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▼ 愛して、囲って、閉じ込めるC

隆幸は最近忙しい。いつもより帰ってくる時間が遅いし、帰ってきても食事と入浴のあと、軽く勉強をしてすぐに寝てしまう。

リビングでぼーっと寝転がったまま、つけっぱなしのテレビを眺めていた。隆幸、まだ帰ってこないのかな。もうすぐ19時だ。いつもならとっくに帰ってきてるのに。

「あら、隆くん…はいはい」

母さんが電話で話している声を聞いて、体がぴくりと反応した。

「母さん、隆幸、帰ってくるの」
「そうそう。もうすぐ帰り着くみたい」
「…俺、ちょっと、見てきてもいいかな」
「えっ、幸ちゃん!?」

母さんが驚くのも無理はないけれど、隆幸が帰ってくると聞いていてもたってもられなかった。

もともと外に出ることに抵抗はあんまりない。なぜ引きこもっているのかと言われても、ただなんとなく気がつけばこうなってしまっていただけだから。別に玄関の先に出るくらい、なんともない。

軽くサンダルをつっかけて玄関を開ける。もわっとした暑苦しい空気が肌にまとわりついてきた。

「たかゆき…」

早く、早く帰ってきてよ。待ってるよ。隆幸がどこにも行かないでって言ったから、ちゃんと言いつけ通りずっと家にいる。だから早く俺のところに戻ってきて、いつもみたいに抱きしめて。

じっと家の前にしゃがみこんでいると、どこからか声が聞こえてくる。俺が間違えるはずがない。この声は隆幸だ。

「たかゆ…」

駆け出した俺の目に飛び込んでくる、二人の男女。

「じゃあ…俺、家こっちなんで」
「うん。じゃあまた明日ね。いつもありがとう」
「こちらこそ。またよろしくお願いします」

…え?

「…」

だれ。隆幸、その女の人、だれ。どうしてそんな風に優しく笑いかけてるの。

「兄さん…!?」

女性と別れた隆幸が、その場に固まってしまった俺の姿を捉えた。驚きで瞳が丸く開かれている。

隆幸。隆幸。俺には隆幸しかいないのに、隆幸はそうやって俺の知らないところで笑うんだ。

「い、やだ」
「え?っていうかどうして外に」
「やだ、やだやだやだ!やだよぉ…っ!」

ぼろぼろと勝手に涙が溢れてきた。隆幸、おねがい、俺を一人にしないで。俺にはお前しかいないからだから他の人なんか見ないでずっと俺だけを愛して。

隆幸が慌てて駆け寄ってきて、泣きじゃくる俺を強く強く抱きしめた。そのシャツに縋り付く。隆幸、隆幸、隆幸。

「どうしたの、兄さん」
「俺のこと、もういらなくなったのか?」
「…なんで?」
「だって、さっき女の人と…」

俺の好きな優しい笑顔を向けて、またねって手を振ってた。俺が知らない隆幸の姿を、あの人が知ってるんだ。そう思うと身を切られたかのように痛かった。

「さっきの人は、ただの知り合いだよ」
「でも…」
「心配しなくても、俺が愛しているのは兄さんだけ。まだ分からない?」
「…」

だって、俺は家の中にいるときのお前しか知らないんだ。お前が外で築き上げてきた世界の中に、俺は入れない。

「分からせてあげようか?」
「たっ…たかゆき、何を…」
「帰ろう。兄さんを誰にも見せたくない」

ふわりと体が持ち上がる。隆幸が俺を抱き上げたまま、家に向かって歩き出した。

「…俺が女の人と話してて嫌だったの?」
「うん。すごく嫌だった」
「それはね、嫉妬っていうんだ」
「しっと?」
「好きな人にしか抱かない、特別な感情だよ」
「ふうん…」
「ねぇ兄さん」

嫉妬なんてする暇もないくらい、愛してあげる。

彼の瞳の奥に熱が灯っているのが見えて、ゾクリと背筋が粟立った。



「あぁぁっやぁっ!も、やだぁ、たかゆきいぃぃっ、いきたいっいかせてぇっ」
「兄さんは俺にどれだけ愛されてるか、分からないんでしょう?俺は今少し怒ってるんだ」
「わかったぁっ、わかったからぁぁっ、ごめんなさ、あやまるから、おねが、いれてよお…ッ」

いつものように気持ちいいことをしてくれるのかと思いきや、隆幸の手は俺が絶頂しそうになるたびに動きを止める。焦らされて焦らされて一度も精を吐き出せない身体は、もう限界を迎えていた。

完全に勃ち上がった性器からは、とろとろとはしたない液が漏れている。お尻の穴だってひくひくうずいて仕方ない。

はやく。はやくはやくほしい。隆幸のそれでいっぱい中を突いて、ぐちゅぐちゅになるまで溶かして、壊れたって孕んだっていいから中出しされたい。

「本当に?イきたいからって嘘ついてない?」
「ついてないっ!ついてないよっ!あぁぁぁッん」

軽く脇腹を撫でられただけなのに、シーツをかき乱してのたうち回る俺。隆幸はふふふと楽しそうに笑った。

「…すごい反応だね」
「ひ、ぃ、あっあっ、いれて、いれてぇ…たかゆき、ほしい、おねが、ちょうだい…ッ」
「誰の何が欲しいの?どこに何を入れて欲しいの?言わないと分からないよ?」
「あ、ぁ…隆幸の、隆幸の、おちんちんを…おれのおしりに、入れてくださいぃぃ!」
「これ?」

