【10】



ご飯は作る必要がないとお館様から言われていたが、夕食はシェアハウスの全員分を作るようになった。今まで目分量となんとなくの知識で作っていた料理を、買ってきた料理本を手に持ち目分量をやめ一から丁寧に作るようになった。料理を始めてから半月が経つ頃にはみんなが夕食はなるべく家で食べることが多くなる程腕前を上げた。


「今日の飯はなんだ?」

「今日はカレイの煮付けと豚汁と小松菜のおひたしですぅ。」


天元は私が料理が上手になっても一度も褒めてくれなかった。まぁ天元はあんまり皆との生活リズムが合わずに一人でご飯を食べていることも多かったので、そんな機会もなかなかなかったけど。今も皆がもう就寝する頃にリビングへやって来た。いつもは私も自室に戻っているけど、今日はリビングでなんとなく時間を過ごし彼が来るのを待っていた。むすぅっとしながら温め直したご飯を差し出せば両手を合わせていただきますと食べ始める天元。


「ん、うまい。」

「!?今なんて!?」

「ん?うまいって言った。」

「そっそうでしょ!私あれから頑張ったんだからね!天元があんなこと言うから…!」

「あんなことって…え、もしかして俺の言ったこと気にして料理に励んでたのか?」

「そうだよ!なんで私がこんなに料理頑張ってると思ってたの!?」

「暇なんだなぁって。」

「バカ天元!!!」


なんて男なんだ!人の料理を貶しておいてそのことを忘れているなんて!!


「あの後作る料理はどれもうまかったよ。ちゃんと作る様になったんだなぁって思ったし。」

「じゃあなんで褒めてくれないの!」

「俺に褒められたくて頑張ってくれたわけ?」

「ちっ違うし!もう寝る!おやすみ!」


ニヤニヤとしながら言ってくるからおもわず大声で否定してしまった。貰いたかった言葉はもう聞けたし、食べ終わるところを見届ける必要もないし部屋に戻ろうとしたらすれ違いざまに腕を掴まれる。


「あのときさ見た目が平凡だってお前は言ってたけど、俺はまぁまぁ可愛いと思うぜ?」

「なっ…」

「まぁ嫁には貰いたくないのは変わらないけどな。」

「お や す み っ!」


手を振り払い退け急いでリビングを出る。なんで私顔が熱くなってるの…!!パタパタと手の平で顔を煽ぎながら自室へ戻った。

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