▼ こっち向けよ
顔は可愛い系(だと思っているしよく言われる)。歌もうまい。踊りだってできる。身長は平均より少し低いが、そんなことはまぁどうだっていい。
俺は今をときめくアイドルで、テレビに雑誌に大忙し。女の子にだってモテモテだ。文字通り引っ張りだこ。だけどそんな俺にも問題はある。…問題っていうか、悩み?
「ひ、う…っ、あ、もう…やめ、やめてくださいっ」
「いやだね。お前今日ファンに向かって愛してるよとかほざいてたよな。俺ちゃんとテレビ見てたんだけど」
「葉山さんだって言ってるでしょ…あっ、あっん!」
「俺の話はしてない。今お前の話してんの」
くっそ!アンタこそ投げキッスとかしてたくせに!自分は良いのに俺は駄目なのかよ!どんだけ自己中なんだよ!
「俺にも言えよ。愛してるって」
「なっ、なんでそんなこと…や、やだ、絶対や…っんぁぁ!」
ぐっと腰を押し込まれ、衝撃で背中が反る。ちんこなんかに反応してしまうこの身体が憎い。
「うう…」
それもこれもぜーんぶ!ぜーんぶこいつのせいだ!
同じ事務所の先輩であるこの男には、下積み時代は本当にお世話になった。よく面倒を見てもらったし、優しくてかっこよくて、俺も彼みたいなスターになりたいと思って頑張ってきた。
な、の、に!!
「深水ぃ…最近調子いいからって浮ついてんなよ」
「んぐっ、あっあっあっ…あぁっ!」
俺がデビューして人気が出始めると、葉山さんは豹変した。そして何故かこんなひどい嫌がらせをするようになったのである。
「ダンス一つ満足に踊れなかったお前に稽古をつけてやったのは誰?レッスン帰りに飯を奢ってやったのは誰?」
「…っくそ…やっ、やだ、もうやだ…!」
「ぜぇーんぶ俺だろ?葉山さん葉山さんって懐いてきてたじゃねーか」
それはアンタが善人の仮面を被ってたからだろ!こんな人間だって知ってたら俺だって近づかなかったわ!
「お前が尻尾振ってついてくんの見ながら、いつこうやって俺のものにしてやろうか…楽しみで仕方なかったよ」
「あ、悪趣味…俺はアンタのもんじゃありませんから!」
「この期に及んでまだ逃げられるとか思ってんの?チヤホヤされて頭が平和ボケしちゃったのかなぁ深水は」
すり、と大きな手のひらで頬を撫でられた。言葉とは裏腹な優しい手付きがゾクゾクする。
「んっ、あ…っあ、あ、葉山さ…」
「やらしー顔。気持ちいい?」
「い、いくない…っ」
「じゃあなんで締め付けてるわけ?さっきからきゅんきゅんしてんだけど」
うるさい。うるさいうるさいうるさい。
こんな風に無理矢理犯されて、いいわけねーだろ!
屈辱に唇を噛み締める俺を見て、葉山さんは少し眉をひそめた。
「こら、アイドルの身体は商売道具なんだから傷つけんな」
「なら早くやめ…」
「噛むならこっち噛んどけ」
葉山さんが帽子を口に押し込んでくる。それ俺が変装用にかぶってきたやつなんですけど。アンタのもんじゃないんすけど。
「んっんっんっンン!う、んん!」
声を聞かれたくはないので、仕方なくツバの部分をぎゅっと食いしばった。あーあ…もうこの帽子捨てないと…。
「ふ、我慢しなくていーのに…苦しくねぇ?」
「んんっ、んっぐ、ん!んんん…ッ」
アンタが好き勝手に人の尻の中掻き混ぜるからだろうが!
