▼ 愛して、囲って、閉じ込めるB
小さい頃から出来の悪い子供だった。特に誰かと話すのが苦手で、物心つくときには当たり前のように周りから蔑まれる存在となっていた。
変、気持ち悪い、馬鹿。そんな言葉を何度浴びせかけられたか分からない。気がつけば俺は自分の家から出なくなっていた。何がきっかけだったのか、いつからなのか、具体的なことははっきり覚えていない。
単純に憧れていたんだと思う。俺にはできないことを平然とやってのけて、たくさんの人に好かれている弟が自慢だった。自分はなんて恵まれているんだろう、とさえ思った。彼と血がつながっていることが誇りだった。
だから笑って言ったんだ。
「俺の弟に生まれてきてくれて、ありがとう」
そうしたら。
「は、あ、やぁぁっ」
「兄さん、兄さん、兄さん…」
「たかゆきぃぃぃっ、あぁぁぁっ、こわいっ、こわいよぉぉぉ!」
じゅぷじゅぷと性器を上下に擦られ、勝手に腰が浮く。初めて味わう感覚に恐怖を覚え、次々に涙が溢れた。
…どうして、隆幸、こんなこと。
ありがとうと言った次の瞬間、隆幸は俺の身体を突如としてベッドに押し倒し、何故か排泄器官であるそれを弄り始めたのだ。
驚くどころの話ではない。しかも彼の指が触れる度、訳の分からない液体が滲み出て来くる。病気かもしれない。尿以外の水分が出るなんて、ありえないじゃないか。
「やっぱり、自分でしたことないんだ…かわいいよ兄さん」
「んうううっ、じ、ぶんで…?」
「そう。…あのね」
「あぁぁぁっ、やめ、なんかくるっ、でちゃう、でちゃう…ふぁぁぁぁぁっ」
突然きつく握り締められ、ガクガクと全身を震わせながら絶叫した。
「…ん。いっぱい出たね」
何度も経験したことがある排泄感が駆け抜けていく。そう、これは、本来トイレでなされるべきの。
「う、えぇぇ…っ、ごめ、ごめんなさ、おれ、おもらし…」
いやだ。恥ずかしい。怒られる。ごめんなさいと謝罪を繰り返す俺の涙を、隆幸が舐めとる。
「おしっこじゃないよ。これはね、精液って言って…定期的に出さないと身体に悪いんだ」
「せい、えき」
「そう…体調を崩したり、病気になったりするの嫌でしょう?」
だからさ、こういうのはどうかな。
「兄さんが病気にならないように、こうして精液を出させてあげるから…おちんちんが変だなってときは、いつでも俺に言って?」
「い、いいの?」
「うん。だけど俺が治療してあげることは誰にも内緒だよ。他の人に手伝ってもらうのは、恥ずかしいことなんだから」
「ん、ん、する。内緒にする」
俺のために恥を忍んでまで治療してくれるなんて、隆幸はやっぱり優しい。素直に頷くと、彼は嬉しそうに俺の頭をよしよし撫でた。
「あ、そうだ…精液を出すのにもっと効果的な方法があるんだ」
「どんな?」
「…俺のおちんちんを、兄さんのお尻の穴にいれるの」
「えっ」
お尻の、穴に…?知らなかった。ここにはそんな使い道があったのか。
「でもこれはさすがに抵抗あると思うし…兄さんが嫌なら、」
「ううん、嫌じゃない」
だってお前は、俺を思ってしてくれてるんだろう。嫌なわけがない。むしろ嬉しいよ、そんなに大事にしてくれて。
「隆幸…して」
上に覆いかぶさったままの隆幸の顔を両手で包む。ごくり、と息を飲む音がした。
*
「ひぃぃぃっあぁぁんっあっあっ、んぐぅぁぁぁっ」
「…ふ、ん…ッ」
「たかっ、たかゆきぃぃぃっ、ひやら、また、またせーえき、でるぅぅぅぅ!」
「っいいよ、いっぱい、出して」
ずちゅっずちゅっぶじゅっ
凄い勢いで出たり入ったりを繰り返す隆幸の熱い塊。もはやこれが治療であることも忘れてひたすら嬌声をあげた。気持ちいい。気持ちいい。死ぬ。たまんない。
「うはぁぁぁんっあぁぁっとまんなっびくびくっれぇ、とめひぇぇぇぇっ」
力なく精液が押し出されるが、その後も身体の痙攣が止まらない。シーツをぐしゃぐしゃにかき回しながら、魚のように跳ね回る。
ぶちゅっぢゅっぢゅっぐちゅうううっ
その間も容赦なく抜き差しされ、怖くなって必死に手を伸ばした。
「あぁ…兄さん、兄さん…俺の兄さんッ…俺は幸せだよ…っはぁ、兄さんの弟に生まれて、兄さんの一番近くで育って、ん、これからもずっと一緒にいられる」
「あううううっ、あっあっあっんんんッたかゆきぃぃぃぃぃっ」
嬉しい。こんな駄目な兄なのに。
隆幸、隆幸、隆幸、もっともっともっと。もっと言って。もっと俺を大事にして。もっと俺を求めて。
お前しかいないんだ。そんな風に言ってくれたのは、お前が初めてなんだよ。
「兄さん…愛してる」
「んぁぁぁぁ、ふ…ッ、あ、あいし…?」
「俺は兄さんを、一人の人間として愛してるんだ」
愛してるって、そんな。切なくなる胸に呼応して、後ろの穴まできゅうっと締まる。隆幸が眉を寄せて熱い吐息を零した。
「兄さんは…幸広は、俺が一生守るから…だからっ」
「あっあっん、ひぐっあぁぁぁっ!?」
ずぱんっと肌が触れ合う音がする。腸がひっくり返ってしまうような強い強い突き上げに、口の中に溜まっていた唾液が顎を伝った。
「もっ、ゆっくりしれぇぇぇ!ひぃやぁぁぁぁ!あぁぁぁっ!」
「ッ、出る!」
「あ゛ァァぁアあぁぁ!?」
「うぐ…幸広…っ」
「ひぎぃっ…!」
穴に何か熱いものを注ぎ込まれ、空気の混じった悲鳴が喉を鳴らす。
「幸広…一生守るから、死ぬまで俺に閉じ込められて」
ゾクリ、と背筋が粟立った。死ぬまで、閉じ込められる…?誰に?隆幸に?
「あ、あ、う、はぁ…」
酸素を吸い込もうと金魚のようにぱくぱく開く口。それを愛おしそうに見つめながら、隆幸は俺を抱きしめる。
「幸広、幸広、幸広…愛してる。愛してるんだ、本当に」
「たか、ゆきぃ…」
「逃げないで。お願い。幸広がいなくなったら俺は…」
縋るような瞳。泣きそうな声。手を離したらこの人が消えてしまいそうで、俺はそっとその身体を包み返した。
「どこにも、いかない…」
「ほ、んと…?」
「うん。ずっと隆幸の傍にいる」
焦がれていた弟にこんなにも必要とされている。自然と口角が上がるのが分かった。
「隆幸…」
壊したって良い。殺されたって良い。お前と繋がっていることがこんなにも嬉しいから。
馬鹿な俺は、与えられる痛みすら快楽に変えてみせるだろう。
「もっと愛して…俺の可愛い可愛い隆幸」
もう逃げられない。いや…逃がさない。