▼ 02
腕を伸ばしてひふみの頭を思いっきり抱きしめる。泣きそうな声で何度も何度も俺の名前を呼ぶその姿は、俺の知っているひふみじゃなかった。性悪で根暗で、いつも悪態をついて…それが当たり前だと思っていたのは、俺の間違いだ。
何も言ってくれないんじゃない。俺が何も知ろうとしなかったんだ。
「ごめんなひふみ…、俺、お前のことちっとも分かってなかった。自分のことばっかりで、お前が何を考えているかなんて知ろうともしなかった」
面倒くさい二人だね、という慎の言葉を思い出す。
確かにそうかもしれない。俺も面倒くさいし、ひふみも面倒くさい。答えはこんなにすぐ近くにあったのに。
俺、俺は、
「俺、ひふみのことが好き」
お前に触れられると嬉しい。キスされると気持ちがいい。名前を呼ばれたらドキドキする。
もっともっともっと。もっと欲しい。中途半端に与えられるだけじゃ、もう足りない。
「だから、もう一人で抱え込まないで…ちゃんと言えよ。俺は馬鹿だけど、お前くらいなら受け止める技量はあるつもりだし…」
「みず、」
どうせくれるなら、全部ちょうだい。お前のこと全部丸ごと、俺にくれよ。
もう絶対に、逃げたりしないから。逃がしたりしないから。
取り返しがつかなくなったっていい。男同士だって、そんなの知るか。
何かを言おうとするひふみの口を塞げば、気持ちが溢れて止まらなくなった。
*
「…痛い?」
「ん、だいじょう、ぶ、ンぅ」
「瑞貴の中、あっつい…」
「あぁッ、ばか、言うな…ひあっ」
にゅぐにゅぐと尻の中で蠢く指。以前見つけられた気持ちの良いポイントを何度も何度も擦られ、足が攣りそうになるくらいピンと伸びる。
「は、う、やぁぁっ、そこばっか、やめッ…ろ」
「もしかして、気持ちよくない?」
「ちが、あぁン、きもち、ぃからぁ…っん、ふぁぁぁ!?」
乳首に這う濡れた感触に、一層大きな声が出た。はっと気が付いて口を手で覆い隠す。そ、んなとこ舐めんなよ、ばか。
「んっ、う」
「瑞貴…隠すな。手退けろ」
首を横に振る。手を退けたら、俺の気持ち悪い声が出てしまうじゃないか。自分の嬌声なんて聞きたくないし、聞かれたくない。
「んっんっ、ふぐっ!?」
「瑞貴」
「あッ、ん、だめぇ、だめだってぇ…」
赤くなって主張する胸の飾り。それに軽く歯を立てられながら、思いっきり中に指を突き入れられた。全身の力が抜けて、口を隠していた手がずれる。
「ぁ、ばかっ、あうぅッ」
「ここ舐めたら、すげえ中締まる」
「ひ、ぃ…ン、あっあっ、あっ、やだ、やだやだやだぁぁぁっ」
「イきそう?」
「イ、く、イくからぁ、はァ、ん、ひぃあっ」
ぶるぶると内股が震え、胸に顔を埋めるひふみに抱き着いた。おれ、前も触られてないのに。乳首とお尻の穴でイくとか、あ、あ、やだ。怖い。
「イっていいよ。ほら」
いつの間にか穴で2本の指を咥えこんでいて、くぷくぷいやらしい音が部屋に響く。痛みなんてものはこれっぽっちもない。
「んぁッ、イく…っあぁぁぁぁ!」
中をかき回す細長いひふみの指先。コリ、とそれが奥のしこりを強く強く挟んだ瞬間、目の前が真っ白になる。意思とは無関係に身体が跳ね、ギシギシとベッドが軋む。ひゅうっと喉が鳴った。
金魚のように口を開けて空気を求める俺。ちゅ、と汗で湿る額に口付けられる。
「かわいい、瑞貴」
「っ、目腐ってんじゃ、ねぇの…あッ」
引き抜いた指に、たった今出した俺の精液を絡めるひふみ。下腹をなぞられて爪先が宙を蹴った。
「な、にして…」
濡れた指先が尻穴を何度も出入りする。ちゅぷちゅぷ耳を覆いたくなるような音に、顔が火照るのが分かった。わざとか。わざと音を立てているのか。
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