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▼ 秘密の王子様A

クラスメイトの鳴瀬は、今時珍しいくらい硬派で寡黙な日本男児だ。背が高くてキリッとした男らしい顔をしている。

なよっとした自分の顔つきとは違う。女の子たちは俺みたいな中性的な男が好きみたいだけど、全然分かってない。

鳴瀬の方がずっとずーっとかっこいい。好き。ちょー好き。

「八名川、どうしたんだ」

鳴瀬は剣道部だ。放課後暑い中稽古場で練習を続ける彼の姿を眺めていると、向こうが俺に気づいてくれた。

「んーん、別に。ただ鳴瀬に会いたかっただけ」
「…」
「鳴瀬ちょーかっこいい。剣道着似合う。イケメン」
「何言ってんだ」

イケメンはお前だろ、と溜息。もう!鳴瀬も全然分かってない!この俺が惚れてるんだからもっと自信持ってよ!

首筋に伝う汗がちょっとエロい。あ、なんかムラムラしてきちゃった。セックスしたいなー襲っちゃおうかなー。

俺のヨコシマな考えなんて露ほども知らないであろう鳴瀬は、ふと思いついたかのようにこう言った。

「一緒に帰るか?」
「えっ、いいの」
「今日の練習はもう終わった。少し待ってくれれば着替えてくる」
「待つ!ちょー待ってる!何時間でも待つ!」
「落ち着け」

んふふ。落ち着いてなんていられないよ。だってこれからイイことしちゃうんだもんね。



着替え終わってロッカー室から出てきた鳴瀬を再びそこに押し込む。そしてその膝に無理矢理跨り、首筋にキスをした。

「八名川…っ、やめろって」
「んー?いやだ」
「汚いから…」

汚くなんてない。そのまま舌を這わせる。汗の味と匂いにどうしようもなく興奮した。

「…っ」
「首弱いの?かわいーね」
「うるさい」
「鳴瀬ほんとかっこいい。好き」
「…」
「鳴瀬は?鳴瀬も俺のこと好きだよね?」

にこにこ笑って顔を近づける。この人はあんまり好きとかかわいいとか言ってくれない。だから俺はいつもこうして迫るしかないのだ。

鳴瀬は眉をしかめてそっぽを向いてしまった。照れてんのかな。かわい。

「そういうことは…こう、大事な折々にとっておくべき言葉だろ」
「硬派なじいちゃんみたいなこと言ってたら、俺別の人のとこ行っちゃうかもよ?」
「…」

そんなことありえないけどね。鳴瀬以外に興味ないし。

「それは駄目だ」
「えぇ?」
「八名川が他の人のところに行ったら…困る」
「なんで?俺のことが好きだから?」

こくり。焦りを浮かべた表情で頷く鳴瀬。もうそれだけで溢れる笑みを抑えられない。

早く抱いて欲しくなって、その胸にすり寄った。

「鳴瀬。鳴瀬。嬉しい。俺のこと好きになってくれて幸せ」
「…」
「鳴瀬のこと見ると、心臓がドキドキしてきゅんってして、もうどうしようもなくなっちゃう」
「…俺のことが好きだから?」
「そう。好き好きだーい好…んんっ」

