▼ 03
「ど、どこ行くんだよ」
「…」
無視ですか。歩くの早すぎだろ。これが足の長さの違いってか。くそ。しかも、どんどん人気のない通路に入って行ってませんか…?
「トイレ?」
なぁんだ、便所に行きたいなら言ってくれればいいのに。それともひふみくんは一人じゃトイレも行けないのかなぁ?…なんて、ふざけてる場合じゃない。
「うぉっ、危ねぇっ」
薄暗いトイレの一番奥の個室。そこにドンっと力いっぱい背中を突き飛ばされた。転ばないようにバランスをとる俺。そして何故か一緒に入り込んでくるひふみ。狭い個室に男が二人。何だこの状況は。
「後ろ向け」
「えっ、なんで…」
「いいからそのタンクに手ついて後ろ向けって」
「こ…こう?」
素直に言われた通りの体勢になる。だってすげえ怖いんだもんこいつの声…。逆らったら殺されそう。
「ふぐっ!?」
「なぁ、さっきなんて言った?」
口内に突然二本の指が突っ込まれた。
「ひょ、はひひて…」
「何喋ってるか分かんねえ」
お前のせいだよ!抗議の声を上げるが、舌がうまく動いてくれず奴の指がべしょべしょと俺の唾液で濡れていくだけ。
「熱のこもった目で俺のこと見てたくせにさぁ、触んなとか」
「んん、ふ、うぐ…」
「なんなのお前」
指が出入りするたびに漏れる濡れた音がまるで行為を連想させるようで、顔が熱くなる。何か言おうとすればするほど口の中が湿っていき、顎に涎が垂れるのが分かった。
「んぁっ…」
暫くそのままうごめいていたそれ。ようやく引き抜かれたと思ったときには銀色をした糸が伝い、その卑猥さに無意識に声が出た。くそきもい俺。
「…なにその声。物足りない?」
「んなっ、わけあるか!…ひ!?」
「乳首勃ってますけどー」
「あ、やめ、つめたっ」
指についた唾液を塗り込むように胸の先端を弄られ、肩が浮く。…いつの間に潜り込ませたんだその手…。
「最初は痛い痛い言ってたのに、瑞貴は乳首なんかで気持ちよくなっちゃうんだ」
「きもちよくなんか…うぁっン」
「ん、」
「ああぁんっ、それ、ひふ、みぃ…っ」
「え」
後ろから首にキスされた瞬間。悲鳴のような喘ぎが出て、全身の力が入らなくなってしまった。ひふみが慌てて腰に腕を回して引き上げてくれたことにより、トイレの床にへたりこむという事態は避けられたが…タンクについた手がずるずると下がる。
「あ、はふ、ふ」
「…」
ちゅ。
「あっ、いやぁぁぁっ」
ちゅ。
「んあっ、ひいぃッ」
温度の低いその唇が触れるたび、ありえないほどにビクンビクンと痙攣する俺の身体。なんだこれ、止まんない、こわい…っ。
「…どうしちゃったんだよ、お前」
「あ、っ、わか、わかんな…、はぁぁぁッ」
「そんなに俺にキスされるのがイイ?」
乳首を捏ね繰り回されながら何度も何度も肌に吸い付かれ、訳が分からないほど気持ちがいい。ひふみの声が耳元で聞こえるのがたまらない。なんでこいつこんなときばっか無駄にいい声出してんだよぉ。
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