隆幸が自分のモノを取り出し、目の前でゆっくりと扱きあげる。無意識のうちに涎が垂れて、だらだらと顎に伝った。

「あ、あ、それ、で、おれのナカ、ぐちゅぐちゅして」

悲鳴のような声で訴えれば、息を飲む気配がした。その身体が覆い被さってきて、期待で胸が震える。

「…本当、可愛すぎておかしくなりそうだよ」

ぐちゅっ!!!!

「ひ…っいぁぁぁぁぁぁぁ!」

一気に再奥まで貫かれた。チカチカと瞼の裏で星が飛ぶ。ありえないほど身体が痙攣して、甲高い声が喉から吐き出された。

びゅるびゅると勢い良く白濁が散っていく。溜まった熱をようやく放出することができた悦びに、涙が零れた。

「…ッ兄さん、イったんだね」

ぶじゅっじゅっじゅっ

「んぁっあっあっひっはぁあっん!」
「こんなに濃い精液出して…はぁ、最近、セックスしてなかったからかな?」
「だって、んっんっ、たかゆきが、あぁぁっ、いそがしくてっ、かまってくれな…ひいいぃっ」

ぐちゅっずぶっすぶっ

「ごめんね、っ、でも、自慰の仕方…教えたでしょ?しなかった、のっ?」
「してな…あぁぁッたかっ、ゆき、きもちっきもちいっもっと、んっんっんっんん!」

一人でするよりも、隆幸とした方が何倍も気持ちいい。いやもう比べることすら間違っている。

あぁ、もっと。もっともっともっと愛されたい。気持ちいい。

突かれるたびに大きくしなる背中。隆幸のモノを締め付ける内壁。

「…ッは、ぁ…愛してるよ、幸広…俺にとって、幸広以外の人間なんて…どうだっていいんだ」
「んっふぁあぁっ、ん、ほんとっほんとにっ」
「幸広も…俺だけにして?他人と喋ったり…触らせたりしたら…絶対に一生許さない」

そんなこと言われなくても当たり前だ。他人なんかどうでもいい。俺の世界は隆幸だけで、隆幸の世界も俺だけだ。例え両親でも間に入ることは許さない。二人だけでいい。この人は俺のものなのだから。

「はぁあっん!たか、たかゆき、ん、んん、ちゅ、はぁ」

先程吐き出した精液が穴に垂れ、ぶじゅぶじゅと品のない音がした。それがまた快感を増幅させる。狂ったように震えながら、隆幸の唇に噛り付いた。

隆幸、隆幸。お前を誰にも奪われたくない。俺はお前と生きていくことしかできないんだよ。愛してる。愛してる愛してる愛してる。

舌をぐちゃぐちゃに絡め合わせ、互いの唾液を交換する。隆幸の体液が自分の中に取り込まれていると思うと、死にそうなほど気持ちが良かった。

「あぁ、まって、も、イきそう…」
「ひぃやぁぁぁっ!あ、ぁっ、ちょうだい…っ、せーえき、ちょおだいっ!」
「…赤ちゃん、できてもいいの?」
「いいっ、いいよぉっ、おれに、たねつけしてっ、はらませて、びゅくびゅく、あついのかけてえぇぇぇっ!」
「っふふ、いい子だね」

中出しして欲しいときにはこう言うんだよ、と覚えこまされた淫語。いやらしいと分かっていながらも、もう条件反射のように身体に染み付いて消えない。

「…いいよ。俺の子、生んで」

びゅるっびゅるびゅるびゅくっ

「あぁぁぁぁッ!あかちゃん、できるううううっ!」

穴の中にぶわりと熱い液体が広がっていく感覚。腰が勝手に浮いて、隆幸の性器をさらに奥まで咥えようと尻を押し付けた。

隆幸の、精液、が。俺の中で。ぁ、ア、熱い。嬉しい。幸せ。

快感のあまり涙を零す俺を抱きしめ、隆幸が低く低く囁く。

「もう外に出ちゃ、駄目だからね?」
「ぁ、あ、は…い…」
「兄さんの姿が他人に見られるなんて耐えられない。心配しなくても俺の全ては兄さんのものなんだから、ちゃんと家で待つこと」
「ん、ん、たかゆき、俺の…」
「そう。俺は兄さんの。俺の命だって兄さんにあげる」

分かったよ。もう嫉妬なんてしない。する暇なんてないほど、お前は俺を愛してくれる。

俺の隆幸。愛しい人。生涯お前を離しはしない。他の誰にも渡さない。これから先死ぬまで一緒にいたい。

「…嬉しい」

いや、死ぬまでじゃない。死ぬときだって二人一緒だ。


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