真上からキスが降ってくる。鳴瀬のキスはちょっと荒っぽくて、本人と同じく男らしい。だから俺は鳴瀬のキスが大好き。

「ふ、んぁ…っんん、はぁ…」

熱い舌で口内を掻き回され、すぐに思考がとろけてしまう。

「なるせぇ…」

互いの唇を銀色の糸が伝った。ふにゃふにゃになった声と顔でもっともっとと求めると、鳴瀬が生唾を飲み込んだのが分かる。

「だから、お前はその顔をどうにかしろ」
「だって、鳴瀬が触るとこぜんぶきもちい…」

本当だよ。俺は馬鹿で顔だけの男だけど、鳴瀬に対する気持ちだけは本気。

今まで女の子に不自由なんてしたことなかったし、セックスだって数え切れないほどした。なのにそんな俺がわざわざ男にお尻の穴を差し出しちゃってるんだよ。

「あぁっん、ふ、はぁ…ッなるせ、なるせ」
「…」
「も、パンツ脱がして…あ、あ、おね、おねがい…」

言われた通り、無言のまま俺の下半身を丸裸にしてくれる。ボクサーパンツが足から抜き取られるとき、ぬらぬらした透明な液が染み付いているのが見えた。

「触って、鳴瀬」
「ん」
「あ…っ、ん」
「…」
「あふっ、ひ、やぁっあっあっ、きもち…!」

鳴瀬はセックスしてるときも無口だ。対して俺はものすごく喘ぐ。その方が興奮するっていうのもあるけど、

「あーっ、あっ、なるせ、なるせぇっ…もっ、んんんん!」

あまりにうるさいとこうやってキスで塞がれるのだ。キスが大好きな俺は、そうして欲しくてわざと大声を出す。

「ん゛っ、んぐ!んんーッんん、んっんっ、ぷぁ、は、んんんぅ!」

ペニスをぐちゅぐちゅに扱かれ、勝手に浮き上がる腰を必死に抑え込む。脚を鳴瀬の身体に巻きつけてしがみ付いた。

「んふぅっ、んんーっ!んんっんー!んっぁ、は、んぶっ、んっんんん、ん…ッ!」

アナルにゆっくりと指を差し込まれる。少しゴツゴツした彼の指が壁を擦っていく感覚に涙が滲んだ。もちろん快感のせいだ。

何度も何度も身体を重ねたおかげで、弱いところは全て知られてしまっている。

「ん゛ーーーーーッ!んっ!んっんっ、んっん゛ん゛ん゛んーーっ!!」

無遠慮に前立腺を刺激され、目の前が真っ白になった。ガクガクと全身が震える。気がつけば射精していた。

「ん、はぁ…っあ、あぁ…も、ひどいよ、なるせ…一緒に…イきたかったのに」
「悪い」

お前があまりにエロい顔をするから、夢中になった。そう囁かれて思わず顔が熱くなる。

「…照れてるのか」
「鳴瀬のせいだよっ!どうしてそう不意打ちで俺を喜ばせるの!」

夢中になった、だなんて。普段俺のことなんてどーでもいい、みたいな顔してるくせに。

たまに見せる男の表情。この人を興奮させているのが俺であるという事実が、とてつもなく嬉しい。

「もー…鳴瀬まじでずるい…天然たらし…女の子にそんなこと言っちゃ駄目だよ」
「言うか。お前だけだ」
「ほら!そういうの!」

…まぁ、俺だけに言うなら、許すけど…。

鳴瀬は珍しくクスクスと笑い、頬にキスしてくれた。

「心配しなくても、俺なんかを選ぶ物好きはお前くらいしかいない」
「物好きじゃないし。鳴瀬イケメンだし」
「俺が好きなのは八名川だから」
「ほんと?」
「あぁ。こんな風にになるくらいにはな」
「んんっ!あ、ちょ、おっきいって…」

ぐぷぷっ

いきなり鳴瀬のモノが入ってくる。張り出したカリが気持ちいいところに当たって、俺はまた甲高い嬌声を上げた。

「あっ…お、俺で、こんな…おっきくなったのっ?」
「そう」
「んふふっ、あ、ァ、奥…っふかいぃ!」

いつもは届かない場所までずっぷりハメ込まれる。挿入に慣れようと呼吸を整えているのに、鳴瀬はそれを待たず俺の腰を持って小刻みに揺すってきた。

「まっ、まってぇ、まだ、俺…っあっあっあっ!は、んっ、ふ…ぅっ!!」
「待たない。誘ったのはお前だろ」
「そ、だけど…やぁっ!それやめ…っあぁぁ!ひっあ、ああんッ」

円を描くように腸内を犯され、頭を振って抵抗する。やばい。感じすぎて辛い。

ぐちょぐちょという水音が耳に響き、それがまた興奮材料になった。お互いに口から熱い息を漏らす。

「なるせぇっ、なるせっ、あッはぁぁ…んっんっひぁぁっあっんん、ふ、うぁぁぁっ」
「声抑えろって」
「むりぃぃっがまんできな…ひぐぅっ!あんっんー!ん、ぁあああ!」

きゅうっとつま先を丸めて宙に投げ出した。乱暴なようで的確にイイトコロを攻めてくる抱き方。もう翻弄されっ放しだ。

快楽に支配された視界で鳴瀬の顔を見つめると、切れ長の瞳がこちらを見つめ返してくれる。

「っ、締めるな」
「だってぇっ!あ、あ、なるせ、なるせ、かっこいい…っ、すきぃ、すき、ほんとすきだよ…ッう、んん!」
「もうお前黙ってろ」

再び深い深い口づけ。漏らした声を丸ごと奪われ食べられる。ぺちゃぺちゃと舌を絡める音がした。

「んっ、んふぅ、ぁ、ん、な…んん!なるせ、ん゛っも、だめ、いく、んんん!」

唇を貪り合いながら、イきそうな身体を奮い立たせる。穴の中が自分の意思とは無関係に収縮を始めた。

「んっあぁ!あっ、ん゛ん゛っ、ふぁ、は、だめぇ、だめ、んぁぁぁっ!」
「八名川…」
「ひやぁぁぁぁぁッ、いくいくいくいく…っ!あ゛ーーーーっ!」
「…っ」

ぎゅーっと鳴瀬の頭を掻き抱き、二度目の絶頂を迎えた。あり得ないほど締め付けを増すアナルへ、熱い液体が広がっていく。

「なるせぇ…」

き、気持ちよかった…。

今だ余韻から抜け出せず、甘えるように擦り寄る。鳴瀬は涙やら鼻水やら涎やらでぐっちゃぐちゃの俺を見て、ぷっと笑った。

「すごい顔。王子が台無しだ」
「…幻滅する?」
「別に」

可愛いと思うけど。

また不意打ちでそんなことを囁かれる。出た、天然たらし!

「鳴瀬は怖い」
「何が」
「ふらふらしないでね。俺だけ見ててね。俺まじでちょーヤキモチ妬きだから」

たくましい胸板に額を擦り付けていると、顎に指がかけられた。くいっと上を向かされて、軽いキス。

「俺のこと縛り付けたいなら、もっと好きって言えよ、史郎」
「…っ!」

あれ。鳴瀬、こんなキャラだっけ。っていうかていうか名前…!

ぶしゅうっと茹で蛸のように赤くなった俺を抱きしめ、鳴瀬はおかしそうに声をあげた。


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