▼ 愛で満たして
最近ひかるが何故かよそよそしい。いつもなら鬱陶しいくらいにベタベタしてくるはずなのに、手を繋ぐことも躊躇しているような素振りを見せる。
キスやその先なんてもってのほかだ。以前は週に一度は必ず…その、えっ、エッチをしていたが、ここ数週間は軽く唇を合わせるだけ。不安になるのも当然ではなかろうか。
「おい」
「えっ、なに!?」
「…」
いつものように、二人で家路を辿る途中。ちょっと声をかけただけで、飛び退くように距離をとられた。…なんなんだよ。ひかるのくせに。
まさか…もう、俺のこと、嫌いになった?
俺がいつもいつも意地ばかり張ってるから。素直に気持ちを伝えられないから。
「…っ、ひかる…」
「どうしたの聡太郎…具合悪い?大丈夫?」
お前のせいだよ。耐えきれずにぎゅうっと抱きつく。
「ちょっ、ちょっと聡太郎さん…離し…」
「いやだ」
「え」
「いやだっ!絶対離してなんかやらない!」
グイグイと腕を引っ張り、最初に目に入った建物…所謂ラブホテル呼ばれる建物へ連れ込んだ。
こういう場所に来るのは初めてだったが、何となく手順は分かる。手早く部屋を決め、そこに無理矢理ひかるを押し込んだ。
「あの、聡太郎…ここ、ラブホ…」
「そんなこと知ってる!」
「ご、ごめんなさい!」
「今すぐ俺を抱け」
「え」
ドサリ。ありったけの力でその身体を押し倒し、上にのしかかる。ひかるは事情が飲み込めないという風に視線をさまよわせていた。
「んんっ!?」
唇を塞ぐ。自分から舌を差し込み、積極的にその味を堪能した。ふるりと口内が震える。
「なんで、いきなり」
「うるさい」
「うわっ、何!?」
濃厚な口付けにより既に反応を見せていたひかるの性器。ズボンのファスナーを下げてそれを取り出し、ためらうことなく口に含んだ。
「うあ、ちょっ、それは駄目だって…!」
何が駄目だって?俺に触られるのがそんなに嫌かよ。こんなに硬くしてるくせに。いろんな感情がぐちゃぐちゃでわけが分からなくなりながらもしゃぶり続ける。
じゅぷじゅぷと音を立てれば、ひかるは拒絶するかのように何度も首を振った。
「ああっ、そ、たろ、だめ!口離して!」
「ひやら。おれのくちにらせ」
「んん…は、ぁ…っ」
びくん。一度大きく腰が跳ねたかと思うと、そのすぐ後に大量の精液が口内に溜まっていく。
「…」
無言でズボンと下着を脱ぎ去る。イったばかりで脱力していたひかるが、目を丸くしてこちらを見つめていた。すでに俺のものも緩く勃ち上がっている。
吐き出された精液。その三分の一を飲み込み、三分の二を手のひらに吐き出した。そして、
「あんっ、ふ、ぁ…」
ぬるぬるとそれを指に絡め、自分の尻の穴に挿入する。こんなことをするのは初めてだったが、存外すんなりと受け入れることができた。
「な、なにして」
「ああっんん、ひかるぅ…あ、あ、そこ、そこぉ…っ!」
「うそでしょ…」
ひかるの前で体育座りをし、足だけを大きく広げる。俺が自分で弄っているところが見えるように。
中に入っているのは自分の指なのに、見られているという状況がまるで彼の指を挿入しているような錯覚を引き起こした。
とろりと糸を引く透明な先走りが孔へと垂れ、指を動かすたびにくちゅくちゅと音を立てる。
「ああっ、あっあっあっ、んぅっ…」
「…っ」
「ぐちゅぐちゅするの、きもちいいよひかる…っ!!あぁぁぁっ!」
片手はそのまま穴を愛撫し、もう片方の手で乳首をこねくり回す。勝手に背中が反り上がり、聞くに耐えない恥ずかしい嬌声が上がった。
「ちくび、あ、いい…っおっぱい、感じる…んぁ、ふ、はぁぁんっ」
肛門に二本の指を突き立て、激しくピストンさせる。もう止まらなかった。ぶじゅぶじゅ下品な音と共に、愛液が飛び散る。
ごくり、と目の前のひかるが唾を飲んだ。
駄目。もう無理。欲しい。
その顔を涙でぼやけた視界で捉え、必死に言葉を紡ぐ。
「ひかるっああっ、ひかる…!そ、たろのエッチなおまんこに、ひかるのおちんちん、ちょうだい…っ!」
「で、でも」
「ああっだめいっちゃううっひかるッ!はやく、ひかるのでいきたいからぁぁっはやく!!」
