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▼ 雨降って地固まる(?)

俺の恋人は、かっこよくて優しくて、とっても素敵な大人の男だ。

完璧で文句をつけるところなんて一つもない…って言いたいところだけど。実は一個だけ不満に思っていることがある。

「直人、着いたよ」
「…」
「直人?」

千尋さんは仕事が忙しいから、週末しか会えない。それはいい。こうしてデートにも連れていってくれるし。

俺が不満なのは、付き合って半年は経つっていうのに、彼が全っ然手を出してこないことだ。

「千尋さん、俺、まだ…」

もっと一緒にいたい。そんな思いで運転席に座る彼を見つめると、困ったような笑みを返された。

「明日学校だろ。もう帰って寝な」
「そーだけどさぁ…」

駄々をこねる俺に、子供騙しみたいなバードキス。

「おやすみ、直人」
「…千尋さんのあほ」

そんなんじゃ足りないってこと、分かってるくせに。



「えっ」
『ごめんな。急に決まった話で』
「いつ帰ってくんの」
『…1ヶ月後』
「はぁ!?」
『この出張終わったら、まとまった休みもらえるから』

そんなこと言ったって。1ヶ月は長すぎる。ただでさえ会える日にちが少ないのに。

電話の向こうから聞こえる彼の声はちっとも寂しそうじゃなくて、それがまた腹が立つ。

「千尋さんは寂しくないのかよ」
『寂しいよ』
「うそ。全然寂しそうじゃないし。いっつも俺ばっか…」

泣くな泣くな泣くな。泣いたら余計ガキみたいじゃないか。

『直人、』
「もういいっ!他の人といちゃいちゃして遊んでやるっ!」

自分の声を聞かれるのも、これ以上彼の声を聞くのも嫌でそのまま通話を切った。

千尋さんはきっと、俺よりも仕事の方が大事なんだ。俺のことなんかそんなに好きじゃないんだ。



それから二週間とちょっと。もう俺はドン底だった。クラスの友人にも心配されるほど。

千尋さんからの連絡はない。なんでだよ。連絡してこいよばか。

もうずーっとずーっと声を聞いてない。顔を見てない。限界だ。会いたいよ千尋さん。千尋さん千尋さん千尋さん。

なんかもう意地とかどうでもよくなってきた。どーでもいいから千尋さんに会いたい。

もう寂しさで押しつぶされそう。他の人と遊ぶなんて嘘だ。そんな気さえ起こらない。

いてもたってもいられなくなった俺がとった行動は、

「直人…!?」
「…」

学校をさぼって何時間も電車を乗り継いで、千尋さんの出張先まで行くことだった。

以前電話したときに大体の住所を聞いていたから、あとはスマホで検索をかければ簡単に辿り着く。それでも遠く離れた場所に向かうのは時間がかかり、到着したのは夜だった。

小綺麗なマンスリーマンション。俯く俺。驚く千尋さん。玄関先でしばらくの沈黙。

「とりあえず入って」
「…うん」
「夜はもう冷えるだろ?何かあったかいものでも飲む?」
「…いらない」
「晩ご飯は食べたの?お腹空いてない?」
「いらない!」

もう耐えらんない。その広い背中に思いっきり抱きつく。

「直人、何を…」
「ごめんなさい」
「え?」
「千尋さんは俺のことガキだし面倒くさいって思ってるかもしんないけど、俺、千尋さんと離れたくない」

わがままばっかだし、駄々こねるし、うんざりだって言われても仕方がない。

どんなに邪険に扱われてもいい。だけど、俺の恋人というポジションからは絶対に外れて欲しくない。

「キスもエッチもしてくんなくていいから…一緒に居てくれるだけでいい」

ほんのちょっとの間だけど、離れてみて反省したんだ。俺、欲張りになりすぎてたんだと思う。こんな素敵な人が付き合ってくれてるだけでも幸せなはずなのに。

「お願い、捨てないで」

回した腕に力を込め、額を背中に擦り付けた。はぁっと溜め息の音が聞こえる。

「直人、手、離して」
「や、やだ…千尋さん、俺いい子にするから」
「いやそうじゃなくて。顔が見たい」

返事をしないうちに彼の身体が反転した。大きな手が頬を包んでくれる。

「千尋さん…?」
「俺の目を見て」
「えっ…んむっ」

唇に柔らかい感触。いつもみたいな軽い口付けかと思っていたら、大間違いだった。

「んぁ、あっ、ふ…ん、んっ」

ぬるぬるしたものが口の中を好き勝手に舐め回す。あ、やだ。変な声出る。なんか涙出てきたし。

彼のシャツを握り、初めての感覚に耐え続けた。どのくらいの時間が経ったか分からないが、唇が離されたときには俺はもうふにゃふにゃである。

「直人、可愛い」
「か、かわ…いい?」

意味わかんない。俺のことどうでもいいんじゃないの。なんでこんなキスすんの。俺、馬鹿だからちゃんと言ってくんなきゃわかんないよ。

「どうでもいいわけないだろ。好きじゃない相手にキスなんかすると思う?」
「ち、千尋さん、俺のこと好きなの」
「はぁ?」

すっごい怖い顔された。肩を縮こまらせる。

「ひっ、だ、だって、いつまでたっても手出してこないし、この出張だって俺は寂しくてたまんなかったのに、千尋さんはひとつも連絡してくんないし…」
「…」
「だけど俺、千尋さんが好きだからそれでもいいって思って…そばにいられるだけで幸せだからって、わがまま言ってごめんなさいって、伝えに来たのに」

