▼ 03
「いいよ。教えてあげる」
「…本当ですか」
「うん。…まぁ、かなり恥ずかしいけど…引かないでくれよ」
「恥ずかしい?」
普段めったに恥ずかしがることなんてない彼がここまで言うなんて、一体どれだけヘビーな過去が。
…聞きたくない気もするけど、でもやっぱり聞きたい。
彼のことを、知りたい。
押し倒されたままの僕にしっかりと抱き着きながら、亮一さんは言った。
「律君に一目惚れしてから…自分で開発した」
…ん?
「男を好きになるなんて初めてだったからな…いろいろ勉強しようと思って、情報収集しているうちに…こう、ムラムラしてきたというか」
「…」
「試しにちょっと尻を弄ってみたら…思いのほかハマってしまって」
「…あの」
「わ、分かってるんだ自分でもおかしいってことは!でも前立腺ってやつがすごく良くて…」
「いやそうじゃなくて」
聞きたいのはそこじゃなくて。
「男の人を好きになるのは、初めてなんですか?」
僕はてっきり亮一さんが同性愛者なのかと。
「初めてだ」
「ふうん…」
「だから何にも心配することはないぞ!俺の尻の穴は君だけのものだからな!」
「その言い方はどうかと思いますけど」
そうか。
そっか。
そうなんだ。
「ありがとうございます」
そんな風に一途に思ってくれて。
「律君…?」
彼の顔を両手で包む。
そして、形の良いその口を自身の唇で挟み込むようにキスをした。
「ん…」
亮一さんがするような大人なキスではないけれど。繋がった部分からは、びりびりと痺れるような気持ちよさが広がっていく。
ずっと味わっていたい。何だろうこの感覚は。
「ふ、ぁ」
「…」
少ししてから唇を離すと、亮一さんが溶けた瞳でこちらを見つめた。
「もっと、して」
「僕、キス下手ですよ」
「いい…気持ちいいから」
「…そうですか」
漏れ出る色気。直視できないくらい恥ずかしい。そんな表情どこで覚えてくるんですか。
さらさらと彼の髪を撫でながら、何度も何度も軽く口付ける。
「ん、ん」
その度に小さく漏れる声。揺れる身体。
いつも主導権を握っているのは亮一さんなのに、今は僕が彼のことを。その事実にひどく欲情する。
「律くん、すき…」
「はい」
「本当に、俺は君だけだから…」
「はい」
参った。自分よりずっと格好良くて年上の人が、こんなに可愛いなんて。
「ぁ、んん…」
僕と亮一さんは、その後時間を忘れるようにキスしまくったのであった。
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