神様これは試練ですか | ナノ


▼ 夜道の太陽

文化祭が終わった。俺のクラスは仮装喫茶というありがちと言えばありがちな出し物を行ったわけだけど、これが意外に人気を博したらしい。俺にとっては悪夢でしかなかったが。

「これでよし、と」

とりあえず制服に着替え、出来る範囲で片づけを行う。空き教室から持ってきた全て机を移動させ終え、ほっと息を吐いた。

しかしまだ終わりじゃない。まだまだやることはいっぱいだ。ゴミ捨てや経費、売上の計算はともかく、今日中にせめて教室の形は全て通常に戻せという指示が出されている。

それにしても、ズボンとシャツのなんと動きやすいことか。文化祭が行われていたこの2日間、俺はメイド服などという屈辱的なコスプレをさせられた。しかも女物の下着まで履かされて。

スースーするし落ち着かないし、早く終わらないかと時計ばかり見ていた。大体あんな格好のどこに需要があるんだよ。男のメイド服なんて一体誰が喜ぶって言うんだ。

…ま、まぁ、ひかるは、喜んでた、けど。

二人で衣装のまま致してしまったときのことを思い出し、頬が熱くなる。駄目だ。思い出しちゃ駄目だ。

「はぁ…うわっ」

教室へ戻ろうとしていたら、突然腕を引っ張られた。そのまま空き教室に引きずり込まれる。…このパターンは、ひかるだな。

「こら、急に何を…え」

怒ろうとして顔を上げる…が、そこにいたのはひかるではなかった。知らない女子生徒たち数人がじっとこちらを見つめている。

「え、あの…な、なにか用事…ですか」

カチャリ、と一人が教室のカギを閉めた。えっ。

「あんたさぁ、今日喫茶店でコスプレしてたやつだよね」
「…はい」
「メイド服着てたよね」
「…はい」
「村上、だっけ。名前」
「…はい」

リーダーっぽい髪の長い女の子に舐めるような目つきで全身をくまなく値踏みされ、思わず後ずさる。怖いんだけど。何この人…。

「なんでそんなもっさい格好してんの?」
「私この人見たことある。いつも守山くんと一緒にいる人でしょ?」
「守山って守山ひかる?あのイケメン」
「そうそう。なんでこんなちっこくてダサいやつがーって思ったもん」

ちっこくてダサくて悪かったな。好き好んでこういう格好をしているとはいえ、こう面と向かって悪く言われるとムッとしてしまうのは、仕方のないことだと思う。

「あのさ、あんたに言いたいことあるんだけど」
「なんですか」

調子に乗るな、とか守山くんに近づくな、とかだろう。どうせ。そういう言葉ならもう何十回と言われてきたから平気。

「付き合って」
「…へ?」
「ごめん。一目惚れなの。私可愛い男の子が大好きで…あんた、メイド服すごい似合ってたし…」

え、付き合ってって、その…恋愛的な意味で、だよな。ドッキリとか、じゃ、なくて。

「…」

は、初めて女の子に告白されてしまった…。

こういうとき、一体どうすれば。

「彼女とか、いんの」
「いや彼女は…」

ひかるは女の子じゃないし。うんうん唸りながら悩んでいると、視界が急に明るくなった。

「あ…」

眼鏡とられた。やばい。

「返して、ください」
「やっぱり、超可愛い顔してる」
「み、見るなっ」

咄嗟に顔を伏せる。俺はこの素顔を誰にも見せないって約束したんだ。ひかる以外には、見せちゃいけないんだ。

「!?」

ぎゅむっと抱きしめられた。頬に触れるこの柔い感触は、その…多分、む、胸。

耐性のない俺にはあまりに刺激が強い。逃れようと必死にもがいてみるも、彼女は非常に力が強かった。

「あああああの、俺、まだ片付けの手伝いしなきゃいけなくて、その…」
「村上、お願い。彼女いないんでしょ?あんたみたいな可愛い子、見たことなくて…」
「いやもっと素敵な人がきっといるはずだから、だから…いっ!?」

背中に走る衝撃。そう。何故か俺はその場に押し倒されてしまったのである。

「紗恵って、呼んで…」

ちょっ、な、なんか頬赤らめてるんですけどこの人。え、俺、襲われてる?今まで男にしかこういうことされたことなかったから、どうすれば。さすがに女の子相手に蹴ったり殴ったりとかできないし。

