▼ 07
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「聡太郎…気持ちいい?」
「ん、ん…あ、きもちいい…」
「かわいい。好きだよ」
「俺も…すき」
トイレの個室。便器の上に座るひかるに向き合うように跨り、その熱い塊を受け入れる。
…怖がらせてしまうかもなんて言ってたくせに。
「痛くない?身体辛くない?」
「だい、じょうぶ」
それどころか全く逆で、最初から今までどろどろに甘やかされている。
本当に、溶けてしまいそう。胸が苦しい。
「はぁ…聡太郎の中、やばい」
「やばいって、なにが…」
「きゅんきゅん締め付けてくる」
「っだって」
「ッあ、ほらまた締まった」
「ふぁ…言うな、わかってるからぁ」
ぴくぴくと足が震える。気を抜いたらずり落ちてしまいそうだ。それくらい気持ちがいい。
動いてもいないのにはぁはぁと吐息が漏れる。それはひかるも同じのようで、どちらのものとも分からない荒い息遣いが響いた。
「は…気持ち良すぎて、しにそ…」
「んん、ひかる…」
「なぁに?」
上気した頬で微笑むひかるを見たら、鼻の奥がツンとして泣き出しそうになってしまう。
…この人が、愛しくて愛しくて仕方ない。どうしたらいいか分からない。
「どうしたの、そんな泣きそうな顔して」
「うっ、あ、ひかる、ひかる」
「ん?」
「俺から、離れないで、ずっと一緒に、いて」
依存しているのはこっちの方だ。
ひかるがいない毎日を想像できない。ひかるがいなくなったら、俺はきっと生きていけない。
たった数日離れただけで、死にそうなくらい寂しいのに。
「言われなくたって…大人になっても、おじさんになっても、おじいちゃんになっても…俺はずっと聡太郎といるつもりだよ」
「ほんと?」
「何なら一緒のお墓に入る?」
「んっ、入る、入る」
「ふふ…じゃあ、死んでからも一緒だね」
「あ、う、うれし…」
俺も嬉しいよ、と囁いたひかるが、何度も何度もキスをしてくれる。
おでこ、まぶた、鼻、頬…それから、唇。
「はァ、ふ、んん…あ」
ねっとりと舌を絡め、吸われ、勝手に腰が動いた。ぐちゅり、と小さく水音が鳴る。
あぁ…ひかる、もっとちょうだい。もっと俺のこと、溶かして。
「えろい顔」
「ぁ、ん」
「ねぇ聡太郎、俺以外の人に好きって言われて、嬉しかった?」
「え…?」
「野見山の告白、どう思った、のっ」
「ひあぁっ、あ、そこぉ…!」
突然激しく突き上げられた。キスに酔わされてぼーっとしていた思考が引き戻される。
「喘いでないで、ちゃんと…っ答えてよ」
「やぁっ、だってぇ、いきなりっ」
「聡太郎」
「あぁっん!」
ガクガク揺さぶられながら、必死に言葉を紡ごうと口を開く。
「う、嬉しかった…」
「へぇ?嬉しかったんだ」
「ひぅっ、けど、けどっ」
「けど?」
「あっ、けど、ドキドキは、してないからぁっ」
そう。俺の心を動かすのは、いつだってひかるだけなんだ。
好きって言われたのは素直に嬉しい。どんな形であれ、俺という人間を見てくれた人がいることは誇りに思う。
でも、でも、こんな風に心臓が締め付けられるような感覚を教えてくれるのは、たった一人だけ。
「んぐっ、ふ、んんん」
唇を荒々しく塞がれ、悲鳴のような喘ぎ声が彼の喉の奥に消えていく。
ひかるはそのまま少し腰を浮かせ、俺の身体をドアに押し付けた。突き上げに合わせてガタガタと物音がする。
「んっんっんっ、んん〜〜〜ッ」
まるで凶器のようなそれでナカをめちゃくちゃに擦られ、ビクビクと全身が震えた。無理な体勢のせいで足がつりそう。
「ぷはっ、あっあっ、あぁぁっ!」
唇が離れると同時に俺の淫らな声が反響する。唾液の糸が互いの口を繋ぎ、顎に垂れるのが分かった。
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