シック・ラバー | ナノ


▼ 04

耳元で囁かれ、馬鹿みたいに心臓が高鳴った。

な、なんだよ。なんで俺、ひふみの声にこんな…

「っこ、これだけって」
「分かってんじゃないの…瑞貴が、一番」
「んっ」

ちゅうっと首筋に吸い付く奴の唇。あっという間に場の雰囲気が変わり、まだお湯につかって数分しか経っていないのに、それだけで逆上せそうになってしまう。

「や、やだ」
「最初からお前に拒否権はない」
「ひうッ」

濡れた指が俺の乳首をつねる。途端に走る電流にビクつけば、ばしゃばしゃと水が跳ねた。

「俺に嫌われたくないんだろ?」
「あっ、あっ、ちが、そんなこと、言ってな、ンっ」
「瑞貴が素直に喘いでくれれば、めちゃくちゃ優しくしてあげるんだけど」
「ふ、やぁぁっ」
「すげー反応」

馬鹿にしたような声。恥ずかしくなって顔が熱くなるのが分かる。俺だってこんな声出したくねぇよ。でも自分でどうにかできるようなものでもない。勝手に反応するんだから仕方ない。

くそ、それもこれも全部こいつのせいだ。

「お前が、お前がっ、触るからだろぉ」
「どうだか。気持ちよくしてくれる相手になら、誰にでもそんなエロい顔見せるんじゃないの」
「なんでそんな、ひどいこと言う…ッはァ、う、んっ」
「なぁ瑞貴」

俺以外の人に乳首触られて、ちんこしごかれてるとこ想像してみろよ。

カリカリと爪で胸の飾りを弄られ、その度に不規則に震える身体。ひふみに言われた通りの光景が霞がかった脳内に浮かんできて、ぶんぶんと頭を横に振った。

「いやっ、俺っ、俺はぁ」

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。気持ち悪い気持ち悪い。

俺は、俺は、

「ひふみじゃなきゃ、こんな…っ」

こんな口にも出せないような行為、絶対に嫌だ。いつの間にか涙が滲み、泣きながら嫌だ嫌だと繰り返す。

それに気が付いたのか、今まで動いていた奴の指がぴたりと止まった。静かになった浴室に響くのは俺の泣き声だけ。

「俺じゃなきゃ、何?」
「っうぇ、いや、いやだぁ…」
「瑞貴、ちゃんと言えって」

弄りまわされすぎて、胸がジンジンする。お湯が揺れるだけで気持ち良くて、ぴくんぴくんと小さく反応してしまう身体がムカつく。俺、どうしちゃったんだよ。

「ひぐっ、おれは、こんなこと、するやつがっ、他にいたら、ぶん殴る…っ」
「…俺はいいの?」
「あァ、ッん!?」
「俺も瑞貴にこんなことしてるけど…ぶん殴らないの?」

乳首への刺激のせいで完全に臨戦態勢になっているペニス。そこを何の前触れもなく握られ、一層大きな声をあげる。

「んふっ、あ、そこっ」
「なぁ、俺はいいの?」
「アッ、いい、いい、いいからぁ」
「だから…泣いてないでちゃんと言葉にしろって」

チッと後ろで舌打ちをしながら、ひふみは乱暴な手つきで俺のガチガチになったそれを擦った。水の中で与えられる感覚はいつもと違って、その違和感すらも気持ちよさに変わっていくような気がする。

それこそ、想像だけでゾッとしてしまうような他人からの刺激とは大違いで。なんで俺のちんこはひふみに握られるだけで、こんな風に悦んでしまうんだろう。

「ひふみは、ぁう、ん、いい…っ」

快感が深く考えることを邪魔して、本能のままにそう叫ぶ。いい。そう、ひふみならいいんだ。だって、俺、俺は、お前のこと大切だもん。他の人と比べられるわけないだろ。

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