなかった。
「そーちゃん、なんで今日はこっち見てくんないの?」
「いや……ちょっと……罪悪感で……」
「罪悪感?」
勝手にあんな夢を見た挙句、夢精なんて。口が裂けても言えるはずがない。
「お前は何も悪くない。これは俺の問題なんだ」
「!?」
目を逸らしながらそう言った俺の肩を、ひかるが強い力で掴んでくる。
「そ、それって、俺のこと好きじゃなくなったってこと……?」
「え?」
「別れないから!!聡太郎が俺のこと好きじゃなくても、嫌いでも、俺は絶対別れないよ!!」
「いや……そうじゃなくて」
「じゃあどういうこと!?」
「悪かった」
全面的に俺が悪い。
「ちゃんと好きだから。嫌いにもならない。俺も絶対別れたくない」
「……ほんと?」
「うん」
「もう一回言ってくれる?」
「好きだ」
「目を見て!!」
「す……好き……」
「なんでちょっと言い淀むのぉ!!」
「これにはわけが……とにかく、ひかるが心配することは何一つないから」
「本当に?エッチする?」
「今日はもうしない」
あ、間違えた。
どさ、と大きな音がする。ひかるが持っていた鞄を地面に落とした音だ。
「きょ、今日は……?俺と聡太郎、まだ今日エッチしてないけど……?」
「違う!ごめん!間違えた!」
「間違えたって何!?俺としてないのに聡太郎は今日もうエッチ済ってどういうこと!?」
「わかった!話す!話すから!」
かくかくしかじか。夢の内容を話して聞かせると、ひかるはほっと息をついた。
「なんだぁ。そういうことか」
「……引くだろ……絶対引いただろ……」
「引かないよ。俺だって聡太郎とする夢見て夢精したことなんて何回もあるし」
それはそんなに誇らしげにする話じゃないと思う。
「気持ちよかった?夢の中の俺とのセックス」
「……ん」
でもしつこくて辛かった、回数が多くて死にそうだった、という話と共に、ライオンの交尾の話をすると、ひかるは小さく笑って言った。
「そこでそういうのきっちり調べちゃうのが聡太郎だよね」
「だって、本当に辛かったから。やめてって言っても全然やめてくれないし」
「それはいつもじゃない?」
……確かに。でも。
「そういう次元の話じゃなかった。何回したか覚えてないんだぞ」
「……」
「ひかる?」
「なんか……妬けてきた」
「は?」
「夢の中の俺ずるくない!?そんなに何回も聡太郎とエッチしてさ!!俺だってしたいのに!!」
ひかるは納得がいかないという風に怒り出した。
「というわけで、今日は俺ともエッチしよう」
「え」
「夢なんて忘れさせてあげるから、俺だけ見てね」
「えぇ……」
拒否権はない。ひかるの言い分も理解できる。
俺だって、例え相手が俺であろうと、夢の中で何度もセックスをした、などとひかるに聞いたら複雑だ。俺がいるのに、と思ってしまうだろう。
俺とひかるは揃いも揃ってヤキモチ妬きなのだ。
「……わかった」
「いいの!?やった」
──大丈夫か。俺の体力。
「はぁ、ッ、もぉ出ないぃ……っ、やだぁぁ」
「出せなくても中でイけるでしょ?それとも乳首いじる?ほら」
「ひ……ッん、ぁあ……!!だめ、ちくび……っ、あぁっん、んっ……もっとぉ……」
「だめ?もっと?どっち?」
「もっとぉ……ッ」
「あーもうかわいー……」
触れる指先は優しくて、唇は痺れるように甘い。
「大好きだよ、聡太郎」
夢の中よりも、やっぱり現実のひかるがいい。
end.
*
東風さんリクエストで、「半獣(ライオン)のひかるが獣姦っぽい感じ どろっどろの甘々で胸焼けする位甘い感じで!!」でした。
あんまり獣姦っぽくならなくてすみません……これが私の限界でした……難しいですね!代わりと言ってはなんですが、どろっどろの甘々な感じをいっぱい詰め込んでおきました。いつもに比べると、かなりエロを長くできた気がします。
そして大変お待たせしてしまってごめんなさい……!
素敵なリクエストをありがとうございました!楽しんでいただけますように!
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