シック・ラバー | ナノ


▼ 02

リビングにソファを置きたいとか。寝室は一緒がいいとか。湯船は大きな方がいいとか。

そんな、幸せな、想像を。

「う、んん…」

キスをしながら覆いかぶさってくるひふみのTシャツを、ぎゅっと握りしめた。髪から垂れる雫が時折肌を伝うが、その冷たい刺激すらも愛しく感じてしまう。

最初は触れ合わせるだけだった唇が、段々と深いところまで求めようとする。

舌をほんの少し差し込まれ、自分から絡めようとそれを追っかけた。しかしすぐに逃げられてしまう。物足りなさに眉をしかめれば、ひふみが笑って口を離した。

「サカってんな」
「…うるせ。お前が無駄にえろいキスなんかするから」
「超やらしー顔してる」

いいから、黙って俺にキスしろよ。腕を伸ばして首にしがみつく。

「ちょっと待て」
「うわっ」

突然抱きかかえられた。かと思えば乱暴にベッドに投げ捨てられる。

「いてぇ!なにすんだ!」
「だって重いし」
「お前が非力なだけだろ!」

む、と不機嫌そうな表情をしてのしかかってくるひふみ。両手をシーツに縫いとめられ、身動きがとれなくなった。

「これでも非力って言えんの?」

…くそ。何でこういうときだけこんな力強いんだよ。ひょろひょろのくせに。

キッと鋭い目つきで頭上の顔を睨む。

「そんな目で見んなって」
「んっ」

首筋に冷たい唇が触れ、反射で声が漏れた。それが思いの外甘さを含んでいて恥ずかしくなる。期待してるみたいじゃないか。

「瑞貴…」
「な、に」
「次の日曜は、二人で見に行くか」
「…」
「部屋」

こくりと小さく頷く。一人で見るより、二人で見たほうが絶対にいい。俺だけが住む場所じゃないから。

…二人の、場所になるのだから。

「ん、ぁ…」

優しく溶かすようなキス。全身の力がゆっくりと抜けて、ベッドに沈み込んでいった。

「ベッドは、でかい方がいいよな。シングルじゃ狭いし」
「…毎日一緒に寝るわけ?」
「そ。悪い?」
「悪くないけど…」
「そんな心配しなくても、毎日襲ったりしねーよ」

…服を脱がしながらそんなこと言ったって、なんの説得力もない。

「あっん、んっ!」

胸の飾りを指が掠める。びりびりとした快感に脳内が侵食されていくのが分かった。

「あと、できれば隣の部屋には誰も住んでないところがいい」
「ん、ふ…あっ、なんで?」
「なんでって、そりゃあ…」
「あぁあっ」

きゅっと強めに抓られる。すでに乳首は期待でぷっくり勃ちあがっていた。

「ほら。お前の声響くだろ」
「ばかっ、急に抓ったら声出るに決まって…やぁっん、んん!」

甲高い嬌声は羞恥を加速させる。唇を噛み締めて必死に押し殺した。

「俺としてはもっと瑞貴のそういう声を聞きたいから、できれば隣に誰も住んでいない方がいいだろ?」
「んんっ、んっ…はぁ、そ、いう…ヨコシマなことしか、考えてねーのか!」

珍しく意見を言ったかと思えば、結局これだ。

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