なのに、なのに。

「こっ、こんなキスされたら、俺、千尋さんが欲しくてたまんなくなっちゃうじゃん…」

ぐすぐす鼻を鳴らしながら縋り付いた。今にも零れそうな涙を必死にこらえる。

「…参ったなぁ。高校卒業するまでは何もしないって決めてたんだけど」
「へ」
「一度手を出したら、どっぷりハマることは予想できてたからね」
「あ、あの」
「いい冷却期間になると思ったのに、逆効果だ」
「千尋さん、それ、どういう意…っ」

言い終わらないうちに再び口を塞がれた。慣れない大人のキスに翻弄される俺を、千尋さんが抱きかかえる。

「ごめん。もう我慢できない。…ハマってもいい?」
「…っ、い、今更…」
「言っとくけど俺かなり重いからね。直人のこと縛り付けて、一生俺しか見ないようにしたいと思ってる」
「それ、ほんと…?」

優しくベッドに降ろされたかと思うと、俺の上に馬乗りになる千尋さん。にこにこといつもの笑顔を浮かべているはずなのに…気がついてしまった。

千尋さん、目、笑ってない。本気だ。

「…分からせてあげようか?」
「えっ、えっ…ちょ、待っ…」
「こんなとこまで追いかけて来て、今更駄目なんて言わせない」

耳元で低く冷たい声がする。それだけで背中がゾクゾクした。

「ち、千尋さん…エッチ、すんの…?」
「…怖い?」
「怖くないっ!けど、けど…」
「けど?」
「俺のこと…ちゃんと好き?」

聞きたい。そんな思いで千尋さんを見上げる。

千尋さんは今まで見たこともないような獰猛な顔をして、ふっと唇を歪めた。…かっ、かっこいい。

「…狂おしいほど愛してるよ、直人」
「俺も、俺も千尋さんが…んっ」

まただ。何も考えられなくなるようなキス。

抱きついていた両手を一纏めにしてベッドに縫いとめられた。彼の手が制服のボタンを外していくのを、目を閉じていても感じ取れる。

「学校からそのまま来たの?」
「ん、いや、さ、サボって、きた…」
「悪い子だね」
「ああっ!やっ、いたい…!」

胸の先端を強くひねられ、思わず悲鳴を上げた。千尋さんは楽しそうに笑っている。彼の細長い指の間から覗く乳首が、ぷっくりと芯を持ち始めていた。

「でも嬉しいよ。何よりも俺を優先してくれるなんて」
「ん…っ、あっ、やぁ…千尋さん、なんか、変な声出る…」
「可愛いから大丈夫」

嘘だ。全然可愛くない。

敏感になった乳首の先を指の腹で擦られ、掠れた嬌声が出る。こんな声出したくないのに。

何度も何度もしつこいくらいに弄くられて、俺はあっという間に音を上げた。

「はぁ、あぁぁ…千尋さ、そこばっか駄目…っ、俺、俺もう…」
「もう足りない?エッチだね直人は」
「んくっ、あ、あ、触って、触って、ここ、熱くておかしくなる…っ」

恥ずかしい。恥ずかしいけど、それよりも身体の疼きの方が勝る。ズボンの前をくつろげ、彼の手を下半身に導いた。反応し始めているモノを押し付ける。

「どう触るのがいい?」
「なんでもいい…千尋さんの、好きにして」

彼に触ってもらえるならどうだっていい。夢にまで見たんだ。こんな風に、抱かれるところを。

「んー…じゃあ、いきなりだけどちょっと失礼」

ズボンもパンツも全て取り去られてしまう。いきなりのことに息を詰め、視線を逸らした。

恥ずかしいって。あぁもう無理…!

