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24th Feb 2020

小ネタ

智「もしもの話をする」
望「なんだ藪から棒に」
智「最初に言っておこうと思って。あくまでもフィクションなんだから怒るなよ」
望「架空の話に腹を立てるような狭量な男になった覚えはない」
智「伊原がもし浮気したらどうする?」
望「……」ガチャン
智「おいおい。そのカップは母さんのお気に入りだぞ。割るなよ」
望「……殺す……」
智「狭量どころの話じゃない」
望「よくもまぁそんなおぞましいことを僕に想像させたな。吐きそうだ」
智「そんなにダメージを受けるとは思わなかった。すまない」
望「そんな……そんなの、殺してやる……」
智「どっちを?」
望「決まってる。相手をだ」
智「殺すって、死なせるってことか?」
望「物理的にか社会的になのかは相手によって決める。より辛いほうを選ぶ」
智「伊原は?」
望「殺さない。奴がいない世界で生きるのに、僕の方が耐えられなくなるから」
智「まぁ、そうだろうな。ちなみにお前の言う浮気ってどの程度のことを言うんだ?」
望「そいつと行動を共にしたことを僕が知らなかったら」
智「正気か?」
望「無論正気だ」
智「誰とどこで何をしていたか、全て報告しろと?」
望「勿論」
智「世の中の恋人たちも、世の中の夫婦たちも、お互いのことを全て把握するなんて真似はしてないと思う」
望「そんな馬鹿な……じゃあ兄さんも」
智「全てを把握するのも把握されるのも息が詰まる」
望「息が詰まる?むしろ相手の全てが見通せない方が苦しいだろう」
智「この家の皆は俺がまともに育ったことを感謝すべきだ」
望「僕がまともじゃないと」
智「少なくとも伊原に関しては」
望「愛してるからな」
智「他の子に興味が湧くことはないのか?」
望「ない」
智「何がお前をそんなに掻き立てるんだよ」
望「わからない。わからないけど、伊原が傍にいないことが想像できないし、想像することすら怖い」
智「伊原がいなかったら死ぬんじゃないか?」
望「少なくとも、伊原がいない世界に存在していても何の楽しみもないし何の意味もないと思う」
智「そんなのは死んでるのと一緒ってことか」
望「そうだ」
智「伊原も伊原でお前のその無理難題をなんの疑いもなく当たり前にこなすんだろうな……」
望「そうなるようにしたのは僕だ」
智「誇らしげにするところではないと思うが」
望「僕が育てた」
智「世話される側はお前だったはずなのに、その言葉があながち間違いでもないのが我が弟ながら怖いよ」



望「伊原」
伊「はい、なんでしょう」
望「僕は重いか」
伊「はい?」
望「僕の想いは重いか」
伊「15点くらいですかねぇ」
望「違う。洒落を言ったわけではない。本気だ」
伊「考えたことはないですが、重いかもしれませんね」
望「……そうか」
伊「でも、私はそれが心地よくてたまらないのですよ」
望「そうか」
伊「もしかして照れてます?」
望「照れてはいない。浮かれてはいる」
伊「ふふ、そうですか」
望「では次の質問。お前にとって浮気の定義とは?」
伊「浮気……ですか」
望「許せることとそうでないところのラインだな」
伊「うーん……」
望「難しく考えなくてもいい。直感で」
伊「そうですねぇ……肉体的な浮気はもちろんですが、精神的な方が辛いかなぁ……」
望「僕はどっちも許さないが」
伊「しませんよ」
望「わかってる。で、具体的に言うと?」
伊「貴方が自発的に自らの身体を相手に触らせたとき、かな。若しくは触れて欲しい、と思ったとき」
望「なるほど」
伊「坊ちゃんはどうなんです?」
望「僕以外の人間と過ごした時間を僕が知らなかったとき」
伊「なるほど。では私には不可能ですね」
望「内緒にする、という選択肢はあると思うが」
伊「ありませんよ。わかってるくせに」
望「ふふん」
伊「得意げにしないでください」
望「僕の子育ては間違ってなかったなと思って」
伊「誰が貴方の子ですか」
望「お前なら産みたい」
伊「気持ち悪いことを仰らないでください。気持ち悪い」
望「二回言ったな」
伊「望さん」
望「はい」
伊「……誰にも触らせないでくださいね」
望「ん」
伊「触れて欲しいと願う相手も、私だけにしてください」
望「当然だ。僕の身体も心も全部お前のものだよ」
伊「……私も重いでしょうか。重いでしょうね。きっと」
望「まだまだ。圧死させる勢いで来い」
伊「死のうとしないで」
望「ドMだからな」
伊「納得してしまう」


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