▼ 02
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あぁ、なんて極楽。やっぱり風呂はいいな。命の洗濯と言われるだけのことはある。先程までの気だるさがあっという間に癒されていく気がした。少しぬるめの温度のお湯が心地いい。
「ふー…」
シャンプーもしたし、体も洗ったし、満足満足。
「すっきりした?」
「うん」
水に濡れてぺちゃんこになった俺の髪を、後ろからひふみが弄って遊んでいる。
「クーラーいつ直んの」
「明後日業者の人が来てくれるっぽい」
「じゃあそれまで泊まってれば」
「いいの」
「いいよ」
やった。まぁ二日間くらいなら、いつも泊まってるしな。今更か。
「その代わりお礼して」
「お礼?」
ちゅう。首筋に触れる柔らかい感触。…あ、すげー嫌な予感。
「身体払いで」
「…ばっかじゃねぇの。やめろって」
「やだ」
ほんっとにこいつはどうしようもねぇな!!
逃げようにも狭い湯船の中ではどうにもできない。そのままそこに舌を這わされて、意識とは無関係に肩が跳ねた。ばしゃりと水面が揺れる。
「ふ…っ」
「汗だらだらの瑞貴をいただくっていうのも悪くなかったんだけどな」
「絶対やだ…」
「俺以外の前であんな格好絶対するなよ」
「あ、んな格好って…ひっ!?」
ひふみの指が、俺の胸の先端をつねった。
「肌晒して…ここ、丸見えだったし」
「ん、くっ、別に男なんだから、いいだろぉっ」
「だめ。ほら見てみろよ。これが男の乳首か?」
「やだぁ…っ」
きゅっと指の間に挟み込まれたそれは、赤く色づいていてとてもいやらしい。自分のものとはいえそんな卑猥な光景を見ていられず、顔を手で覆った。
だからこいつと風呂に入るのは嫌なんだ!ひどく楽しそうなこいつも、それを拒めない自分も、本当にムカつく。
「瑞貴くんの乳首かーわいい」
「んんッ、ばか、くそ、しね!」
「はいはい」
「も、そこばっかやめろって…あっあっ、んぐっ!げほっ」
ずり下がっていく身体のせいで、鼻に水が入ってしまう。思わず咳き込んだ俺を見て、ひふみが爆笑した。
「はは、馬鹿じゃん」
「てめ…ふざけ、ごほっ、んなよ…うぇ」
「ちゃんと座れって」
「うぅ…」
脇の下に手を差し込まれる。水の中にいるおかげで重力はほとんどなく、簡単に持ち上がる身体。ぴったりと後ろから抱きしめられて、死ぬほど恥ずかしくなった。…あ、当たってるつーの!
「なぁに今更照れてるんだ」
「照れてねぇ!」
「ふ、その割に全身真っ赤だけど」
「これは逆上せただけだ!」
「逆上せた人間はそんなに元気じゃねーよ。それに、」
「あぁっん!」
大きな声を出してしまった。いきなりちんこ掴むなあほ!
「ここも超元気だし」
「ん、う、うるせぇ…」
「折角洗ったのに、ヌルヌルしてる」
「言うなぁ…っひ、ィ、あっ」
いつもとは違う感覚。水中で弄られるという違和感さえも気持ちよさに変わっていく。見た目には分からないが、先走りだってすごい量が出てるはず。
くるくると先端を円を描くように弄ばれ、堪え切れない声が喉から漏れる。浴室に反響する自分の声は、完全にとろけきっていた。
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