しかし、さらなる羞恥が俺を襲う。

「えっ、あ、なに…ひあぁっ!うそぉ…!?やだ、千尋さん汚いからっあぁぁん!」

ペニスを激しく扱きながら、同時にお尻の穴を舐められた。わけが分かんなくなって逃げようと腰を引く。

嫌だ嫌だと泣く俺を押さえつけ、千尋さんは舌を挿入する。穴の縁に引っ掛けたり、中のヒダに絡めたり、好き勝手に蹂躙された。

「ひっあ、ぁっも、やだ、やだぁぁぁーっ!舐めないでっ舐めちゃやだっ!」
「にゅるにゅるになってきた。入るかな」
「ぐぁ…ッ」

ずぷり。指が挿入される。しかも一本じゃない。二本だ。苦しい。苦しい、のに。

「ひぐっぁぁ!あーっ!あーっ!ひやら、ひやらよぉ、やだやだ千尋さん見ないでぇぇぇ!」
「あ、そうだ。他の人といちゃいちゃして遊ぶとか言ってたけど…まさか本当にそんなことしてないよね?お尻許したりしてない?」
「しっ、してないぃ…っ!俺、はじめてだからぁ…あぁんッあっ、あっうう、やっ…!」
「初めてなのにこんな美味しそうに咥え込んでるの?ほら、聞こえるでしょ。俺の指が直人のお尻の穴犯してる音」

じゅぷっぐじゅっぐじゅっ!

「いっ、あ゛ぁぁーーーッ!も、わけわかんなぁ…ちんこ、あ゛ッ、せーし、出るぅ…っ!あぁぁっ!」

だらだら我慢汁を零す先端を掌で押しつぶされれば、為す術も無く。半狂乱になって叫ぶしかない。

全身を引き攣らせ、びゅくびゅくと勢い良く射精した。

「あ、あ…はぁ、はぁぁ…ひっう…」

頭の中が真っ白で、何も考えられない。肩で息をする。いつの間にか涎が垂れていた。

「ごめん。俺もあまり余裕があるわけじゃないんだ」
「んっ、あ!つめた!」

ローションがかけられる。何でそんなもの持ってるの、とか。このベッド、汚してもいいのかな…とか。ふとぼんやり考えた。

「入れていい?」

股の間に千尋さんが割り込んでくる。脚を大きく開かされて、恥ずかしいところが丸見えだ。

興奮しきった顔で見下ろされ、本能のまま頷いた。いい。もうなんでもいいからこの人のものになりたい。

「痛かったら俺の肩噛んだりとか、背中に爪立てたりとかしていいから」
「う、うん…あっ、あぁ…」

…はっきり言います。

「いっ、いたいぃ…!いあっ、んんっ、うぐ…!」

指や舌とは比べ物にならない程の質量。狭い穴を無理矢理割り開かれて涙が滲む。お尻、裂けそう。

ぐしゃぐしゃになった俺の表情を見て、千尋さんは何故か幸せそうに微笑んだ。

「はぁ…直人…苦しいの…?ごめんね」
「うぁぁっ、ん、だ、だいじょぶ…っだから、やめないでっ」
「やめる?」
「ひぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ぐじゅっとひどい音を立てて一気に貫かれた。あまりの衝撃で目の前がスパークする。

「やめるわけ、ないよ。やっと直人を抱けるのに」
「は、ぁ…はぁっ、あ、あ…はぁ、はぁ…っふ…」
「直人、可愛い。愛してる。今晩は寝かさないから」

こんな千尋さん、知らない。

「イき狂って。俺がいないと生きられない身体にしてあげる」
「ひ…っ!」

…もしかしたら俺は、とんでもない人に捕まったのではないだろうか。



「直人、学校行くだけなのに髪の毛なんかセットしなくていいでしょ?誰に見せるの?」
「もー…別にそんなんじゃないって。ただの身だしなみだし」
「シャツのボタンは一番上まで締めて。あとズボンも腰ではくの禁止」
「やだよ!そんな堅苦しいの!」
「…俺が直人と同い年で同じ学校で同じクラスだったらいいのに」

何を馬鹿なことを。

あれから千尋さんは少し子供っぽくなった気がする。以前のキラキラした大人な千尋さんも好きだけど、俺はこっちの千尋さんの方がもっと好き。

少々激しすぎる束縛も、愛ゆえだと思えば心地がいい。

「…っと、ここでいいよ。ありがと、送ってくれて」
「気をつけて」
「うん。千尋さんも仕事頑張れ!」
「直人」
「ん?」

車から降りようとしていたら、突然引き寄せられた。ちゅっと音を立てて唇がくっ付く。

「愛してるよ」

こ、こんな道端で何を考えてるんだ!誰かに見られたらどうすんの!

…でも。

「お、俺も…愛してる…」

以前と同じバードキスなのに、俺の心は満ち足りた気持ちでいっぱいだった。

雨降って地固まるって、こういうこと?まぁ俺馬鹿だし難しいことは分かんないし、とりあえず幸せだから、どーでもいいや。

end.




鳴さんへ

大人紳士(中身は腹黒、実は受けに対して独占欲強め)×チャラチャラした少しおバカな今時高校生というリクエストでした!

詳細にシチュエーションを指定してくださったので助かりました〜。
お気に召してくださればよいのですが…。いかがでしょう…?

リクエストありがとうございました!


[ topmokuji ]



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