神様これは試練ですか | ナノ


▼ 雪の日

とても寒い日だった。珍しく雪が積もり、見慣れない景色に感動していたのもつかの間。放課後になるともう雪はほとんど溶けかけてしまっていた。

「あー…雪合戦したかったなー…」
「一人で?」
「なんでよ!そーちゃんとだよ!」
「嫌だ。寒い」
「もう!つれないんだから!」

雪が綺麗なのは最初だけだな、と溶けてぐしょぐしょになった道路を見て思う。何度も車が行き交ったせいで、真っ白だったはずのそれは灰色に濁っていた。

「っと…」

そんなことを考えながら歩いていると、ふと足に何かが突っかかる。

「おい、ひか…」

聡太郎が気がついて手を伸ばしてくれるが、もう遅い。

「うわ…!!」

べしゃ、と嫌な感覚がした。

「…」
「…」

そう、俺はその場で盛大に転んだのである。溶けかけた雪のおかげで制服が一気に濡れてしまった。

「何やってんだ…何もないとこで躓くなよ」
「うぇぇ…ぐっちょぐちょ」
「大丈夫か?」

恥ずかしさを取り繕うため、へらへらと締りのない笑みを浮かべる。聡太郎は呆れたような顔をしながらも駆け寄って来てくれた。ちょっと嬉しい。

「帰ったら制服洗えよ」
「うん。ありがと」
「ちゃんと足元を見てないからそうな…っ」

ばしゃ、と嫌な音がした。

「…」
「…」

横を通った車が溶けた水を跳ね上げたらしい。見上げた可愛い顔に水滴が滴っている。眼鏡もびしょ濡れだ。

「そ、聡太郎…大丈夫?」
「…」

――今日は厄日かもしれない。



立ち昇る湯気。温かくて湿った空気。そして目の前に浮かぶ滑らかで白い肌。

前言撤回である。今日は素晴らしい日だ。俺はなんて幸せなんだろう。

「…何で一緒に風呂に入る必要があるんだ」
「いいじゃん。制服乾かしてる間暇だし」
「いや、わざわざお前の家で洗濯しなくても」
「俺の家のが近いんだからいーの!そのままびしょ濡れの制服着て帰って、風邪でもひいたらどうすんの!」

聡太郎は拗ねたような表情で、俺の膝の間にすっぽりと身体を収めている。そんな顔もかわいい。なんだかんだで抵抗しないところもかわいい。全部全部かわいい。

「寒くない?お湯足そうか?」
「平気」
「ほんと?」
「嘘ついてどうするんだよ…っていうかくっつくな!」
「折角一緒に入ってるんだから、もっといちゃいちゃしよ」

後ろから腰を押し付けると、ほんのりと桃色に染まっていた肌が更に濃さを増した。既に主張し始めている昂りをしっかり感じ取ってくれたらしい。

「なっ…なんで、勃…」
「こんなおいしいシチュエーションで勃たない方がおかしいって」

身を捩って逃げようとする聡太郎を抑え、濡れた首筋にキスを落とす。

「お、俺は、こんなことしに来たんじゃ…」
「んー?こんなことってどんなこと?」
「ひあ…ッ」

後ろから手を伸ばして両方の乳首を軽く押し潰せば、悲鳴のような高い声が響いた。うんうん。やっぱり聡太郎のちくびは最高だ。最高にかわいくて最高に感度がいい。こんなエロちくびが他に存在するだろうか。