「さっ、さえさんあの、こういうことは…!」

どうしようどうしようどうしよう。ゾワリと全身が粟立った。いくら相手が女の子といえど、やっぱり無理矢理っていうのは…怖い。怖い。いやだ。

固まって動けなくなってしまった俺に、ゆっくりと手が伸びてくる。

その瞬間。ガシャン、と鋭い音がした。

「え、なに…?」

振り向く女生徒たち。見れば、窓ガラスが一枚見事に割られている。

開けた窓の向こうに、にっこり笑うひかるの姿。

「何してんの?君たち」

ひょいっと身軽に教室の中に入ってきたひかるは、真っ先にこちらへやってきた。

「どいてくんない」

そして上に跨っていた紗恵さんを押し退け、俺を抱きしめる。押し付けられた胸は硬く、だけどそれがひどく安心した。ほっと息を吐く。

「聡太郎に何したの?」
「何って…」
「怖がってんの分かんない?こんなことして許されると思うなよ」
「…っなんで守山にそんなこと言われなきゃ…」

ぎゅっと俺を抱え込む腕の力が強くなった。

「…聡太郎を守るのは俺の役目だから」
「はぁ?守る?村上だって男じゃん」
「男だったら何がいけないの?誰だって苦手なもんはあるだろ。聡太郎は無理矢理こういうことされるのが一番怖いんだよ」

ひかる…。

シャツにしがみ付くと、ひかるはそっと髪を撫でてくれる。大丈夫だよ、と俺にだけ聞こえる声がした。

「…何、あんたたち…変なんだけど」
「密着しすぎじゃない?」
「もしかしてホモなの?気持ちわる」

ぐっと息が詰まる。

…気持ち悪い。それが普通の人の目だ。分かっていたはずだった。でも現実としてこんな風に蔑まれると、やっぱり辛い。

男は女と付き合うのが普通で、それが当たり前で、ひかるを好きな俺は気持ち悪いんだ。

でも、でも、でもそれでも俺は。

「別に気持ち悪くていいよ。付き合ってるとかそういうことじゃなくても、俺にとって聡太郎は大事な人だ。大事な人が傷つけられているのを、黙って見てられるはずないだろ」
「…っ傷つけてなんか」
「分かったらさっさとどっか行って。次何かしたら学校側に言うから」

ひかるのその言葉に返事をすることもなく、女子たちはバタバタと教室を出て行った。

「聡太郎、大丈夫?」
「ひかる…、あの、俺…」
「もーびっくりしたよ?中々戻ってこないなって思ったら、こんなとこで女の子に襲われてるんだもん」
「っお前、手…!」

その手の甲に伝う赤い筋に顔面蒼白になる。

「え、あぁ…鍵締まってたから、窓ぶち破ったんだけど。そのときに切っちゃったかも」
「保健室行くぞ!手当てしなきゃ!」
「いいよ。それよりそーちゃんの方が大事」
「俺のことは…っ」
「怖かったね。もう大丈夫だからね。聡太郎には俺がいるから、なぁんにも心配しなくていいからね」

ぽすん。再びその腕の中に抱きしめられたかと思うと、ゆるゆると慰めるように大きな手が背中を撫でた。

「聡太郎は気持ち悪くなんかないよ」
「…ひかる」
「大丈夫。気にしなくていい。好きになっちゃった俺が全部悪いんだ。全部俺のせいでいい」
「ばかっ!なんでそんなこと言うんだよ!」

俺だって。俺だって。

「俺だってお前のこと好きなのに、全部自分のせいみたいな言い方するなよ!」
「聡太郎…」
「手、貸せ」
「…うん…って、え…!?」

ぺろり、と傷口に舌を這わせる。当然だが血の味がした。そして何故かひどく高揚している自分がいることに気が付く。

「あ、あの、そ、そーたろ…えろい…」
「…黙って」
「んっ、待って、俺そんなエロい顔で舐められたら…勃っちゃう…」
「もう勃ってるの間違いだろ」
「ごめんなさいぃ!」
「いいから」
「へ?」

ひかるの腕の中でごそごそと体勢を入れ替え、その下半身に顔を埋めた。緩く反応を見せ始めている股間へ、ズボン越しにキスをする。

「…これ、ちょうだい?」
「えぇっ?え?えぇ?」
「さっきのお前、かっこよかったから…その、惚れ直したっていうか…」

聡太郎を守るのは俺の役目だ。聡太郎は俺の大事な人だから。その言葉がどんなに嬉しかったかは、きっと俺にしか分からない。

「俺にも、ひかるが好きだって伝えさせて」
「こっ、ここで?」
「今なら…多分、誰も来ないし」

ひかるは普段攻めてくるくせに、こっちから押すと弱い。焦ったような恥ずかしそうなそんな何とも言えない表情をして、頷いた。



「…いれるね」
「いい…俺がやる…お前、手怪我してるし」

座ったまま向き合うような体制。片手でひかるの肩を掴み、片手で自分の尻を少し広げる。にゅる、と少しずつ割り開かれる感覚にはいつまでたっても慣れない。ぶるぶると腰が震えた。

