▼ 05
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真っ暗になった部屋に、二人分の吐息が響く。引っ越してきた初日に早速これかと我ながら呆れたものだが、既に欲しくてたまらなくなってしまったのだから仕方がない。
「…っ、ん、は…ぁ」
ひふみの指がくぽくぽと音を立てて肉壁を抉っていく。すっかり熟知されているポイントを的確に探り当てられ、必死に声を噛み殺した。しかし我慢している分快感は倍増され、些細な刺激にすら大袈裟なくらい身体が戦慄く。
「声、我慢してんの…?」
言葉で返事をしようとすればきっと変な声が出てしまうので、こくこくと動作だけで肯定した。
なんで、と少し不満げに質問される。
「は…っずか、しい」
「そんなん今更だろ」
「だって、なんか幸せすぎて…今日、絶対いつもより声出る…」
「…お前、あほだろ」
とは言いつつ、触れる手付きは物凄く丁寧で優しい。ぐずぐずに甘やかされて溶かされて、もうなんだか死にそうだった。恥ずかしいし照れるし幸せだし、なんなのこれ。
「んぁ…っ、ふ、あ、あ…」
「瑞貴の声、聞きたい」
「や、や、そこ…やだぁ…っ」
「その可愛くてやらしい声で、俺をもっと幸せにして」
あほはお前だ。何を言ってるんだ。咄嗟に口を覆おうとすれば、両方の手首をひとまとめに固定された。その間もずっと指は後ろの穴を出入りし、挙句の果てにぐりぐりと前立腺を強く擦ってくる。声なんて抑えられるはずがない。
「やぁぁぁ…ッ、むりぃっ、いく、そこ、いく、いくぅ…!」
「ここ?」
「ひうっ、あ、そこ、そこ、あぁぁっ」
無意識のうちに自分の性器をひふみの腹に擦り付けてしまう。間近に迫ってくる絶頂に身を任せ、まさにもう少しで射精しようかというその瞬間、絶妙なタイミングで指が抜けていった。
「あっ、あ…!?な、なんでぇ…?」
寸止めされるのがどれ程辛いか知ってるくせに!なんてことするんだ!泣き出しそうな俺に、ひふみがぶっと噴き出した。
「恥ずかしいんじゃなかったのかよ」
「…」
「ちゃんと声聞かせてくれるなら、入れるけど」
ひくひくと疼くそこに、熱い塊が添えられる。全身が期待で震えた。欲しい。欲しくてたまらない。
「ん、ん、分かった、分かったから…」
「何が分かった?」
ぬぷ、と先端が入り込んでくる。
「あぁ、う…っ入る、入ってくる…」
「なぁって」
「や、や、やだ、ひふみっ」
すぐに抜けていく。
「っ、抜くなよぉ…」
「俺の話聞いてる?」
「聞いてる…んん、んっ、はやく、はやく」
「早く擦って欲しいって?これで?」
一番太い部分が、ゆっくりと孔を広げていく。
「そう、そう…っん、あぁ、それ、やぁ…っあ」
「嫌ならやめる」
一気に抜かれる。
「ちが…っ」
「や、なんだろ?」
「…なんで、そんないじわるすんだよ…っ」
ひどい。ひどすぎる。いろんな感情がごちゃ混ぜになって、涙となって溢れ出した。
子どものように泣きじゃくる俺とは対照的に、ひふみは満足そうに笑う。
「やぁっと泣いた」
「はぁ…?」
「さっきの仕返し」
さっき、というのが先程自分が泣いたことを指している、と気づくまでに少し時間がかかった。
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