「…ッ、ふ、う…ん、んっ、んん」

予想以上に大きな声を出してしまったのが恥ずかしかったのか、聡太郎は必死に口元を抑えて震えている。

我慢している姿もかわいいけど、それでは意味がないのだ。浴室は確かに声が響く。だけどそれが楽しいんじゃないか。

「聡太郎…声、ちゃんと聞かせて」
「や…っあ、やだ、や…」
「触られんのいや?だめ?」

わざと悲しそうな声で囁くと、聡太郎はふるふると首を横に振って否定した。

「だ、だめじゃ、ないけど…」

恥ずかしい。耳を澄まさねば聞こえないような小さな返事に、俺の胸はきゅんきゅんしっぱなしである。

はぁぁぁ…もうかわいい。そうだよね。一緒にお風呂とか初めて…じゃないけど、ほとんどないもんね。転んだ俺えらい。聡太郎に水を跳ねた車よありがとう。

「だいじょーぶ。俺しか見てないよ。今家に誰もいないでしょ?」
「んっんん、そ、それが、恥ずかしいんだ…って」
「恥ずかしがってる聡太郎もかわいい。好き。大好き」

くりくりと胸の突起を弄り回しながら肌に吸い付く。その身体が跳ねるたび、お湯がばしゃばしゃと音を立てた。

「んぅっあ、あぁっひ、やぁ…ッは、んん…!」
「ね、聡太郎…俺の、分かる?」
「あっ…あ、ん、ぬるぬるする…」

お尻の割れ目にガッチガチになってしまったチンコを押し付ける。お湯の中でも先走りでぬるぬるになっているのが分かったみたいだ。

「ひかる、ひかる…っ」

振り返った聡太郎の瞳はうるうると潤んでいて、大きな瞳の奥には期待の色が見て取れる。ドキリと心臓が高鳴った。

…かっ、かわいい!!何回言っても言い足りない程かわいい!!何この子何この子!!破壊力抜群なんですけどぉぉぉ!!

「…なぁに?」

しかし折角いい雰囲気になっているのに、心の内をさらけ出して悶えてしまってはムードもへったくれも無いので、精一杯取り繕って甘い声を出した。優しくその頬を撫でる。

「こ、ここでするのか…?」
「…だめ?」
「だって、この風呂…か、家族の人が、使うんだろ?よ、汚したりしたら」
「平気だよ。ちゃんと掃除するし」
「でも、でも」
「聡太郎」
「わっ」

お湯の中で聡太郎の身体をくるりと回転させ、向き合うような体勢にさせた。ちゅっと額に口付ける。

「お願い。我慢できない」
「…」

返事の代わりだろうか。目を伏せたままの聡太郎がそっと抱き着いてきた。首に腕が回され、身体が密着する。

「んっ…」

くい、と顎に指をかけて上を向かせると、真っ赤になったその表情がよく見えた。いつもは前髪と眼鏡で隠れている瞳が、じっと俺だけを見つめている。吸い寄せられるようにキスをした。

「んっぁ、あ…ふ、ひか、る…」
「かわいいよ、んっ、世界一、かわいい」
「ばかっ…あっ、あぁ!」

舌を絡めあいながら、手を下に伸ばす。指先で後ろの窄まりをなぞれば、聡太郎はびくっと全身を強張らせた。

「ふふ、ひくひくしてるね…いつもよりやわらかいし…お湯のせい?」
「し、知らないっ…」
「でもほら、いきなり二本入っちゃうよ」
「ひう…ッ!!あ、うそ、うそ…!」

いやいやと駄々っ子のように首を振りながら、一層強く抱き着いてくる。かわいい。言い過ぎだと思うけど本当にそれ以外に形容する言葉が見つからない。もし他にこの気持ちを表す言葉があるのだとしたら是非教えてほしい。俺バカだからね。

「あぁっは、ぁ…んっう、あ、あぁっあ、や、んんっ」

耳元でエロい声が聞こえるのがたまらなくいい。興奮する。

「あつい、や、お湯がぁ…ッや、はぁっん、んっう」
「ん、ごめんね。もうちょっと慣らしたらお湯が入んないように塞いであげるからね」

コレで、とまた性器の先端を擦り付ける。

「も、いいからぁっ、もう、もう…入る、入るから」
「入るから?」
「…っい、いれて」

いやらしいオネダリに頬が緩むのが分かった。

うふ。そーちゃんってばせっかちなんだから。でもそういうえっちなとこ大好き。

「聡太郎…」
「ひ、かる…」

入れやすいようにそっと聡太郎の脚を抱え、指を抜き取る。快感のせいか濡れた大きな瞳がこちらを見据えていて、ごくりと唾を飲み込んだ。…エロいっす聡太郎さん。

「しっかり掴まっててね」
「う、ん…あ、あっ!」
「かわい、聡太郎…」

声我慢しないで、と言いながら先端を潜り込ませたその瞬間、誰もいないはずの家の中で大きな物音が響いた。

「…」
「…誰か帰ってきたね」

ぴしりと二人でそのまま固まる。かと思いきや、聡太郎がものすごい勢いで焦り出した。

「ど、ど、どうしたら…!!」
「落ち着いて聡太郎。とりあえずイこう」
「なにがとりあえずだ!!どけ!!抜け!!」
「えっ…そんな…」
「この状態で続きなんてできるわけないだろ!」

さっきまで夢中だったくせに、すっかり冷静さを取り戻している。これは由々しき事態だ。まさにこれからというときに邪魔が入るとは。こんなの拷問だ。ひどい。

「コレどうしろっていうの…」

仕方なく腰を引いて抜き取るが、当然のごとく俺のちんこはビンビンである。このままでは隠しようがない。こんなんじゃ服を着てもモロバレだ。

っていうかそーちゃんも勃ってんじゃん!辛くないの!