「っ聡太郎…!」
ほとんど叫ぶように懇願すれば、思いっきり引き倒された。ベッドの上であるにもかかわらず、あまりの力で背中に痛みを感じる。
「ん、ふぅぅぅっ!!」
ぶちゅっと一気に最奥まで貫かれ、目の前が真っ白になった。腰がガクガク痙攣して浮き上がる。恐らく自分は達したのだろう、とどこか他人事のように思った。
「あ、あ、あ…っひかる、ひかる」
「…っ、ほんと、えろすぎ…!!」
「ひぎっあぁぁっ、いいっ、やぁぁっ」
「ど、しちゃったの聡太郎…っん、俺ドキドキして死にそう…なんだけ、どっ」
「あぁっ、も、ちょっと、あううっゆっくりしてぇっ!」
「無理だよ」
獣のような瞳が俺の乱れる様をじっと見つめている。ひかるはぺろりと自分の唇を舐め、興奮したように何度も何度も腰を叩きつけてきた。
「誘ったのはそっちなんだから…俺、我慢してたのに」
「んぁぁっ、あっ、が、まん…?」
「そう。聡太郎、この間エッチしたあと…気絶しちゃったでしょ?」
そ、そういえばそんなこともあったような。でもそれはあまりに気持ちよかったからで、その…だからひかるが我慢する必要は…。
「あのとき、俺…めちゃくちゃ怖くなって。聡太郎がこのまま起きなかったら、どうしようって」
「ば、か…っ!そんなことあるわけないだろぉ…ん、ふぁっ!」
「そんなの、わかんない、じゃん…!俺、聡太郎のこと、もっと、大事にしたいんだよっ!だから、だから」
律動のせいで途切れ途切れになる互いの声。激しく揺さぶられ、ぼろりと涙が零れる。
…なんだ。嫌われたんじゃなかったんだ。
「も、ふざけんな、あぁぁっん、ふ、う…!」
「だって…」
「余計な気、んぁっ、まわさなくて、いいんだよ…っ!」
もう十分すぎるくらい、お前は俺を大事にしてくれているじゃないか。
「ひかる、ひかるぅ、あぁっすき、すきぃ…っ!!」
「俺も好きだよ、大好きだ…っ聡太郎、俺の聡太郎」
「ひぁぁぁっうぐっ!ああっ、いくっ、いくううっ」
「っ、はぁ…可愛い、愛してる」
ばちゅんばちゅんとものすごい速さで突かれる。二度目の絶頂はすぐそこで、ひかるの身体に縋り付きながらありえないほどの快感を必死に受け止めた。
射精をこらえるためか眉根を寄せたひかるが、顔中にキスを降らせてくれる。その全部が愛に溢れ、俺の胸はきゅんと切なくなった。
ひかる、ひかる、好きだよ。
鬱陶しいくらい俺に愛を囁いて。お前の愛で俺を満たして。
決して壊れたりはしないから。
「うぁぁぁっ、あぁぁぁ!」
「ん、あ、出る…っ」
ドクドクと熱い液体を注ぎ込まれる。中で迸る子種に全身が喜ぶのが分かった。
「聡太郎…」
馬鹿。そんな心配そうな目、するな。俺は何度だってお前のところに戻ってくるよ。お前が思うほど、俺は弱くない。
首に腕を巻きつけ身体を起こし、その唇にキスをする。安心しろ。大丈夫だから。優しく抱きとめてくれるひかるの表情は、安堵に満ちていた。
*
「はぁ、もうそーちゃんえろすぎ…」
「うるさい」
「もう俺鼻血噴き出しそうだったんだからね!」
「忘れろ」
「いやだ!忘れない!帰ってオカズにする!オナニーする!」
「はぁ…」
帰り道。ふらふらになった俺をご機嫌で支えながら歩くひかる。鼻歌でも飛び出しそうな勢いだ。
…恥ずかしい…なんであんなことしたんだ俺は…。穴があったら入りたいとはこのことだ。
「聡太郎、大好き。可愛い。またあんな風にエッチなとこ見せてね!」
「…いやだ」
「えぇっ!?なんで!?」
「知るかっ!馬鹿っ!」
「照れてるの?んふふ!」
「うるさいっ」
「いたっ!」
ひかる。ひかる。お前は何も考えなくていい。ただひたすら鬱陶しいくらい俺に愛を囁いて。お前の愛で俺を満たして。
決して壊れたりはしないから。俺にはお前しかいないから。
「聡太郎、大好き」
「はいはい…」
end.
*
名無しさんへ
聡太郎に恥ずかしいえっちな言葉やおねだりをいっぱい言わせてほしい、ということだったのですがいかがでしたでしょうか…!
リクエストありがとうございました!楽しんでいただけますように!
prev / next