▼ おまけ
「おい、野見山」
「何ですか」
「お前…聡太郎の素顔見たのか」
指を食い込ませるように肩を掴む。野見山は露骨に嫌そうな顔をした。
「素顔って…」
「メガネを外したときの顔だよ!」
「あぁ、見ましたけど。っていうかその瞬間に一目惚れしたようなものですし」
「よし頭出せ。殴らせろ。記憶を消させろ」
「はぁ?」
許せない。あのかわいいかわいいかわいいかわいいお顔を拝んだ上に、一目惚れだと?
ばーかばーか!もう遅いんだよ!俺の方が先に聡太郎に一目惚れしたんだからな!…くそ、好きになったきっかけは一緒かよ腹立つな。
「そもそもどこで見たんだよ」
「駅」
「聡太郎が駅で素顔晒すわけないだろ!」
「…はー、俺なんでこんな人に負けたんだろ…」
何を訳の分からないことを言っているんだ。早く白状しろ!
野見山が呆れたような視線で俺を指さす。
「見ちゃったんですよ。あんたが、村上先輩を人気のない駅の通路に連れ込んでキスしてるとこ」
「えっ」
「キスするのに邪魔だからって言って、メガネをとったのはほかでもない守山先輩です」
「うそ」
「うそついてどうするんですか」
えっ、じゃあ俺がちゅうした後のあの聡太郎のえっろい顔も全部見られたの…。
ショックで顔が青ざめるのが分かった。なんてことだ…なんてことだぁぁぁぁぁ!
「お願い野見山…忘れて…」
「嫌です」
「忘れて!!!」
めそめそと半泣きになる俺にドン引きの野見山。しかしそんなことを気にしている場合ではない。
「いいもん…俺しか知らない聡太郎の姿は、他にもいっぱいあるもん…」
えっちするときとかね!あぁこの間の聡太郎はやばかったな…すっげえ興奮したな…またあんな風に俺のこと求めてくれないかな…。
あ、思い出したら勃ちそう。ムラムラする。
「あー…、恋人にしか見せない顔ってやつですね」
「そう!それ!」
「普段はクールな村上先輩が、守山先輩の前ではやっぱり変わるもんなんだ。余程愛されてるんですね」
「え、そお?んふふ」
「例えばどんな感じなんですか?」
「えーっとねぇ…」
まず、あの大きな瞳がとろーんてとろけちゃうんだよ。ひかるうって何度も俺のこと呼びながら、おっぱい突き出してくるの。ちくびいじられるの大好きだからね。
「そんで、白い肌に映える二つの赤い飾りを俺が舐めて噛んで吸って…」
涎でべっとべとになったちくびのえろさと言ったらもう…あれは国宝にしていいと思う。
「…ひかる?」
「あっ、国宝って言ってももちろん一般公開はしないよ?俺だけが見られるように大事に大事に…」
って、え?この声は…。
「あ、村上先輩」
やっぱり!俺に会いに来たのかな聡太郎!
笑顔で振り向いた瞬間、顎に衝撃が走った。
「い゛っ…!?」
「この馬鹿っ!余計なことをべらべら喋るな!」
頭突きされたのだ、と理解するのに少々時間がかかる。痛みによる涙で滲む視界。聡太郎の真っ赤な顔だけが見えた。
「お前なんかもう知らん!」
「えっ、待って、聡太郎!」
「しばらく俺に触るな!…っえ、えっちもしない!」
「やだ!そんなの死んじゃう!」
俺はいつでもどこでも聡太郎に触れていたいのに!えっちだって週末だけで我慢してるのに!…たまに無理矢理襲っちゃうけど。
「待ってよ聡太郎!ごめんってば!」
その後本当に聡太郎はしばらく身体に触らせてくれなかった。俺はもう死ぬかと思った。
そして、聡太郎を怒らせるのはやめようと堅く心に誓ったのだった。
end.
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