【09】



シェアハウスに引っ越してきてから2週間が経った。お館様との面談もした。お館様って言うからてっきり親方様の方だと思いかなりがたいと気前の良いおじさんを想像して行ったら、歳は自分とそんなに変わらなそうな方で、どことなく不思議な雰囲気の男性だった。代々お屋敷や館を所持している地主さんらしいのでお館様って呼ばれているのかな。
ハウスメイトの仕事はハウス内の共有部分の掃除や、管理費で食品の管理をしたり色々。掃除はリビングやキッチン、共有の浴場、アトリエやジムや広いお庭などそれなりにたくさん場所があり毎日忙しく働いていた。食品管理は一定の飲み物や食べ物が減ったらスーパーで買ってきたり重い物はネットで注文したりして補充する。個人の部屋の中の掃除などはしない。それぞれの生活リズムがあるので洗濯やご飯を作ったりもしなくていいと言われた。
私の家賃はハウスメイトのお給料から引かれることになったけど、まだ試験的な部分もあるからとかなり破格の家賃だった。もちろん光熱費等も込みの値段。なのでハウスメイトの仕事だけでもやっていけるぐらいに生活はどうにかなりそうだった。
一時はどうなるものかと思ったけど、こうやってなんとか少しずつ立ち直っている。元彼や知らない番号から立て続けに来る電話を避けるために携帯の番号も変えてこれでスッキリ元彼とは縁が切れたのだ。


「あー……はよぉ、なんか飯ない?」

「おはよう天元!私がお昼ご飯に作ったパスタソース余ってるけど食べる?」

「食う。」


おはようと挨拶を交わすけどもう14時半過ぎだった。天元はシェアハウスのアトリエで仕事をしていて、朝方まで作品作りに没頭して昼夜逆転の日があったりする。今日もそうだったんだろうな。
そして慣れてとは怖いもので、私はイケメンだらけのこの家で最初の2、3日は緊張しまくりだったけどもうすっかりキラキラのイケメン達にも慣れてしまって緊張感などすっかりない。順応能力が高かったらしく生活にストレスも特に感じていなかった。


「あのさぁお前ってもしかして料理…」


作ったパスタをきれいにくるくるとフォークに巻き付けながら天元が口を開く。あらやだお褒めの言葉かしらとワクワクした顔で天元を見つめる。


「得意ではない?」

「はぁ!?」

「いや、何回かお前の手料理食ってるけど、なんか普通なんだよなぁ…味気ないって言うか…」

「なっ何それ!」

「いや食えるよ?けどなんかこう印象に残らないって言うか平凡なんだよ…」

「そんなこと言うなら食べてくれなくて結構ですぅ!!!」

「あっおいまだ食ってんだよ!持ってくな!」


この芸術家のあほんだらめっなんて失礼なこと言うんだ!!だがこれは実は図星である。母親にも言われたことあるし、かつて付き合ってきた男にも言われたことがあった。天元にまで言われてしまって自分の料理の腕前に元々ない自信を更に失くしてしまった。


「そんなこと言うなら見ててよね!おいしくて思わず天元が私のことをお嫁さんに貰いたくなるぐらいおいしい料理作ってみせるんだから!!」

「いや料理のことを除いても俺はお前を嫁には貰いたくないぞ。」

「はいはいどうせ見た目も平凡だよ!」


この日をきっかけに私は料理魂に火が付き毎日猛烈に料理に情熱を注ぎ始めるのであった。

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