▼ 01
「…あのう」
「ん?」
「なんなんですかこの体勢は…」
本を読んでいる僕を後ろから抱きかかえている彼。おかげでちっとも集中できない。
「律君は可愛いな」
「意味が分かりません。っていうか、毎回授業後に待ち伏せするのやめてください」
「明日は4限までだったっけ?」
「どうして亮一さんが僕の時間割を把握してるんですか!」
ここまで来るともはや恐怖すら感じる。
最近毎日授業の後になると必ず亮一さんが現れて、有無を言わさぬ勢いで彼の家に連れ込まれているのだ。
まぁ僕の家はここからそんなに離れていないから、交通的に不便なことはそれほどないのだけど。
「俺と一緒にいるのは嫌なのか」
「嫌っていうか…もうすぐテストなんで、勉強したいんですよ」
「ここですればいい」
「じゃあ離してください」
「それは了承しかねる」
はぁ。もうなんなのこの人。
「っ」
すりすりと背中に甘えるように擦り着いてくる感触がして、身じろぎをする。
「ちょっと、やめてください」
「律君の言葉はあまり信用しないようにしているからな」
「なんでですか」
「この間の酔っぱらった君はとても素直だった。あれが本音なんだろ?」
僕はそんなこと知らないし覚えてないです。ああもう自棄になって飲んだりするんじゃなかった!
「忘れてください!」
「忘れない。毎晩あれをオカズにして抜い…」
「うわぁぁぁぁ!」
聞きたくもない事実を平然と口にする彼。
慌てて振り返ってその口を塞ごうとするも、それがまずかった。
思っていたよりもずっと近い顔の距離。今にも唇がくっついてしまいそうで、亮一さんがニヤリと口を歪める。
「積極的だな」
「ちっ、ちがいます…うわ!?」
あっという間にその場で押し倒されてしまった。どうにかして逃れようとする僕の腰の上に彼が座る。
う、重い。当然だ。彼の方が背も高いし引き締まった体をしているし、それでなくとも僕は貧弱な痩せっぽちなのだから。
「律君…」
「や、やです!しません!どいてください!」
「無理だ、もう勃った」
「ひい!どうしてそんなに性欲が強いんですか!?」
「ふふ」
ふふじゃないです。絶倫にも程があります。
そもそもお尻の穴に何かを入れられて、気持ちいいのだろうか。僕には一生理解できないし理解したくない。
体格的に言うと僕が入れられる側だと思うんだけど…絶対に嫌だ。無理無理。想像して寒気がした。
「自分で解すから、律君はそうして寝っ転がっているだけでいい」
「は、いや、ちょっ…待って!」
自分で解すとかそういう問題ではない。ベルトを外そうとする手を掴んで、ふと気が付く。
…亮一さん、慣れてる、よな。
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