「は…ぁ、ん、ひかる…、ちゃんと、誰も来ないか…見てろよ…?」
「う、うん」
「んんっ、あっ…は、入った」

時間を気にしてあまり慣らせなかったせいか、いつもよりキツイ。みっちりと穴の中を満たす質量を感じて、息が上手くできなくなる。

「はぁ、あ、あ…っいっぱい、ナカ、くるし…」
「かわいい。感じてるの?」
「う、んっ、きもちい…ひかるは、きもちいい…?」
「きもちーよ。ここに、俺のが入ってると思うとね」
「あっ!」

すり、と優しく下腹を撫でられ、その刺激すら快楽として受容してしまう。

「動いて?」
「んっ…わ、わかった…」

ゆっくりと上下運動を開始させた。息を荒げながら腰を動かす俺を、ひかるの瞳がじっと見つめている。

「んっあっ、あっ、ひ…ッん、あぁっ、あっ…」
「っなんかさ、聡太郎、のスイッチ入るタイミング…分かってきた、かも」
「えっ?ど、いう…っあっあっあんん、ふ、ぁ、ん!」
「俺、愛されてるなって、ことっ!」
「あぁぁっん!」

ぐんっと下から突き上げられて、思わず大きな声が出てしまった。必死に歯を食いしばって抗議する。

「ひか、ひかる、だめぇっ俺が、俺がするのぉっ」
「ん…一緒にしよ?」
「あううっ、あっ、んん、ひやぁっそんな、したら、俺だけ先に…っ」

ひかるの手が透明な蜜を零し続ける俺のモノを扱き始めた。ちゅこちゅこと竿全体を強く擦られ、口の端から飲み込めない唾液が垂れる。

「あ゛―ッ、だめ、だめだめ、んぁぁっあっあっあぁぁっ」
「こら、声抑えないとダメでょ?」
「だって、だってひかるが…っひ、んん…っん!んう、んっ――っ」
「涎垂らしちゃって。かわい」

れろ、とその唾液を舐められた。そのまま口の中を舌でかき回される。尻の中、ペニス、口内と三重の攻めにあわされた俺は、押し寄せてくる快楽に体中がばらばらになってしまいそうだった。

「ひか…っん、ひかる、ひかるぅっ、あぁぁっひかる、ひかる…ッ!」

びくっびくっと足が宙を蹴り、馬鹿みたいにひたすらひかるの名前を呼ぶことしかできなくなる。

「なぁに?聡太郎。俺はここにいるよ」
「いく…あっ、も、俺いっちゃう、あぁぁぁぁっ!ひかるもぉ、おねが、一緒に…っ」
「っ、うん…じゃあ、一緒にイこうね」
「うんっうんっ、いく、いくううっ、あぁぁっ、あうっあっんっんん!」

きつく互いを抱きしめ合い、激しく絡まり合う。すき、と掠れた声で囁くと、ひかるは小さく呻きながら俺の中に吐精した。ぎゅっと手の中の性器に力を込められて、耐え切れずに俺も精を飛ばす。

「はぁ…やばかったぁ…」
「ん…っ、ん、ん…はぁ、はぁ…」

絶頂の余韻に浸りながら息を整えていると、ひかるの頭が肩口に落ちてきた。

「…な、なかに出しちゃった…えへ」
「…」
「そ、聡太郎?怒ってる?」
「…別にいい。俺も中に欲しかったし」

最初から中に出してもらうつもりだったし。

「…そーちゃんって、ほんとえろい」

うるさい。えろいのはお前もだろ。



「怒られちゃったねー」
「うん…まぁ、仕方ないけど」

教室の窓ガラスは片付け途中に誤って割ってしまったということにしたのだが、それでもちょっとだけ怒られた。

すっかり暗くなってしまった帰り道。その中でもはっきりと分かる、手に巻かれた白い包帯。俺は少しだけ眉をひそめた。

「その傷…大丈夫か?痛くない?」
「平気だよ」
「ごめん、俺のせいで」
「もう!聡太郎を守るのは俺の役目なんだから!気にしなくていいの!」
「ちゃんと責任はとる」
「責任?」

きょとんとするひかるの手をとり、唇を押し当てる。

「責任とって、一生、ひかるの傍にいる…」
「!!」

恥ずかしくて段々と小さくなってしまう声も、しっかりその耳には届いたらしい。

「どうぞ末永くよろしくね」

太陽のように微笑むひかるを見て、俺はなんだか幸せな気持ちになったのだった。

end.




ぺっぱーみんとさんへ

聡太郎がひかるに惚れ直す甘々エロ話、でした。ひかるは普段チャラチャラしてて優しいけど、多分怒ったら女の子にも平気で手だしそう。そうならないように気を付けようね聡太郎。

リクエストありがとうございました!お待たせしました!楽しんでいただけると幸いです。

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