▼ 守ってベイビー
爽やかな朝。清々しい空気。登校してきた俺の目に飛び込んだのは、そんな気分をぶち壊しにするような光景だった。
「あっ、田中くん来たよ!」
「田中くん!朝霧くんがまた暴れてる!」
「頼むから助けて!!彼を止めて!!」
クラスメイトたちが涙ながらに助けを乞う。
…またか。
お前が理由なく怒ることはない。それは分かっている。けど、朝から喧嘩するのはやめてくれ。
「カケル」
そんな思いで名前を呼べば、カケルはぴたりと動きを止めた。
*
「どうしてこんなことしたんだ」
「…だってあいつら、賢のこと馬鹿にした。許せない」
「はぁ…」
「痛い」
「自業自得」
誰もいない保健室。切れてしまったその唇の端を乱暴に拭う。全く、いつもいつも生傷ばかりつくってくるんだから。
「周りに迷惑をかけることはするな。俺のことで喧嘩するのもやめなさい。いつも言ってる」
「賢を守るのは俺の役目だ」
「俺は守られなきゃいけないほど弱くない」
「貧弱なのに?」
「うるさいな」
どうして貧弱地味男である俺が、学校一の荒くれ者である彼を甲斐甲斐しく世話しなければならないのか。
それは、俺がこの男の恋人だからである。
何故か一目惚れされた挙句に「田中ァ、俺と付き合えじゃなきゃぶっ殺す」と物騒な告白を受け、断ることができるはずもなく。
今や俺は、自他共に認める猛獣使いなのだ。
「いい?俺が地味なのも、大して頭が良くないのも、顔がイケメンじゃないのも事実なの」
「嘘だ」
「嘘でこんな悲しいこと言うか!」
カケルは切れ長の瞳を細め、こちらをじっと見つめた。キリッとした眉が男らしい。悔しいが俺より何倍もイケメンだ。
「賢はかっこいいし可愛い」
「そりゃどーも…」
そんなこと言うのはお前くらいしかいない。開きかけた口が突然塞がれる。
おい。朝から盛るな。
「んん」
「…っ」
「ふぁ…」
熱い舌を差し込まれ、反射的にそれを甘噛みしてしまった。途端に声を漏らすカケルに、カチリとスイッチが入ったような感覚がする。
あぁ、まずい。流される。いつもいつもこうだ。
「賢…したい」
「…駄目。ちゃんと授業に出なきゃ。ただでさえカケルはサボり気味なんだから」
「嫌だ。賢のチンポ欲しい」
「あのなぁ…あっ、こら!」
制服の上から股間を撫でられ、必死で抵抗した。しかし悲しいかな、彼の方が圧倒的に力が強いのである。
「カケル!」
「午後の授業はちゃんと出る」
「そういう問題じゃない!いてっ」
あっという間にベッドに押し倒されてしまった。学ランを脱ぎながらのしかかってくるカケル。
「ん、ふ…っ賢、頼む…」
「…」
甘く甘く口付けられながらおねだりされ、俺はあっさりと陥落した。なんだかんだで俺もこの男に夢中なのだ。
「あ…っ、賢、賢…」
「もー…少しは我慢しろよ…」
シャツのボタンを外しながら、ぺろりと首筋に舌を這わせる。カケルの口からは悩ましげな吐息が漏れた。
「我慢と、んっ…生意気な野郎は、嫌いだ…」
「なんだそれ」
「ああっ、そこっ」
露出した乳首に唇を押し当て、軽く挟み込む。すぐに固く尖り始める左右のそれ。ピンと主張していてエロい。
口の間に挟んだまま乳首を引っ張ると、カケルの腕がぷるぷる震えた。力が抜けそうなのだろう。
「ふうぅ…はぁ、ぁ…」
「ん、」
「うんん!あっ!」
じゅっと音を立てて吸うと、案の定へろへろになって覆いかぶさって来た。慌てて抱きとめる。
「大丈夫?」
「駄目…」
気持ちよすぎる、と蕩けた表情。普段のクールで凛々しい姿とは大違い。でも俺はカケルのこのギャップが結構好きだったりする。
啄ばむように口付けながら、手を下半身へと伸ばす。
ぴったりと密着しているおかげで、互いの股間が既に反応を見せていることは分かっていた。だが俺の目的はチンコではなく、カケルの尻の穴だ。
「カケル、ズボン脱いで」
時間にそれほど余裕があるわけでもない。じっくり解してやれないのは残念だが、早く彼の隠された部分を見たいという気持ちもあった。
「ん゛っ、あ!!」
「痛い?」
「い、や…気持ちいい…」
できるだけ傷つけないようにゆっくりと指を挿入する。軽く唾液で濡らしたため、それほど抵抗はない。
「んぁ…、賢の指、イイ」
「チンポとどっちがいい?」
「あぁっ、チンポ、チンポのがイイっ!!んっんん!はぁぁ…ッ」
