▼ 03
一気に押し入りそうになる気持ちをぐっとこらえ、馴染ませるようにゆるゆると浅く出入りさせる。
「あっあっあっ、や、それ、やだぁ…ッ」
その度にスイちゃんの身体がビクビクと仰け反るものだから、何だか嬉しくなってしまった。俺の愛撫で感じてくれている彼が、とても可愛くて愛おしい。
「やっ、依くん、あぁっ…ん、ふぁ」
「もっと欲しいの?足りない?」
「は、ぁう、ほし、ほしいよう…」
物足りないらしく必死に腰を押し付けてくる。そんなスイちゃんの脚を抱え上げ、願い通り奥まで埋めて行った。ぴったりとくっついたその瞬間、互いの肌が汗ばんでいることを知る。
「全部入ったの、分かる?」
「うん…」
「スイちゃんのナカ、すっごくいいよ。気持ちいい」
「俺も、すごくいい…」
依くん、と名前を呼ばれた。
「キス、して」
「ん、いーよ」
深く深く口付けながら律動を開始する。くぐもった声が喉の奥に反響した。
「んっんう、ん、ふ…っあ」
「はぁ…っ」
「んんん!んっあ、う、ん」
あーやっばいなこれ。気がつけば頭の中が真っ白になっていて、スイちゃんを気持ちよくさせなきゃだとか、ベッドをあまり軋ませないようにしなきゃだとか、そういうことは全て吹っ飛んでしまっている。
「あっはぁぁ…!んっあっあっ…いい、あ、いいっ」
「どこがいい?ここ?」
「ふぅ、ン…!あ、そこぉ!そこだめ…っ」
ただただ目の前にある快楽を追い求めることに必死で、俺は気がつかなかったのだ。
「あァッあ、あぁっう、よりく、よりくん…ッはぁ、あっあぁぁ…!」
「スイちゃん、スイちゃん、気持ちいいよ、あ、やっばこれ…っ」
「依人!!いい加減にしろ!!」
大きな音を立てて突如開いたドアに、二人でビクリと身体を強張らせる。
「なっ、なに…?」
「…あー…面倒くさいのが来た」
傍にあった毛布でスイちゃんの身体を隠しながら、今しがた部屋に入ってきた人物…父親にごまかすような笑みを向けた。
「何度言ったら分かるんだ!お前はまだ子どもなんだから、そういうことはするなといつもいつも…」
出た。絶対そう言われると思ったんだよ。いつ帰ってきたんだろう。全く気付かなかった。気づいてたらうちでやることはしなかったのに。
「分かってる分かってる」
「へらへらするな!よそ様の娘さんに手を出して、責任をとれなくなったらどうする気だ!」
「やー…その心配はないんじゃない、かな…」
「俺がお前の年のときにはなぁ…そんな乱れた生活は送ってなかったぞ!それなのに一体誰に似たんだか…」
また始まった。自然と溜息が漏れる。
「とりあえず出てってよ」
「まだ話は終わってない!」
「後で聞くから。スイちゃんも俺もまだ裸なの。セックスの途中なの。まだイってないの」
「え…」
父さんがぽかんとした表情をして、毛布にくるまれたスイちゃんに視線を移した。慌てて毛布を被せ直す。見るなエロ親父。
「ちょっと、俺のスイちゃんなんだけど。見ないでくれる?」
「す、スイちゃん…?スイちゃんってお前、あのスイちゃんか!?」
スイちゃんとは小学校から一緒なので、きっと父さんも覚えているのだろう。というか近所でスイちゃんを知らない人はいないんだけど。
「依くん、あの」
毛布の端から涙目のスイちゃんが顔を覗かせる。
「ごめんね。うちの父さん空気読めなくて。今追い出すから続きしようね」
可愛いなぁ、とおでこにキスをして微笑むと何故か怒られた。
「ばかっ!そんなの出来るわけないでしょ!抜いてよ!」
「えぇ!?なんで!?」
大きな声を上げて抗議すると、その瞳からぼろぼろと涙が零れ始める。
「…す、スイちゃ、泣いて…?」
「ふ…っおねがい、抜いてよぉ…」
そ、そんな…俺まだ一回もイってないのに…。
「…父さんのせいだ!空気読めよ馬鹿親父!」
「いてっ!依人!またお前は…!」
しかしこんな風に泣かれてしまってはなす術も無く、俺は行き場のない怒りを枕に込め、ドアの前で立ち尽くす父親へ投げつけたのだった。
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