▼ 03
頭上で笑う奴の顔を睨み付ける。…笑う?
「何笑ってんだ!!」
「いや、素直だなって思って」
「意味わからん!!もう退けよ!!」
「瑞貴、聞いて」
ちゅっと鼻の頭に軽くキスをされて、思わず固まる。
「俺は…別に気持ちいいからやりたいって言ってるわけじゃない」
「…じゃあ気持ちくねえってことか」
「いやいつもめっちゃ気持ちいいけど」
「なんなんだよ!」
「俺的に、一番うまく愛情を伝えられるのがセックスだから」
「は!?」
あい、じょう?
何か史上最大級に似合わない言葉が飛び出してきたんですが。
「瑞貴のこととろとろになるまで溶かして、奥の深いとこで繋がって、ぴったり肌を合わせてるとき…お前のこと愛しくてたまらなくなる」
「な、な、なに言って…」
「訳分かんないくらいぐっちゃぐちゃに混ざり合って、一つになってしまいたくなる」
「っ、ひふみ、やめ、」
「そんで…そうやって俺が思ってることが伝わればいいなって考えながら、いつもお前のこと抱いてる」
何てこと言うんだ。息が詰まる。
「…俺は」
「うん」
「お前としてるとき、声が出るのが嫌だ。自分の身体をコントロールできなくなるのも、怖い…でも、」
「うん」
「お前の声は好き。お前に触られるのも好き。あと…奥に入れられてるとき、ぴったり肌を合わせてるとき、訳分かんなくなって…このまま溶けあって一つになってしまえばいいのになって思うのはお前と一緒、だから」
「だから?」
「多分、同じように感じるってことは…ひふみのあ、あいじょうが、伝わってる証拠だと思う」
俺の言葉を聞いたひふみが、頭上でぶはっと笑った。
「なんだ、じゃあ何も問題ないじゃん」
「でも今日はしたくねえ!!」
「なんで」
「だって、お前疲れてるから…」
「俺は疲れてても寝不足でも死にそうになっても、いつでも瑞貴を抱きたいと思ってるよ」
「いや死にそうなときは自分の生命を優先しろ」
「瑞貴の方が大事だ」
しゅるり、とひふみがネクタイを解く。それを見た瞬間、バクバク心臓が高鳴った。…かっこいい。死ぬ。何だその仕草。
「これ好き?」
「…っぽい」
まさか自分がネクタイ萌えだったとは。
「違うだろ」
「は?」
「ネクタイを解く俺が、好きなんだろ?」
反論する前に口を塞がれる。結局ほだされてしまう俺って、何なんだろう…。
「ん、ふ、ぁ…っ」
「あー…久々すぎてやばい。もう入れたい」
「む、むりだって、あっ、まだ入らない、から」
ズボンの上から尻を撫でるひふみの手。ぞわりと鳥肌が立つ。
「分かってる。ちゃんとほぐすから安心して…今度俺が来るときは自分で弄って、すぐ入れられるようして待ってろ」
「するわけないだろ!!」
「瑞貴のアナニーとか、すげー興奮する」
「しね!!あっ、何して…」
手首に何かが巻かれる感覚。目線を上に移すと、先ほどまで奴がつけていたネクタイで固定された自分の両手が見えた。
「瑞貴くんはネクタイが好きみたいだからな。嬉しいだろ?」
「嬉しくねえ!とれよこのばかや…あ、ァんっ」
「もう勃ってる」
「言うなっ、ひ、いきなり…」
「直接触ってやるよ」
ズボンと下着を一気に脱がされる。抵抗しようにもネクタイで縛られた両手では何もできず、必死に足を閉じようともがいた。くそ、やっぱりネクタイなんて好きじゃねえ!嫌いだ!
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