恍惚とした表情に興奮を煽られ、少し乱暴なほど指をピストンさせた。ぐじゅぐじゅに溶けた穴は、二本、三本と本数を増やしても簡単にそれを咥え込む。
「チンポがイイなら指はもういらないよな」
「だめっだめだめ抜くなぁぁっ、あぁっあっあっ、チンポ、欲しい…っ!!」
「わがまま言うな。どっちかにしろ」
ぱしん、と軽く尻を叩けば、中に埋め込んだ指がギチギチに締め付けられた。
ここにいきなり突っ込んだらめちゃくちゃ気持ちいいだろうな、とぼんやり思う。
「あっ、馬鹿!」
快感に浸っていたカケルが、もう耐えられないとばかりに俺のズボンを脱がす。そしてそのままビンビンに勃起したそれを、自身の尻にあてがおうとした。慌てて指を引き抜く。
「こら!」
「だって、もう欲しい…いいだろ?賢のもこんな硬くなってるし」
「もー…ゴムしてないからちょっと待って。退いて」
「嫌だ」
「はい?…うわっ!ちょっと!」
にゅくり、とチンコが生暖かい感触に包まれていく。
「あ…っああ、賢のチンポぉ…きもち…んん」
「う、く…っもう、いい加減にしろよ…!」
ふーふーと歯の隙間から吐息が漏れた。気を抜けば情けない声が出そうだったからだ。カケルの中は生き物のように細かくうねり、敏感な部分を刺激してくる。
「イイっ、あ、ビクビクしてる…っあぁぁ!んっ、はぁ…」
腰をくねらせ真っ赤な顔で快感を貪る姿を、俺以外に誰が知っているだろう。
拳を振り上げ蹴りを繰り出し、傷をつくって喧嘩ばかりしている普段のカケルとは似てもにつかない。
甘く儚く蕩けた瞳は、可愛いとさえ思えた。
「っ、カケル…」
「んっ」
俺の上で淫らに揺れる彼。その様子を見上げながら両腕を広げると、素直にもたれかかってきた。角度が変わって締め付けが増すが、まぁそれはいい。
「ひぐぅぅぅ!あぁぁっ、そこぉ、ぐりぐりして…っ!」
「すぐイくから駄目」
「いやだぁぁなんでぇっ…んん!!」
全く、どんだけ淫乱なんだよ。いつも凛としていてかっこいいカケルはどこに行った。
あまりにもアンアンよがるので、声を抑えるためにキスで口を塞ぐ。ぬるぬるべちゃべちゃ涎が垂れるのも構わず口内を犯した。
「んんん!ん、んぁっふんん…んんんぅ」
…いじめたい。もっと彼の裏の顔が見たい。
小刻みに震え、激しい口づけを嬉しそうに貪るカケル。なんだか加虐心が刺激されて、舌を動かした。
「いぁっ!?け、賢っ、いたい!」
「んん、血、の味だ」
「ふぁぁ…!だめ…っ」
今朝の喧嘩のせいで切れてしまっていた唇の端。血の滲むその傷口を力任せに舐め回す。
「あっあっ、だめ!だめ!あぁぁぁっ!」
びゅく、とカケルのチンコが精液を噴き出した。思わず目を丸くする。
「ふうん…痛いのが気持ちいいんだ」
「ちがっ、これは、あぁっやぁぁ!」
「違わない。この淫乱」
「っうぁぁぁ…!」
「ほらまた締まった…っ出す、あぁっ、出る出る…!」
「ひぐぅぅぅ!」
熱い液体が尿道を駆け抜け、勢い良く飛び出していった。カケルの全身が引き攣る。…結局、中出しだ。
「あ、はぁ…カケル、ごめんな、中出し…」
「んっ、ふ…ぁ、賢、賢のザーメンなら、いい…」
「何言って…いっだだだだだだ!いだい!!!」
ぎゅうううっと痛いくらいに抱きしめられて、俺は悲鳴を上げた。やはりこの男は力が強い。
仕返しとばかりにこちらも腕を回したが、カケルはびくともしなかった。悲しかった。
*
「あー…気持ちよかった」
「そうですか」
「賢のチンポが俺の中でびくびくしてるのがやばかった」
「あぁそう…」
すっきりツヤツヤの顔で教室に戻る俺とカケル。何があったかは一目瞭然だ。クラスメイトたちも察するだろう。
はぁ、なんか俺、毎日こんなんばっか。
「賢」
「ん?」
「お前は俺が守るからな。だからずっとそばに居てくれ」
「唐突に何を…」
「ただなんとなく言いたくなっただけ」
フッとクールに笑いながら、襟首を掴んでくる。そして。
「!」
「可愛い、賢」
軽く掠めるように口を奪われた。きょとんとする俺をカケルは抱きしめる。
「…もう喧嘩すんなよ」
「時と場合による」
どうやら俺の苦労の日々は、まだまだ続くようだ。
end.
*
noraさんへ
平凡×不良の甘エロ、クールで男らしい不良が攻めと二人の時は可愛い甘えたなニャンコに…というリクエストでしたが如何でしたでしょうか…。
平凡攻めいいですよね!気に入ってくださると嬉しいです。
リクエストありがとうございました!