「しばらくしたら治まる!!」
「俺のは治まりそうにないんですけど…」

誰だよこんなタイミングで帰ってきた奴は!!八つ当たりもいいところだが、恨まずにはいられない。

「はぁぁぁ…もぉぉぉ…」
「…仕方ないだろ…お、俺だってしたかったけど…」
「あっそういうこと言わないで可愛すぎるから!!」
「抱き着くな!いいからもうあがるぞ」
「しないからもうちょっと一緒に入ってようよー」
「男二人が風呂に入ってるってこと自体がもうおかしいから。怪しまれたらどうすんだ」
「平気よ。知ってるから」

ばしゃばしゃとそのまま湯船の中でじゃれあっていたせいで、浴室のすぐそこまでやってきた影に気付かなかった。えっと驚く声が二人重なる。

「ね、ねえちゃん…おかえり」

ドアの向こうから話しかけてきたのは、俺の姉だった。

「いらっしゃい聡太郎くん」

聡太郎の肩がびくりと跳ねる。

「おっ…お邪魔してます…すみません、あの…」
「私のことは気にしなくていいから、どうぞごゆっくり」

ごゆっくりというのはその…最後までしていいということだろうか。それともいちゃいちゃするだけだろうか。でも聡太郎のエロい声は誰にも聞かれたくないしなぁ…どうしたものか。

「ひかる」

悶々と一人考えを巡らせていると、今度は俺が名前を呼ばれた。

「なに?」
「ハーゲンダッツ2個」
「えっ」
「口止め料」
「うぐ…」
「いつものでもいいけど」
「…じゃあいつもので」
「はいはーい。ごゆっくりー」

見える。俺には見える。きっと姉ちゃんはドアの向こうでにんまりと微笑んでいるに違いない。

でもとりあえず、帰ってきたのが両親ではなく姉だったということは、ある意味では幸運なことだった。

「お、おいひかる…いつものってどういう…」
「ごめん…俺の姉ちゃん、腐女子なんだ」
「ふじょし…?」
「あーえっと、男と男の恋愛に萌えを見いだす人のこと」

聡太郎が固まった。

「いやね、俺と聡太郎がいつもいつも一緒にいるからね、なんかバレちゃってたみたい。それでたまに同人誌のネタ提供しろって言われたり、俺ののろけ話を聞いてくれたり…」
「…全部知ってるってことか?」
「えへへ」
「…っ!!!」

真っ赤な顔のまま、ぶくぶくと湯船に沈んでいく。

「そっ、そうたろ…!!ちょっ、死んじゃう死んじゃう!!危ない!!」
「いやだ…もう…どんな顔してお姉さんに会えばいいのか…」
「平気だよ!姉ちゃん聡太郎のこと超気に入ってるから!ツンデレ美少年受けおいしいって言ってるか…いたた!痛い!」
「ツンデレじゃない!!」

抱き寄せようとしていた腕を抓られた。これをツンデレと言わずして何と言うのか。

「でも自分から言ったわけじゃないもん。自然とバレちゃってたんだから仕方なくない?」
「否定しろよ…」
「いやだ!嘘でもそんなこと言いたくない!」

聡太郎のことで嘘なんかつきたくない。

聡太郎へのこの思いは、俺が一番大事にしているものだから。それを否定してしまったら、俺が俺でなくなってしまうような、俺自身を否定するような。ともかくすごく大事な気持ちなんだ。

怒りながらそう言うと、聡太郎は気まずそうな表情をして、視線を彷徨わせて、それから再び真っ赤になった。

「聡太郎?」
「…ばか」

ちゅう、とほっぺにキス。俺も真っ赤になる。

「お前は…もうちょっとこう…言葉を選べ。恥ずかしい」
「そ、そうたろぉぉぉ…!」

何いまの何いまの!何ですかそのはにかみ笑いは!俺を殺す気ですか!

心臓がばくばくと脈打って落ち着かない。かわいい聡太郎ほんとかわいい。すきすきだいすき。

「も、もう一回…」

ドキドキしながら近づけた顔は、聡太郎の手のひらによって阻まれる。

「言っとくけど続きはしないからな」
「えっ…」

落胆する俺に思いもよらないご褒美が待っていたのは、それからすぐ後の話。

end?

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