シック・ラバー | ナノ


▼ 03

恥ずかしくて目を逸らし、唇を噛み締める。うう、なんでこんな…暫くそのまま無言で弄られていた俺の穴に、指ではない何か…その、あれだよ。あれ。ひふみの熱い…ペニスが添えられた。

「…あ、う」
「いい?」

いちいち聞くんじゃない、と叫びだしたくなる。ここで駄目って言ったらお前は止めてくれんの。あぁ、でもこいつならきっと…俺が拒んだら絶対にしないんだろう。そんな気がする。

ひふみは、優しいから。優しすぎてこっちが辛くなるくらい。いっつもいっつも自分を犠牲にしてばっかで、自分のことは後回しで。

優しくしなくていいよ。お前の好きにしていいよ。だって俺、

「ひふみ、すき…っ」
「っ」
「すき、すきだからぁ、だから、おねが…っいれて、もう、おれの中、いれろよぉ」

奴の細い腰に足を回して引き寄せる。ぐぷっと先端が入り込んできて、シーツに後頭部を擦り付けて喘いだ。あ、う。入ってくる。ひふみの、入ってくる。

「ッ瑞貴、この、ばか…っ」
「あぁぁッ、ひぃぃっ、い、いたっ、いたい」
「ごめ…、抜くから、ちょっと待っ…」
「やだぁ!やだやだやだぬくな!だめだめだめぇ!いいからそのまま…ん、はぁッ」

指とは違う質量に無理矢理割り開かれる感覚。当然痛くてたまらなくて、自然と涙が溢れてくる。

でも、それで良かった。例えそのまま裂けてしまおうと、切れて血が出ようとそんなの構わない。構わないんだよ、ひふみ。

ぐぐっと押し入ってくる熱い塊。だらしなく開いた口からは不規則な呼吸が漏れ、どうやったらうまく受け入れられるか必死に方法を探った。それが功をなしたのか、長い時間をかけてひふみの下半身が俺の尻にぴったりとくっつく。

「う、ァ…全部、全部はいった…?」
「…ん」
「ほんとっ?おれの中、お前の、全部はいった?ん、ん」
「ああ、はいっ…た」

視界が滲んでいるせいでよく分からないけれど、嬉しくて泣きながら笑う。きっと俺の顔面はぐちゃぐちゃでくっそ不細工だ。それなのに、そんなぐちゃぐちゃな俺の身体をひふみはぎゅっと抱きしめた。あぁ、俺、幸せ。

「っ、う、…」

ぼたぼたと頬に水分が落ちてくるのを感じる。汗、か?

でも、耳元で聞こえるのは。

「…ひふ、み…?泣いてんのか…?」
「…っく、瑞貴、瑞貴…」
「なんで、なんで、お前が泣くん?」

すすり泣くひふみの声。ぐすぐすと鼻を鳴らし、俺の名前を何度も何度も呼ぶ。頬に落ちてくるのは、汗じゃなくて涙だったのだ。

「瑞貴、好きだよ…っ」
「え」
「好きだ、好きだ、俺はずっと昔から、瑞貴だけが欲しかったっ」

もう俺、今なら死んでもいい。

そう言いながら、きつくきつく息が止まるほどの力をこめるひふみ。きゅうっと胸が切なくなって、目の前のこの人のことが愛しくてたまらなく感じられた。

なんだよ、それ。反則だろ。

「瑞貴…」
「ひ、あ、…っん、ン」
「ごめんな、痛いよな、でも俺、止めてやれない」
「う、ぐ、いい、止めなくて、いい…ッ」

ずっずっと腰を少しずつ動かされ、ぼろぼろと生理的な涙が零れる。痛みを和らげようとしてくれているのか、顔中にキスが降ってきた。

止めなくていい。痛くてもいい。お前に与えられるものなら、全部嬉しい。全部欲しい。

「あっあっ…すきって言えよぉ、おれのこと、すきって言って」
「ッは、好きだよ…俺は、瑞貴が、瑞貴だけが、好きだ…っん」
「ひあぁっ、おれも、おれもひふみだけが、ひふみが、すきぃ…っうぁぁ!」

いつだったかひふみに抱かれる夢を見た。でもそんなの比じゃないくらい、何倍も何倍も気持ちがいい。絡まる舌も、握り締められた手も、突き上げる度に触れ合う肌も、全てが俺を幸せにした。

「おれ、おれもう…ッあぁん、イく、イくイくイく、んぁっ、そこ、きもちいぃ…」
「ここ…?ここが気持ちいい?」
「やぁぁっ、ふ、はぁ、そこぉぉぉッ」
「っあ、締めすぎだって…俺もイきそ…」
「イって!ひふみ、いっしょに、おれといっしょに…っあ、う、ひあぁぁぁぁぁッ」
「うぁ…ッ」

ぐぷんっと最奥を抉られ、ガクガク全身を震わせて達する俺。その締め付けに耐えられなかったのか、ひふみは顔を歪めて声を漏らす。

「ん、ん、ふ、はぁ…」

中でびゅうびゅう熱い精液を放たれるの感じながら、どちらからともなく吸い寄せられるように唇を貪り合った。

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