▼ 08
「聡太郎、声でかい。誰か来たらどうすんの」
「うぁぁっん!ひ、かる、ひかる」
「ふふ。もうそんなことどうでもいい?そんな気持ちいい?」
「んっいい、きもちいいよぉ…ッ」
「あぁ…俺も、気持ちいい」
ひかるの額から汗が落ちていく。
苦しそうに歪められた表情が、とてつもなく艶かしい。
ひかるが俺の中に入って、俺の身体で気持ちよくなっている。それだけのことがこんなにも嬉しい。幸せ。
「好きだ、そ、たろ…」
「はぁっ、おれも、すき、すき、あぁっ、いく!」
「ん、ちょっとまって、一緒にイこ」
「ひ…ッん」
ぐりぐりっぐちゅっ。
「いくよ、聡太郎、いい?」
「あぁっ、ん、いい、いいよ、きてっ」
ギリギリまで引き抜いたかと思うと、次の瞬間勢いよく最奥まで叩き付けられた。
「あぁぁぁっ、いく!いっちゃう!やぁぁぁぁっ」
「んぁ、…は、う」
収縮する内壁。ひかるのモノをぎゅうぎゅうに締め付けながら絶頂する。生暖かい液体が穴の中に広がっていき、ひかるも同時にイったことを知った。
「はぁ、はぁ…あ、う…」
「ちょっ、危ない」
力が抜けてずり落ちていく俺を、慌てて抱きかかえるひかる。つながったままの穴から、こぽりと精液が流れ出てきた。
「超えろかったよ…やばい本当」
「ん…」
「満足した?俺の愛伝わった?」
「した…伝わった…」
「聡太郎の愛も伝わってきたよ!嬉しい!幸せ!」
そっか。それならよかった。
ひかるの肩にもたれかかりながら、俺はへらりと笑う。
大好きだよ、ひかる。
*
「ごめん。大事な人がいるんだ」
野見山くんの気持ちには応えられない。
深く頭を下げれば、彼は困ったような声でやめてくださいと言った。
「謝ってほしいわけじゃないですから」
「でも、折角、俺なんかを見てくれたのに」
「先輩は自分を卑下しすぎです。もっと自信を持ってください」
自信って、言われても。持とうと思って持てるものなら苦労はしない。
「大事な人って…守山先輩、ですよね」
「…うん」
「好きなんですか?」
野見山くんの鋭い瞳がこちらを向く。この間までの俺なら、きっと耐え切れずに視線を逸らしてしまっていただろう。
でも、今は。
「好き、だよ。世界で一番」
真っ直ぐに彼を見つめ返し、自分の気持ちを口にした。
「世界で一番、ですか」
「うん」
俺の回答に目を丸くして驚く野見山くん。そしてぽつりと呟く。
「…俺、実は全部分かってたんですよ。守山先輩と村上先輩が付き合ってることも、二人が別れるはずがないってことも」
「え」
「知ってて告白したんです。この気持ちを伝えずにいるのは、あまりにももったいないと思ったから」
「もったいない?」
どういう意味だろう。首を傾げる。
「そう。誰かを好きになるってすごく素敵なことじゃないですか。自分ひとりでその素敵な気持ちを完結させちゃうのは、なんか…残念だなって」
「…」
「…なーんて、格好つけて言いましたが、あわよくば先輩がなびいてくれないかなっていうヨコシマな目論見もあったんですけどね」
…野見山くんは、大人びた考えの持ち主なんだな。
大事なことがちゃんと見えている。ギリギリになってからしか気づかないような俺とは大違いだ。
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