【12】



「チーズケーキとシフォンケーキみんなはどっちの方が好きかなぁ〜。」

「俺はチーズケーキの方が好き。」

「う〜んじゃあ仕方ないからチーズケーキにしようかなぁ。」

「仕方ないんじゃなくてノリノリで作れよ。」


最近ご飯作りが上達した私は今日はお菓子作りに挑戦しようと思いスイーツのレシピ本をパラパラとめくる。目の前に座っている天元があ〜チーズケーキ早く食いてぇ〜と天井を仰ぎながら言っている。


「不死川さんは甘いのは何が好きかなぁ…」

「あ?」

「え?」

「お前今…」

「あっ、なっなな何も言ってないし!!!」

「へぇお前、へぇ?」

「違うからっ!!!」


私がボソッと言った言葉を天元は聞き逃さずに拾えば顔を天井から私に向けニヤニヤと笑ってくる。やばいやばい完全に勘違いされている。


「変な意味じゃなくてね!!不死川さんって一番好みとかがわかりにくいから、何か甘い物で好きなのとかあるのかなぁって思ったの!!それだけ!!」

「何必死に説明してんだよ。」


ほんとだ何で私こんなに必死で説明しているんだろう???これじゃあまるで私が不死川さんのことが気になってるみたいじゃない…気になってるの…あれ…?


「あいつは昔からおはぎが好きなんだよ。年寄りみたいだよなぁ?けど作ってやったら喜ぶと思うぜ?」


まぁ頑張れよっなんて言い椅子から立ち上がり私の頭にぽんっと手を置いたかと思えばすぐに手を退かしリビングから出て行く天元。私は少しだけ止まったまま考え事をして、その後再びレシピ本のページをめくり始める。


「おはぎの作り方って載ってるかな…」



ーーーーーーーーーーーーーーー



「とっても美味しいわ〜!すごいわね名前ちゃん!おはぎまで作れるようになっちゃうなんて!」

「餅が柔らかくて餡もちょうどいい甘さだ。」


蜜璃ちゃん伊黒さんカップルがデートからシェアハウスに帰ってきた頃に出来上がった手作りおはぎ。二人に味見して貰えば嬉しい限りの感想を頂く。


「ほんとにおいしい?大丈夫かな?」

「本当に美味しいわよ!名前ちゃんどうかしたの?」

「ううん!なっ何も!おいしいならよかった!」


グルメな蜜璃ちゃんのお墨付きをもらえたならきっと大丈夫であろうと心に言い聞かせる。その後も帰ってきたみんなに食べてもらってみんなはとっても優しいからおいしいと言ってくれた。
それぞれがもう寝ると言って2階へ上がってしまっても、私は1人リビングに残って少しソワソワとしながら歩いてみたり、ソファに座っても何度も時計を見たりしていた。なんで私こんな落ち着いてないの…元はと言えば全然意識なんてしてなかったのに天元が変なこと言うからいけないんだ!!そう思ったとき背後にあるリビングのドアがガチャっと開き、ドキッとしながら振り返ればそこには不死川さん……ではなく私に変な意識をさせた張本人の天元が居た。


「まだ起きてたのか?何してんの?」

「……寝れないからリビングで時間潰してたの。」

「あーなるほど不死川におはぎ食べさせたくて待ってたわけねはいはい。」

「だから違うってば!!」


違くないんだけど!!まぁそんなんだけど!!どうせなら目の前で食べてもらって感想を直接聞きたかった。ただそれだけだ。今日に限って全然帰ってこないから寂しいなんて感じてない。ちっとも。


「何しょげてんだよ。」

「しょげてません。」

「俺にもくれよおはぎ。」


ニッと笑いながら言う天元。小さめの和柄のお皿におはぎを二つ乗せお箸と一緒に差し出せばいただきますと言ってからおはぎを口に運ぶ。


「んっ!んめぇじゃん!和菓子屋のみてぇ。」

「本当?お餅硬くない?餡ちゃんとふっくらしてる?」

「あぁ、初めて作ったとは思えないよ。不死川も勿体無いよなーこのおはぎ食えないなんて。」

「今日はもう会えなそうだしね。余ったおはぎは明日私が食べるしかないなぁ。お餅硬くなっちゃうかな。」

「俺腹減ってんだよ、もっと食っていいか?」

「いい…けど…」


そう返事をすれば私がキッチンへ持っていこうとしたおはぎの乗った大皿を手から取る天元。もう時計は日付が変わる所だった。不死川さんは今日はなんとなくもう帰って来ないと思った私は寂しそうな顔でもしてしまったのだろうか。天元の気遣いがとても嬉しかったしなんだか私の心をホッとさせた。


「次はチーズケーキ作ってくれよ!」

「しょうがないなぁ!……ありがとう天元。」

「なんのことだ?」

「別に!」

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