大きく脚を開かされ、奥の奥までちんこをずっぷりはめ込まれる。敏感になった腸壁を張り出したカリでゴリゴリと擦られ、俺は生理的な涙を零した。
「あー…いい…っ、もっと搾り取れよ」
「ふ、んんっんっんっ、ふぐっ」
「…邪魔だなこれ」
自分から差し出したくせに、噛んでいた帽子を無理矢理奪い取る。案の定それはべちょべちょになっていた。くそ。絶対新しい帽子買わせてやる。
「んっ…あ、やだ、やめ…ひっぁぁぁぁ!?」
ぐちゅっぐちゅっちゅぷっずにゅううっ
「あっあぁぁっんっあっはぁぁ!やぁっ!いやだぁぁっ!んっあぁ!」
「はは、すげ」
いきなり激しくなった突き上げ。口を覆うものもなく、馬鹿みたいな嬌声が抑えられない。
いやだ。いやだ。こんな声、聞かれたくないのに。
葉山さんはぼたぼたと汗を垂らしながら、俺に覆いかぶさってきた。深水、と色っぽい声が耳元で響く。
…くそ。くそ、くそ…っ。
なんなんだよ。なんでこの人…っ!
「はやまさ、んっんっんふぁぁっ、はやまさぁぁっんっあ、やっ、んぐっはぁ、はぁぁ…!」
「…っなんだよ、そんな顔してまだ文句あんの」
なんでこの人、そんな、俺のこと好きで仕方ないって、目で。声で。
「あぁぁっすきっ、はやまさ、すきっぃあぁっん!あっあっあっ…やぁっおれ、はやまさんが…すきぃ…っ」
ぴたりと動きが止まった。葉山さんは目を見開き、未だ中に埋められたままのモノに反応する俺を、意味が分からないといった表情で見下ろす。
「…はぁ?」
「んんっあ、だって、おれ、ずっと憧れてて、あっあううっ、アンタ、ほんっと最悪だけど、でも、でも…っ」
歌も踊りももう十分上手いのに、人一倍練習するところとか。へこんでる後輩に優しくアドバイスしてあげるとことか。ファンを誰よりも大事にしてるとことか。
そういうのを、知ってしまった、ら。
「すっげぇ悔しいけど、っ俺、そういうはやまさんが…あぁぁっん!」
再びピストンが開始され、それ以上ちゃんと言葉を紡ぐことはできなかった。葉山さんが喉の奥でくくっと笑う。
「深水、俺のこと好きなんだ。ふうん?へぇ?」
「あぁっちょっ、まって、まってくださ、おれまだ…っ」
「止まんねぇよ。そんな可愛いこと言われたら」
「かわいい、って、あ、やだ、痕つけないでぇぇっんぁっ」
「あぁ、明日撮影だっけ?じゃあ見えないとこにしといてやるよ」
そういう問題ではない。
「お前は俺のものだからな。フラフラしてたら殺すぞ」
「うっあぁっあっん、ふ、フラフラなんか…」
「ずっと尻尾振って俺の後ついてくりゃいいんだよ。可愛がってやるから」
「んん!?んっんんん!んううううっ」
噛みつくみたいに口内を犯され、ビクビクと腰が痙攣した。嫌で嫌で仕方なかったはずなのに、独占欲の塊みたいな彼のキスが気持ち良くてたまらない。
「んっんん…っん、んうっ、んん――ッ!」
「…くっ、あ」
耐え切れずに絶頂を迎えた俺の中に、葉山さんも低く唸って射精する。ぬとぬとになった唇が離れ、ようやく解放されるかと思いきや。
「好きじゃなくて、愛してるだろ?」
「へ…」
「ちゃんと言えるまで離してやらねぇ」
…な、なに言ってんのこの人。俺明日雑誌の撮影って言ったじゃん。無理だって。本当に無理無理無理無…
「特別に稽古延長だ。嬉しいだろ?」
「ひ…っ」
にやりと悪い笑みを浮かべる葉山さんを見て、俺はやっぱり判断を誤ったんだと後悔した。あと見えないからと言って太ももの内側にめっちゃキスマークつけられた。気持ち悪かった。