シック・ラバー | ナノ


▼ 05

「…ふーん」
「あっ、〜〜〜んぐッ」

少し嬉しそうな声色をしたひふみ。その手が竿を握りこむと同時に先端を抉られて、目の前がチカチカした。喉がぐぐっと反り上がり、引き攣れたような声が漏れる。

…あ、俺、イって…

「あれ、イった?」
「っ」

お湯に広がっていく白濁。信じたくはないその光景を視界に入れないようにするため、思いっきり顔を別方向へと背けた。

「…ひふみ?」
「ん?」

ちゅうちゅうと何度も何度も後ろからキスをされる。首、背中、肩。無言のまま、いろんなところに数えきれないくらい続けられる行為。疑問を感じ名前を呼べば、上機嫌さがうかがえる声が返ってきた。

…なんで嬉しそうなんだよ。意味分からん。怒ってたんじゃないのかよ。

「やめろって」
「やだ」
「こしょばいんよそれ…」

無視。終いにはぺろりと舌を這わされ、ぞわぞわと全身に鳥肌がたつ。…あとさ、さっきからずっと腰にお前のちんこ当たってんだけど。

「…お、お前はイかなくていいん?」
「んー」

別にいーよ、と興味なさげに言うひふみ。別にいいって、明らかに超勃ってるんだが。苦しくないのか…?

「何、フェラでもしてくれんの」
「するわけないだろっ!馬鹿っ!」
「あっそ」
「押し付けんな!」
「俺がこんなんなってんのは瑞貴のせいなのに?」
「知らん!」
「まーいいや。今気分良いし」

奴の脚の間。後ろから抱きしめられるような体制で、暫く無言のままぬくぬくと温まる。あー、やっぱ風呂はいいな。こいつがいなきゃもっと良いんだけど。何気なく後ろを振り返れば、水に濡れた前髪をかき上げるひふみと目が合った。

「なに?」
「いや、別に…」

くそ、一瞬見惚れそうになってしまった。だってお前のそんな無防備な素顔とか珍しいじゃん…。それに、なんか無駄にかっこいいっていうか…いやなんでもない。

一人で悶々とする俺の様子を気にした風でもなく、ひふみはふっと笑う。

「瑞貴」
「なんだよ」
「お風呂上がったら、髪乾かしてやる」
「へ?」
「あと部屋の片づけ手伝ってやってもいい」
「…お、おう…?」
「それが終わったら、コンビニでも行く?お前さっきアイス食いたいって言ってただろ」

どういう風の吹き回しだ。最早気味の悪さを感じるレベル。偽物…なわけないよな。こんなやつ二人もいてたまるか。

「じゃあひふみ先に洗えば。俺は後でいいから」
「は?」
「え?」
「洗ってやるって言ってるんだよ」

言われてねぇよ。

「いや自分でやるし」
「いいの?」
「なにが?」
「俺が洗ってあげなくて、瑞貴は本当にいいわけ?」

そう言われると、何だか断れないっていうか…うん、こいつがそんなサービスをしてくれる機会なんてそうそうない。これは素直に受け入れなきゃ損なのかもしれないという気がしてきた。

「…え、いや、じゃあ…お願いします」

…ん?何かおかしくね?

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