【16】



「あら!名前ちゃんおはよう!ちょうどパンケーキを焼いたところなのよ!いっしょに食べましょう!」

「え、あ、おはよう、いただきます?」


共有リビングのソファで目を覚ました私はまだ寝ぼけたままキッチンから声をかけてきた蜜璃ちゃんに返事をする。窓の方を見れば目に刺さる様な太陽の光が差し込んでいた。壁に掛けてある時計の時間を見てギョッとし頭が一気に覚醒する。


「えっもう朝!どうしよう私ここで寝ちゃったみたい私!ごめんなさっ」


勢いよく立ち上がると頭がぐらっとして離れたばかりのソファに再び倒れ込む。


「名前ちゃん二日酔いかしら!?お水飲む!?」


蜜璃ちゃんがあわあわとし慌ててコップに水を入れてくれる。二日酔い…?私昨日の夜は確かえっと……そうだ!天元と2人で呑んでいたんだ!あいつ私を起こそうともしないでひとりだけ部屋に戻ったの!?


「蜜璃ちゃん、もしかして私のこの醜態をみんなは見ちゃったりしたのか、な…?」

「だっ大丈夫よ名前ちゃんだだ誰も見てないわ!!名前ちゃん大丈夫よっ!」


汗をダラダラ流しながらめちゃくちゃ目を泳がせる蜜璃ちゃん、んもうっめちゃくちゃ嘘が下手なんだから!!つまりやっぱりみんな私がここで酔い潰れて寝落ちしたところを見てしまったってことだよね……恥ずかしくて死にたい……


「俺と甘露寺ぐらいしか見てないから安心しろよ」

「てぇんんげぇん!」


何食わぬ顔でフラッと共有リビングに現れた天元に頭痛の辛さを忘れて詰め寄れば迷惑そうな顔でこちらを見下ろされた。何その顔!


「なんでひとりだけ部屋に戻ったの!起こしてくれたっていいじゃん!私リビングで寝ちゃった酔っ払い女になっちゃったじゃん!」

「事実酒一杯で潰れた酔っ払い女だろうが!起こそうとしたけどお前起きなかったんだよ!」

「その無駄な筋肉は何のためにあるの!?運んでくれたっていいじゃん!!」

「俺の筋肉でも重すぎるもんは運べないんだよ!」

「なっ!?」

「あのなぁ、はぁ~~…お前なぁ…」


天元が片手で私の両方のほっぺをむにゅうっと掴んでくる。何するのって言おうとしたけど、天元のなんとも言えない微妙な表情を見て言葉に詰まってしまう。


「この下戸っ」


きゅっと鼻先を強めに摘まれていたっ!と思わず声が出る。天元は頭をガシガシと掻きながら少し機嫌悪そうに共有リビングを出て行ってしまう。私は自分の鼻先を摩りながら天元が出ていったドアを見つめる。


「なんなの天元のやつ……」

「わ、わからないけどなんだかキュンキュンするわね!」


なぜか蜜璃ちゃんは顔を赤くしながら同じくドアを見つめていた。今の場面のどこにキュンキュンしたのかわからない私は可愛らしい彼女のお顔を見ながら首を傾げた。忘れてた頭痛が再び戻ってきてううっと頭を抱えれば蜜璃ちゃんがお水を渡してくれてそれを何口か飲む。乾いていた喉が潤い少しだけスッキリしたけど、なんだか心は少しだけモヤッとしていた。

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